懐かしい声
懐かしい声を聞いた。
もう5年以上会えていない、島を離れた友達。
いまも島のイントネーションが抜けないまま。
内地に出て、頑張って働いて、結婚して、ようやく時間ができたとのこと。
私はいまこの島で、島の方言とイントネーションを少しずつ身につけながらすっかり馴染んで暮らせているけど、これは彼女なしにはできなかった。
私の島暮らしの下地をつくるのに惜しみなく力を貸してくれた人。
あそこに行こう、この人に会いに行こう、海に行こう、お母さんに会わせたい、と
とにかくいろんなところに連れ出してくれて、いろんな人に引き合わせてくれた人。
内地に行って、とにかく働いていたらしい。ふっと気がついたら、『そういえば友達がいない』と思ったのだそう。
いつも人に囲まれてて、ひまわりみたいにぱあっと明るくて、ケラケラよく笑う彼女しか知らない私には想像もつかない。
会いに行きたいって思ってもすぐに行けない、っていう今のこの状況に、胸がしめつけられる思いがする。
彼女に限らずだけど、島の人はとにかく家族との結びつきが強い。
お昼休みは家に帰ってごはんを食べて学校に戻る、みたいな子も多く(うちの夫も学生時代はそうだったらしい)彼女も島を離れるまでずっと両親と一緒に暮らしていたから、ふっと気がゆるんだ今、ちょっと(いやかなり)さみしいって思ってるんじゃないかな、と思う。
がむしゃらに働いていた間は気にならなかったようなことが、時間ができると暗く覆い被さってくることって、ある。
島がだいすきな彼女。ここ数週間で海に大きな来訪者(マンタや、クジラ)があった話をしたら電話の向こうの声がぱあっと明るくなった。
「その話を旦那さんにしたらね、多分いまコロナで人があんまり海に入らなくなってるからなんじゃないか、観光客でごった返す前は普通に来てたかも知れないよって言われたんだよ。ほんとにそうだったんじゃないかと思う」
そう言ったら彼女も
「そうだろうね、きっとそうだったと思う」
って。
島がだいすきな空気が伝わってきてちょっと、泣きそうになってしまった。
「そういえば友達がいない」に気づいてから友達ができるまで、彼女ならきっとそんなに時間はかからないはず。
でもなぁ、会いたいなぁ。
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