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【行政法⑮】<行政不服審査法のまとめ>
(目的等)
第1条 この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
2 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
・「違法」でも「不当」でも対象となる。
・ここでいう「処分」とは、国民の権利義務に影響を及ぼさない「事実上の行為」も含む。
・一般概括主義を採用しており、適用除外の規定がないものはすべて審査請求可能である。
審査請求には、
①処分についての審査請求
②不作為についての審査請求
の2種類がある。
(処分についての審査請求)
第2条 行政庁の処分に不服がある者は、第4条及び第5条第2項の定めるところにより、審査請求をすることができる。
(不作為についての審査請求)
第3条 法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、次条の定めるところにより、当該不作為についての審査請求をすることができる。
〇適用除外
(適用除外)
第7条 次に掲げる処分及びその不作為については、第2条及び第3条の規定は、適用しない。
一 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分
二 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
三 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分
四 検査官会議で決すべきものとされている処分
五 当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの
六 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分
七 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、国税庁、国税局若しくは税務署の当該職員、税関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び金融商品取引の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて証券取引等監視委員会、その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。)、財務局長又は財務支局長がする処分
八 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分
九 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院、少年鑑別所又は婦人補導院において、収容の目的を達成するためにされる処分
十 外国人の出入国又は帰化に関する処分
十一 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分
十二 この法律に基づく処分(第5章第1節第1款の規定に基づく処分を除く。)
2 国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。
これについては、行政手続法との対比で覚える。
上記太字は行政手続法と同様に適用除外である。
※この規定は、他の法律で上記を審査請求の対象とすることを妨げない。
ただし、地方公共団体が条例や規則を根拠に行う処分は、手続法では除外だが、こちらでは除外ではない。
同様に、
・公務員や公務員であったものに対する処分・行政指導
・相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として法令の規定に基づいてされる裁定その他の処分
・公衆衛生、環境保全、防疫、保安その他の公益に関わる事象が発生し又は発生する可能性のある現場において警察官若しくは海上保安官又はこれらの公益を確保するために行使すべき権限を法律上直接に与えられたその他の職員によってされる処分及び行政指導
・報告又は物件の提出を命ずる処分その他その職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目的としてされる処分及び行政指導
以上は、手続法だけに除外規定がある。
〇審査請求の相手方
(審査請求をすべき行政庁)
第4条 審査請求は、法律(条例に基づく処分については、条例)に特別の定めがある場合を除くほか、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める行政庁に対してするものとする。
一 処分庁等(処分をした行政庁(以下「処分庁」という。)又は不作為に係る行政庁(以下「不作為庁」という。)をいう。以下同じ。)に上級行政庁がない場合又は処分庁等が主任の大臣若しくは宮内庁長官若しくは内閣府設置法(平成11年法律第89号)第49条第1項若しくは第2項若しくは国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第3条第2項に規定する庁の長である場合 当該処分庁等
二 宮内庁長官又は内閣府設置法第49条第1項若しくは第2項若しくは国家行政組織法第3条第2項に規定する庁の長が処分庁等の上級行政庁である場合 宮内庁長官又は当該庁の長
三 主任の大臣が処分庁等の上級行政庁である場合(前二号に掲げる場合を除く。) 当該主任の大臣
四 前三号に掲げる場合以外の場合 当該処分庁等の最上級行政庁
要は上まで行けってはなし。宮内庁長官、大臣ならそこでOK。各庁の庁長でもOK。それ以外は、最上級まで上げろ!
