忘れる才能

これまでに何度もブログを立ち上げては挫折してきた私ですが、今日これから書く話は何度も何度も書いたものです。これだけは残しておけばよかったと思うけれども、ブログごと削除してしまってるからどうしようもない。だけど本当に何度も書いてるので、もう一度書こうと思えば書ける。それぐらい、書いたお話です。


ずいぶん前のことになります。とある小さな劇団の方の呼びかけで、演技ド素人の一般市民を集めてのワークショップが開かれました。たまたまその告知をみた私は何か惹かれるものがあり、反射的に応募していました。

内容は『朗読』です。
数週間にわたってかなり内容の濃いワークショップが行われ、泣いたり笑ったり凹んだり落ち込んだり?
姿勢も呼吸も発声も、何から何まで『なってない』わけだから、短期間ではありましたがそれなりに鍛えていただきました。


題材は(私は初見でしたが)朗読と言えばこれ、と言われるほどの名作
『ラブ・レターズ』。
私はメリッサがアンディとしばらく離れ、大人になったあたりからを担当させていただきました。

ワークショップの集大成としてホールでお客さんを入れての朗読劇発表という大きな目標があり、参加者ひとりひとりが役を自分と一体化させていくなか、私はどちらかというとメリッサに憑依されるみたいな感じだったかもしれない。
大人になったメリッサの、闇も抱えたところを表現するのはとても難しく、精神的にも追い込まれました。
それでも、これまでに経験したことのない、特殊なチーム感でつながった参加者さんたちとのこれまでの時間を信じて、最後まで続けられた。

当日はメリッサがうまく憑依してくれて(笑)練習よりずっと自然にメリッサになれたし、堂々と演じることもできた。
3名のアンディと3名のメリッサで私たちにしかできない『ラブ・レターズ』をどうにかやりきった満足感もあった。
お誘いしていた方も観に来てくださっていて、終演後に感動したと声をかけてくださいました。主宰の方からもお褒めをいただき、とても素敵な経験だったと思います。


と、

そんな私の体験がすっかり霞むほどの衝撃を、その後 体験することになります。


打ち上げが行われ、ワークショップ参加者はもとより劇団のスタッフさんも集まって楽しい時間をすごしました。
劇団スタッフの方には照明さんや音響さんなど、朗読劇の当日にしかお会いできなかった方もいらして、その方たちとおはなしができるのも嬉しかった。

主宰の方とマネージャーが劇団のこれまでを振り返って
「あの作品はこうだったよね」「あの作品のときはこんなだったね」と話していらして、私たちワークショップ生にはわからないけど、これまでの劇団の歴史に触れたような気がしてほっこりしていたところ

「ねぇ、○○さん」
と、お名前は忘れてしまったのだけど照明のスタッフさんに
「あの作品はこうだったよね」
「覚えてない」
「えー、こうだったじゃないですか」
「うーん」

ちょっと、ほんのちょっと空気がおやおや、となったけど
あとでまわりの方から聞いたのは、

きっちり真摯に作品に向き合い、ちゃんと持ち場をやりとげる。
それが終わると気持ちがもう次の作品に向かっているのだと。


うぉー、カッコイイ!


子どもみたいに毎日めいっぱい真剣で、
次の日になればきのうのことは忘れている。



カッコイイ!!



何度も何度も書いている話、いまは書きながら

ゼロリセットやん!

と思ってる。



ゼロリセットはいやな感情、感じたくない感情、つらい感情、そういうのだけを手放すワークではなく、
いいことも悪いことも、たのしいもかなしいも、みんな一日の終わりに手放してリセットして、
新しい明日を新しく、
子どもみたいに毎日を楽しみに始めるためのワークなんだと。
光に還ったコカさんが角司さんにそう伝授されたのだと聞きました。


ナチュラルにそれができる照明のオジサン(失礼)はすごいマスターだったんだなあと思います。

その後、別の作品でその方が照明を担当される現場を拝見しましたが、(それまで照明さんのお仕事って意識もしたことなかったし、さほど興味もなかったけれど、)
とっても良かった。
まさに、
いま、いま、いまを生きていらっしゃるのを強く感じました。


忘れる才能って素敵だな、欲しい欲しいと思いながらも
何度も何度もこのことを書き付ける私は、
いつまでも憶えていたいのだろう。

いまの私は力をこめて、一生懸命に向き合って
ようやく手放せるかどうか。
それでも願う。

忘れる才能。





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