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スポーツは子どもの攻撃性を抑えるのか?非接触型スポーツの驚くべき効果

現代では、子どもの運動習慣が注目されています。
スポーツは身体的な健康を促進するだけでなく、心の成長にも影響を与えると考えられています。
特に、スポーツが子どもの攻撃性を減らす可能性があるという研究が発表されました。

攻撃性が高いと、いじめや暴力につながることもあり、子どもの健全な成長に悪影響を及ぼす可能性があります。
では、どのようなスポーツが攻撃性を抑えるのに効果的なのでしょうか?

最新の研究結果をもとに、スポーツの種類や運動の期間が攻撃性に与える影響を詳しく解説します。


研究の概要

この研究は、中国の揚州大学上海体育大学の研究チーム(Yang et al., 2023)によって実施されました。

研究チームは、スポーツ介入が子どもや青少年の攻撃性にどのような影響を与えるのかを系統的に分析しました。
具体的には、過去の15の研究を統合したメタアナリシスを行い、スポーツが攻撃性、敵意、怒りのレベルをどのように変化させるのかを評価しました。

その結果、スポーツを行うことで攻撃性が低下する可能性があることが示されました。
しかし、スポーツの種類や運動の期間によって、その効果には違いがあることも明らかになっています。


主な研究結果

① 非接触型スポーツは攻撃性を低下させる

  • バレーボールやヨガ、ランニングなどの非接触型スポーツを行うと、攻撃性が有意に低下することがわかりました。

  • 特に6か月未満の運動では、攻撃性が大幅に減少(SMD = -0.99, p = 0.008)。

  • チームスポーツの中でも、競争よりも協調性が求められるスポーツは、攻撃性を抑える効果が高い可能性があります。

② 高接触型スポーツは攻撃性を低下させない?

  • 柔道やレスリング、ラグビーなどの高接触型スポーツでは、攻撃性を低下させる効果が認められなかった(SMD = -0.15, p = 0.470)。

  • しかし、攻撃性が減らない一方で、忍耐力や自己制御能力の向上が報告されています。

  • たとえば、武道(柔道・空手など)は礼儀や精神面を鍛える効果があり、衝動的な攻撃行動を抑える助けになる可能性があります。

③ 運動の期間が長すぎると効果が減る?

  • 6か月未満の運動では攻撃性が低下しましたが、6か月以上継続するとその効果が薄れる(SMD = -0.08, p = 0.660)。

  • 長期間のスポーツでは、「競争意識」が高まり、逆に攻撃性が増す可能性があると指摘されています。

  • したがって、定期的にスポーツの内容を見直し、適切なバランスで運動を取り入れることが重要です。


子どもの攻撃性を抑えるために親ができること

研究結果を踏まえると、親は以下のようなアプローチを取ることが有効です。

① 非接触型スポーツを積極的に取り入れる

  • バレーボール、テニス、ランニング、ヨガなどのスポーツを習慣化する。

  • 週末に家族で運動する時間を作る(例:ジョギング、キャッチボールなど)。

  • スポーツ教室を選ぶ際は、競争よりも協調性を重視するプログラムを選ぶ。

② 高接触型スポーツを行う場合は「指導方法」に注意

  • 柔道や空手などの武道系スポーツは、正しい指導を受けることで精神面の成長につながる

  • 勝利至上主義の指導ではなく、礼儀やルールを重視する環境を選ぶことが大切。

③ 長期間続ける場合は、運動の種類を見直す

  • 6か月以上同じスポーツを続ける場合、攻撃性が再び上がる可能性があるため、適宜プログラムを変更する。

  • 個人競技とチーム競技を組み合わせることで、競争意識のバランスを取る。


まとめ

この研究によると、スポーツは子どもの攻撃性を低下させる効果があることが確認されました。
しかし、スポーツの種類や期間によってその効果には違いがあることも明らかになっています。

  • バレーボールやヨガなどの非接触型スポーツは、攻撃性を低下させるのに効果的。

  • 柔道やラグビーなどの高接触型スポーツは攻撃性を低下させる効果が少ないが、忍耐力や自己制御力を養う効果がある。

  • 6か月以上の長期間運動を続けると、攻撃性の低下効果が薄れる可能性があるため、適切な運動プログラムを調整することが重要。

子どもに適したスポーツを選び、楽しく継続できる環境を整えることが、健全な成長につながるでしょう。


参考論文

Yang, Y., Zhu, H., Chu, K., Zheng, Y., & Zhu, F. (2023). Effects of sports intervention on aggression in children and adolescents: A systematic review and meta-analysis. PeerJ, 11, e15504. https://doi.org/10.7717/peerj.15504

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