その他の枠組み
〇再調査制度
(再調査の請求)
第5条 行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。ただし、当該処分について第2条の規定により審査請求をしたときは、この限りでない。
2 前項本文の規定により再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定を経た後でなければ、審査請求をすることができない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 当該処分につき再調査の請求をした日(第61条において読み替えて準用する第23条の規定により不備を補正すべきことを命じられた場合にあっては、当該不備を補正した日)の翌日から起算して3月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合
二 その他再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由がある場合
・処分(不作為除く)につき、法律に定めがあるときは、審査請求までしなくても再調査の請求ができる。これは、行政側が改善のための”振り返り”のように設定した例外的な制度。
・再調査は審査請求後は不可。前であれば、OKだが、決定を待つ必要アリ。ただし、翌日3カ月or正当な理由で免除。
・後述の審理員制度や行政不服審査会等への諮問は準用されない。
〇再審査請求
(再審査請求)
第6条 行政庁の処分につき法律に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合には、当該処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、再審査請求をすることができる。
2 再審査請求は、原裁決(再審査請求をすることができる処分についての審査請求の裁決をいう。以下同じ。)又は当該処分(以下「原裁決等」という。)を対象として、前項の法律に定める行政庁に対してするものとする。
・これも処分のみに認められた例外措置。原裁決または当該処分どちらも対象。
審査請求の登場人物
①審査請求人
まず、審査請求ができる要件は以下の通り。
・処分か不作為が存在すること
・正当な当事者からなされること
(処分の場合は、「不服のある者」、不作為の場合は「申請者」)
・権限を有する行政庁になされること
・審査請求期間内になすこと
・形式と手続きを遵守すること
※最高裁判例によると、不服申立適格とは、当該処分により自己の権利もしくは、法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。(最重要)
一 不当景品類及び不当表示防止法一〇条六項にいう「第一項の規定による公正取引委員会の処分について不服があるもの」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。
二 不当景品類及び不当表示防止法の規定にいう一般消費者であるというだけでは、公正取引委員会による公正競争規約の認定に対し同法一〇条六項の規定に基づく不服申立をする法律上の利益を有するとはいえない。
不服申立の適格が認められない場合、不適法として、請求は「却下」される。(審理してもらえない)
(法人でない社団又は財団の審査請求)
第10条 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名で審査請求をすることができる。
☝ちなみに、これも大事。
②総代
(総代)
第11条 多数人が共同して審査請求をしようとするときは、3人を超えない総代を互選することができる。
2 共同審査請求人が総代を互選しない場合において、必要があると認めるときは、第9条第1項の規定により指名された者(以下「審理員」という。)は、総代の互選を命ずることができる。
3 総代は、各自、他の共同審査請求人のために、審査請求の取下げを除き、当該審査請求に関する一切の行為をすることができる。
4 総代が選任されたときは、共同審査請求人は、総代を通じてのみ、前項の行為をすることができる。
5 共同審査請求人に対する行政庁の通知その他の行為は、2人以上の総代が選任されている場合においても、1人の総代に対してすれば足りる。
6 共同審査請求人は、必要があると認める場合には、総代を解任することができる。
すべて重要。
③代理人
(代理人による審査請求)
第12条 審査請求は、代理人によってすることができる。
2 前項の代理人は、各自、審査請求人のために、当該審査請求に関する一切の行為をすることができる。ただし、審査請求の取下げは、特別の委任を受けた場合に限り、することができる。
・総代は、審査請求の取り下げは不可だったのに対し、代理人は、特別の委任があればOKであることに注意する。
④審査請求人の継承者
(審理手続の承継)
第15条 審査請求人が死亡したときは、相続人その他法令により審査請求の目的である処分に係る権利を承継した者は、審査請求人の地位を承継する。
2 審査請求人について合併又は分割(審査請求の目的である処分に係る権利を承継させるものに限る。)があったときは、合併後存続する法人その他の社団若しくは財団若しくは合併により設立された法人その他の社団若しくは財団又は分割により当該権利を承継した法人は、審査請求人の地位を承継する。
3 前二項の場合には、審査請求人の地位を承継した相続人その他の者又は法人その他の社団若しくは財団は、書面でその旨を審査庁に届け出なければならない。この場合には、届出書には、死亡若しくは分割による権利の承継又は合併の事実を証する書面を添付しなければならない。
4 第1項又は第2項の場合において、前項の規定による届出がされるまでの間において、死亡者又は合併前の法人その他の社団若しくは財団若しくは分割をした法人に宛ててされた通知が審査請求人の地位を承継した相続人その他の者又は合併後の法人その他の社団若しくは財団若しくは分割により審査請求人の地位を承継した法人に到達したときは、当該通知は、これらの者に対する通知としての効力を有する。
5 第1項の場合において、審査請求人の地位を承継した相続人その他の者が2人以上あるときは、その1人に対する通知その他の行為は、全員に対してされたものとみなす。
6 審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者は、審査庁の許可を得て、審査請求人の地位を承継することができる。
・相続人は無条件で請求人の地位継承。その他の人は、当該処分に係る権利を承継したものだけが地位を継承する。
・継承には証拠書類とともに、届出が必要
・審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者は、請求人の地位継承に行政庁の許可が必要。
⑤参加人
(参加人)
第13条 利害関係人(審査請求人以外の者であって審査請求に係る処分又は不作為に係る処分の根拠となる法令に照らし当該処分につき利害関係を有するものと認められる者をいう。以下同じ。)は、審理員の許可を得て、当該審査請求に参加することができる。
2 審理員は、必要があると認める場合には、利害関係人に対し、当該審査請求に参加することを求めることができる。
3 審査請求への参加は、代理人によってすることができる。
4 前項の代理人は、各自、第1項又は第2項の規定により当該審査請求に参加する者(以下「参加人」という。)のために、当該審査請求への参加に関する一切の行為をすることができる。ただし、審査請求への参加の取下げは、特別の委任を受けた場合に限り、することができる。
・参加人になるためには、許可が必要。
・代理人は、請求人代理と同様に特別の委任があれば、参加取り下げ可能。
⑥審理員
(審理員)
第9条 第4条又は他の法律若しくは条例の規定により審査請求がされた行政庁(第14条の規定により引継ぎを受けた行政庁を含む。以下「審査庁」という。)は、審査庁に所属する職員(第17条に規定する名簿を作成した場合にあっては、当該名簿に記載されている者)のうちから第3節に規定する審理手続(この節に規定する手続を含む。)を行う者を指名するとともに、その旨を審査請求人及び処分庁等(審査庁以外の処分庁等に限る。)に通知しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに掲げる機関が審査庁である場合若しくは条例に基づく処分について条例に特別の定めがある場合又は第24条の規定により当該審査請求を却下する場合は、この限りでない。
一 内閣府設置法第49条第1項若しくは第2項又は国家行政組織法第3条第2項に規定する委員会
二 内閣府設置法第37条若しくは第54条又は国家行政組織法第8条に規定する機関
三 地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第1項に規定する委員会若しくは委員又は同条第3項に規定する機関
2 審査庁が前項の規定により指名する者は、次に掲げる者以外の者でなければならない。
一 審査請求に係る処分若しくは当該処分に係る再調査の請求についての決定に関与した者又は審査請求に係る不作為に係る処分に関与し、若しくは関与することとなる者
二 審査請求人
三 審査請求人の配偶者、四親等内の親族又は同居の親族
四 審査請求人の代理人
五 前二号に掲げる者であった者
六 審査請求人の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人
七 第13条第1項に規定する利害関係人
・まず、審査庁は、原則、職員のうちから審理員を指名する。そしてそれを、請求人と処分庁へ通知する。ただし、審理員というのは、公平平等な審査のために置かれるものであるから、そもそも審査庁自体が第三者委員会や審査会である場合は、審理員は置かれない。
・審理員になれない者は、聴聞の主宰者になれない者との比較が重要。
※違いは、関係職員が許されるかどうか。聴聞では、事案の処理に当たった職員が主宰者になれる。
(審理員となるべき者の名簿)
第17条 審査庁となるべき行政庁は、審理員となるべき者の名簿を作成するよう努めるとともに、これを作成したときは、当該審査庁となるべき行政庁及び関係処分庁の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。
・さらに公正を期すため、審理員の名簿の作成を努力義務にしている。(公開は義務)
審査請求の手続き
(審査請求期間)
第18条 処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して1月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2 処分についての審査請求は、処分(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定)があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
・何はともあれ重要。「翌日」から3カ月、そして1年で終わり。処分があったことを知った日の翌日、再調査の決定があった日の翌日!ただし!再調査していれば、その決定があった日から「1カ月」となる。
〇審査請求書
(審査請求書の提出)
第19条 審査請求は、他の法律(条例に基づく処分については、条例)に口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、政令で定めるところにより、審査請求書を提出してしなければならない。
2 処分についての審査請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 審査請求に係る処分の内容
三 審査請求に係る処分(当該処分について再調査の請求についての決定を経たときは、当該決定)があったことを知った年月日
四 審査請求の趣旨及び理由
五 処分庁の教示の有無及びその内容
六 審査請求の年月日
3 不作為についての審査請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 当該不作為に係る処分についての申請の内容及び年月日
三 審査請求の年月日
4 審査請求人が、法人その他の社団若しくは財団である場合、総代を互選した場合又は代理人によって審査請求をする場合には、審査請求書には、第2項各号又は前項各号に掲げる事項のほか、その代表者若しくは管理人、総代又は代理人の氏名及び住所又は居所を記載しなければならない。
・処分の審査請求には、起算日と教示について、書かなければならない。その他事項は考えればわかる。
〇処分庁経由の提出
(処分庁等を経由する審査請求)
第21条 審査請求をすべき行政庁が処分庁等と異なる場合における審査請求は、処分庁等を経由してすることができる。この場合において、審査請求人は、処分庁等に審査請求書を提出し、又は処分庁等に対し第19条第2項から第5項までに規定する事項を陳述するものとする。
2 前項の場合には、処分庁等は、直ちに、審査請求書又は審査請求録取書(前条後段の規定により陳述の内容を録取した書面をいう。第29条第1項及び第55条において同じ。)を審査庁となるべき行政庁に送付しなければならない。
3 第1項の場合における審査請求期間の計算については、処分庁に審査請求書を提出し、又は処分庁に対し当該事項を陳述した時に、処分についての審査請求があったものとみなす。
・処分庁は「直ちに」審査庁へ転送する。
〇誤った教示の救済
(誤った教示をした場合の救済)
第22条 審査請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすべき行政庁でない行政庁を審査請求をすべき行政庁として教示した場合において、その教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは、当該行政庁は、速やかに、審査請求書を処分庁又は審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。
2 前項の規定により処分庁に審査請求書が送付されたときは、処分庁は、速やかに、これを審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。
3 第1項の処分のうち、再調査の請求をすることができない処分につき、処分庁が誤って再調査の請求をすることができる旨を教示した場合において、当該処分庁に再調査の請求がされたときは、処分庁は、速やかに、再調査の請求書(第61条において読み替えて準用する第19条に規定する再調査の請求書をいう。以下この条において同じ。)又は再調査の請求録取書(第61条において準用する第20条後段の規定により陳述の内容を録取した書面をいう。以下この条において同じ。)を審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を再調査の請求人に通知しなければならない。
4 再調査の請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示しなかった場合において、当該処分庁に再調査の請求がされた場合であって、再調査の請求人から申立てがあったときは、処分庁は、速やかに、再調査の請求書又は再調査の請求録取書及び関係書類その他の物件を審査庁となるべき行政庁に送付しなければならない。この場合において、その送付を受けた行政庁は、速やかに、その旨を再調査の請求人及び第61条において読み替えて準用する第13条第1項又は第2項の規定により当該再調査の請求に参加する者に通知しなければならない。
5 前各項の規定により審査請求書又は再調査の請求書若しくは再調査の請求録取書が審査庁となるべき行政庁に送付されたときは、初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなす。
・いずれの場合も、請求人への通知が必要。
・いずれの場合も、「速やかに」転送が必要とされる。
※「直ちに」が起用されるのは、審査庁への経由提出の時、および審理員就任時の(行政庁への)請求書送付だけである。
〇補正
(審査請求書の補正)
第23条 審査請求書が第19条の規定に違反する場合には、審査庁は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。
・不服審査では、不備の補正は法的義務。手続法の申請では、その場で却下することもできた。ただし、以下の規定もある。
(審理手続を経ないでする却下裁決)
第24条 前条の場合において、審査請求人が同条の期間内に不備を補正しないときは、審査庁は、次節に規定する審理手続を経ないで、第45条第1項又は第49条第1項の規定に基づき、裁決で、当該審査請求を却下することができる。
2 審査請求が不適法であって補正することができないことが明らかなときも、前項と同様とする。
※不当じゃダメ。「不適法」だけ。
審理手続き
〇標準審理期間
設定は、努力義務、設定したら公開は公的義務。手続法の標準処理期間と同様ですね。
①弁明書の提出
(弁明書の提出)
第29条 審理員は、審査庁から指名されたときは、直ちに、審査請求書又は審査請求録取書の写しを処分庁等に送付しなければならない。ただし、処分庁等が審査庁である場合には、この限りでない。
2 審理員は、相当の期間を定めて、処分庁等に対し、弁明書の提出を求めるものとする。
3 処分庁等は、前項の弁明書に、次の各号の区分に応じ、当該各号に定める事項を記載しなければならない。
一 処分についての審査請求に対する弁明書 処分の内容及び理由
二 不作為についての審査請求に対する弁明書 処分をしていない理由並びに予定される処分の時期、内容及び理由
4 処分庁が次に掲げる書面を保有する場合には、前項第1号に掲げる弁明書にこれを添付するものとする。
一 行政手続法(平成5年法律第88号)第24条第1項の調書及び同条第3項の報告書
二 行政手続法第29条第1項に規定する弁明書
5 審理員は、処分庁等から弁明書の提出があったときは、これを審査請求人及び参加人に送付しなければならない。
・審理員は就任後、「直ちに」請求書を行政庁に送る。
※経由提出の際も「直ちに」であった。
・弁明書は請求人と参加人に送られる。
・弁明書は、かならず「相当の期間」が定められる。
②反論書等の提出
(反論書等の提出)
第30条 審査請求人は、前条第5項の規定により送付された弁明書に記載された事項に対する反論を記載した書面(以下「反論書」という。)を提出することができる。この場合において、審理員が、反論書を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。
2 参加人は、審査請求に係る事件に関する意見を記載した書面(第40条及び第42条第1項を除き、以下「意見書」という。)を提出することができる。この場合において、審理員が、意見書を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。
3 審理員は、審査請求人から反論書の提出があったときはこれを参加人及び処分庁等に、参加人から意見書の提出があったときはこれを審査請求人及び処分庁等に、それぞれ送付しなければならない。
・請求人が提出できるのは「反論書」
・参加人が提出できるのは「意見書」
※「弁明書」は必須。これらは「提出することができる」
※それぞれ処分庁や参加人、請求人への共有がなされる。
※「相当の期間」が定められることもある。(弁明書は絶対)
(特例)口頭意見陳述
(口頭意見陳述)
第31条 審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者(以下この条及び第41条第2項第2号において「申立人」という。)に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。
2 前項本文の規定による意見の陳述(以下「口頭意見陳述」という。)は、審理員が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせるものとする。
3 口頭意見陳述において、申立人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。
4 口頭意見陳述において、審理員は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる。
5 口頭意見陳述に際し、申立人は、審理員の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁等に対して、質問を発することができる。
・口頭意見陳述は、参加人でもできる。(行政庁側は要求できない)
・意見陳述は公共の福祉とか第三者利益とかそんなに大義名分がなくても拒絶できる。(困難な事情があればそれだけで足りる)
・許可があれば、補佐人もOK
・申立人は、許可があれば、質問もできる。
※口頭意見陳述は、再調査にも準用されている!!
〇定めにない証拠書類の提出
(証拠書類等の提出)
第32条 審査請求人又は参加人は、証拠書類又は証拠物を提出することができる。
2 処分庁等は、当該処分の理由となる事実を証する書類その他の物件を提出することができる。
3 前二項の場合において、審理員が、証拠書類若しくは証拠物又は書類その他の物件を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。
・行政庁、請求人、参加人は、いずれも証拠書類・証拠物を提出できる。これは、弁明書、反論書のタイミングでなくとも攻撃できることを確保するものである。
〇(審理員の権利)職権探知主義
(物件の提出要求)
第33条 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、書類その他の物件の所持人に対し、相当の期間を定めて、その物件の提出を求めることができる。この場合において、審理員は、その提出された物件を留め置くことができる。
(参考人の陳述及び鑑定の要求)
第34条 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、適当と認める者に、参考人としてその知っている事実の陳述を求め、又は鑑定を求めることができる。
(検証)
第35条 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、必要な場所につき、検証をすることができる。
2 審理員は、審査請求人又は参加人の申立てにより前項の検証をしようとするときは、あらかじめ、その日時及び場所を当該申立てをした者に通知し、これに立ち会う機会を与えなければならない。
(審理関係人への質問)
第36条 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、審査請求に係る事件に関し、審理関係人に質問することができる。
・すべて請求人or参加人の申し立てでも可能なことに注意。
・物件提出、専門家に聞く、調べる、質問する。
〇(請求人と参加人の権利)書類の閲覧
(審査請求人等による提出書類等の閲覧等)
第38条 審査請求人又は参加人は、第41条第1項又は第2項の規定により審理手続が終結するまでの間、審理員に対し、提出書類等(第29条第4項各号に掲げる書面又は第32条第1項若しくは第2項若しくは第33条の規定により提出された書類その他の物件をいう。次項において同じ。)の閲覧(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)にあっては、記録された事項を審査庁が定める方法により表示したものの閲覧)又は当該書面若しくは当該書類の写し若しくは当該電磁的記録に記録された事項を記載した書面の交付を求めることができる。この場合において、審理員は、第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があるときでなければ、その閲覧又は交付を拒むことができない。
2 審理員は、前項の規定による閲覧をさせ、又は同項の規定による交付をしようとするときは、当該閲覧又は交付に係る提出書類等の提出人の意見を聴かなければならない。ただし、審理員が、その必要がないと認めるときは、この限りでない。
3 審理員は、第1項の規定による閲覧について、日時及び場所を指定することができる。
・審理員は、書類提出人の意見を聴かなければならない点に注意。(必要性の判断はできるが・・・)
審理の終結
〇審理員意見書
(審理員意見書)
第42条 審理員は、審理手続を終結したときは、遅滞なく、審査庁がすべき裁決に関する意見書(以下「審理員意見書」という。)を作成しなければならない。
2 審理員は、審理員意見書を作成したときは、速やかに、これを事件記録とともに、審査庁に提出しなければならない。
・「遅滞なく」意見書を作成し、事件記録と合わせて「速やかに」審査庁へ提出する。
〇行政不服審査会等への諮問
・審査庁は、審理員意見書の提出を受けた時は、原則として、行政不服審査会等へ諮問しなければならない。「等」とあるのは、審査庁が地方公共団体の際は、諮問先が行政不服審査会ではないからである。
裁決
(裁決の時期)
第44条 審査庁は、行政不服審査会等から諮問に対する答申を受けたとき(前条第1項の規定による諮問を要しない場合(同項第2号又は第3号に該当する場合を除く。)にあっては審理員意見書が提出されたとき、同項第2号又は第3号に該当する場合にあっては同項第2号又は第3号に規定する議を経たとき)は、遅滞なく、裁決をしなければならない。
(処分についての審査請求の却下又は棄却)
第45条 処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。
2 処分についての審査請求が理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。
3 審査請求に係る処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し、又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮した上、処分を取り消し、又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却することができる。この場合には、審査庁は、裁決の主文で、当該処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない。(事情裁決)
〇認容(処分の場合)
(処分についての審査請求の認容)
第46条 処分(事実上の行為を除く。以下この条及び第48条において同じ。)についての審査請求が理由がある場合(前条第3項の規定の適用がある場合を除く。)には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできない。
2 前項の規定により法令に基づく申請を却下し、又は棄却する処分の全部又は一部を取り消す場合において、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置をとる。
一 処分庁の上級行政庁である審査庁 当該処分庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること。
二 処分庁である審査庁 当該処分をすること。
・処分(国民の権利義務に関わる)の場合、審査庁が行政庁より上級or同一であった場合、取り消しと変更とどちらもできる(自分でやる)。下級その他の場合は、取消しだけできる。(命ずる、は発生しない!)
・取り消される(変更ではないよ!)処分の内容が申請の却下や棄却であった場合、その申請をもう一度きちんと処理してやる必要がある。審査庁が上級の場合は、当該処分(申請の再処理)を命令し、審査庁が行政庁と同一の場合は、当該処分をする。ただし、異なる理由でもう一回その申請を却下・棄却することは可能。
※これは、不作為の認容の場合と同じ!!
※審査庁が下級の場合の定めはなし!!
〇認容(事実上の行為の場合)
第47条 事実上の行為についての審査請求が理由がある場合(第45条第3項の規定の適用がある場合を除く。)には、審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、次の各号に掲げる審査庁の区分に応じ、当該各号に定める措置をとる。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁以外の審査庁である場合には、当該事実上の行為を変更すべき旨を命ずることはできない。
一 処分庁以外の審査庁 当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずること。
二 処分庁である審査庁 当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すること。
・ただし書きがあることによって、第一号の審査庁≠処分庁である場合を上級かそうでないか、の場合分けをする必要がでてくる。つまり、
①審査庁=処分庁の上級
②審査庁=処分庁の上級でない
③審査庁=処分庁
となる。
①の場合は、全部若しくは一部の撤廃か変更を命ずる
②の場合は、全部若しくは一部の撤廃を命ずる(変更は命令不可)
③の場合は、全部若しくは一部を撤廃か変更する(自分でやる)
※処分の場合は、取り消しか変更だけど、事実上の行為は、撤廃か変更となる。
※処分の場合と異なり、事実上の行為の場合は、審査庁が上級庁であっても、自分で撤廃か変更をすることはできない(命令だけ)!
※事実上の行為の場合、「宣言」が必要!
(不利益変更の禁止)
第48条 第46条第1項本文又は前条の場合において、審査庁は、審査請求人の不利益に当該処分を変更し、又は当該事実上の行為を変更すべき旨を命じ、若しくはこれを変更することはできない。
〇不作為についての裁決
(不作為についての審査請求の裁決)
第49条 不作為についての審査請求が当該不作為に係る処分についての申請から相当の期間が経過しないでされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。
2 不作為についての審査請求が理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。
3 不作為についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法又は不当である旨を宣言する。この場合において、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置をとる。
一 不作為庁の上級行政庁である審査庁 当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること。
二 不作為庁である審査庁 当該処分をすること。
・認容の場合、不当か不適法の旨を宣言する必要がある。(宣言は、処分には不要、事実上の行為には必要)
・不作為があった場合は、滞っている処分をする必要がある。審査庁が上級の場合は、当該処分(申請の処理)を命令し、審査庁が行政庁と同一の場合は、当該処分をする。ただし、異なる理由でもう一回その申請を却下・棄却することは可能。申請の却下・棄却処分の取り消しがあった場合と同様である。審査庁が下級その他の場合の定めはない。
裁決の方式諸々
(裁決の方式)
第50条 裁決は、次に掲げる事項を記載し、審査庁が記名押印した裁決書によりしなければならない。
一 主文
二 事案の概要
三 審理関係人の主張の要旨
四 理由(第1号の主文が審理員意見書又は行政不服審査会等若しくは審議会等の答申書と異なる内容である場合には、異なることとなった理由を含む。)
2 第43条第1項の規定による行政不服審査会等への諮問を要しない場合には、前項の裁決書には、審理員意見書を添付しなければならない。
3 審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をする場合には、裁決書に再審査請求をすることができる旨並びに再審査請求をすべき行政庁及び再審査請求期間(第62条に規定する期間をいう。)を記載して、これらを教示しなければならない。
(裁決の効力発生)
第51条 裁決は、審査請求人(当該審査請求が処分の相手方以外の者のしたものである場合における第46条第1項及び第47条の規定による裁決にあっては、審査請求人及び処分の相手方)に送達された時に、その効力を生ずる。
2 裁決の送達は、送達を受けるべき者に裁決書の謄本を送付することによってする。ただし、送達を受けるべき者の所在が知れない場合その他裁決書の謄本を送付することができない場合には、公示の方法によってすることができる。
3 公示の方法による送達は、審査庁が裁決書の謄本を保管し、いつでもその送達を受けるべき者に交付する旨を当該審査庁の掲示場に掲示し、かつ、その旨を官報その他の公報又は新聞紙に少なくとも一回掲載してするものとする。この場合において、その掲示を始めた日の翌日から起算して2週間を経過した時に裁決書の謄本の送付があったものとみなす。
4 審査庁は、裁決書の謄本を参加人及び処分庁等(審査庁以外の処分庁等に限る。)に送付しなければならない。
(裁決の拘束力)
第52条 裁決は、関係行政庁を拘束する。
(証拠書類等の返還)
第53条 審査庁は、裁決をしたときは、速やかに、第32条第1項又は第2項の規定により提出された証拠書類若しくは証拠物又は書類その他の物件及び第33条の規定による提出要求に応じて提出された書類その他の物件をその提出人に返還しなければならない。
執行停止
普通、審査請求の審理中にも執行不停止の原則が働く。これは行政の円滑な運営に支障をきたさないようにするためだ。処分の効力・処分の執行・処分の手続きは、審査請求では止められない。
しかし、審理中に処分が執行されてしまい、審査請求認容後にも救済不可能な損害が発生してしまうと、とりかえしがつかない。
そこで、審査請求人の権利を保全するため処分の効力・処分の執行・処分の手続きの全部または一部を停止すること(執行停止)が認められている。
(執行停止)
第25条 審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2 処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(以下「執行停止」という。)をとることができる。
3 処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取した上、執行停止をすることができる。ただし、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をとることはできない。
4 前二項の規定による審査請求人の申立てがあった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければならない。ただし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案(なされている審査請求のこと)について理由がないとみえるときは、この限りでない。
5 審査庁は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
6 第2項から第4項までの場合において、処分の効力の停止は、処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるときは、することができない。
7 執行停止の申立てがあったとき、又は審理員から第40条に規定する執行停止をすべき旨の意見書が提出されたときは、審査庁は、速やかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない。
【任意的執行停止】
<審査庁が上級か処分庁の時>
→審査請求人の申立て又は職権で執行停止することができる。
<審査庁が下級の場合>
→審査請求人の申立てで処分庁の意見聴取を経て、執行停止することができる。
【義務的執行停止】
審査請求人の申立てがあった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければならない。
※公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき
※審査請求に理由がないと見えるとき
はその限りでない。
・処分に最も影響の少ない方法で目的を達成する必要がある。(処分の手続きの停止から段階的に検討する。)
(審理員による執行停止の意見書の提出)
第40条 審理員は、必要があると認める場合には、審査庁に対し、執行停止をすべき旨の意見書を提出することができる。
審査請求人の申立てがなくとも、審理員が意見書を出せば、速やかに執行停止が検討されなければならない。
(執行停止の取消し)
第26条 執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。
※執行停止の、「やーめた」は常にアリ。
再調査の方法
※再掲
(再調査の請求)
第5条 行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。ただし、当該処分について第2条の規定により審査請求をしたときは、この限りでない。
2 前項本文の規定により再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定を経た後でなければ、審査請求をすることができない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 当該処分につき再調査の請求をした日(第61条において読み替えて準用する第23条の規定により不備を補正すべきことを命じられた場合にあっては、当該不備を補正した日)の翌日から起算して3月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合
二 その他再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由がある場合
(再調査の請求期間)
第54条 再調査の請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2 再調査の請求は、処分があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
※請求期間は、審査請求と全く同じですね。
(誤った教示をした場合の救済)
第55条 再調査の請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って再調査の請求をすることができる旨を教示しなかった場合において、審査請求がされた場合であって、審査請求人から申立てがあったときは、<中略>
3 第1項本文の規定により審査請求書又は審査請求録取書が処分庁に送付されたときは、初めから処分庁に再調査の請求がされたものとみなす。
誤った教示がなされて審査請求した時は、(申立てすれば)それを再調査の請求と読み替えてもらえる。
(再調査の請求についての決定を経ずに審査請求がされた場合)
第56条 第5条第2項ただし書の規定により審査請求がされたときは、同項の再調査の請求は、取り下げられたものとみなす。ただし、処分庁において当該審査請求がされた日以前に再調査の請求に係る処分(事実上の行為を除く。)を取り消す旨の第60条第1項の決定書の謄本を発している場合又は再調査の請求に係る事実上の行為を撤廃している場合は、当該審査請求(処分(事実上の行為を除く。)の一部を取り消す旨の第59条第1項の決定がされている場合又は事実上の行為の一部が撤廃されている場合にあっては、その部分に限る。)が取り下げられたものとみなす。
ややこしいが、まず、5条2項というのは、再調査請求から3カ月経過したのに決定がないor再調査の決定がないことに正当な理由がある際に、再調査の決定を待たずに審査請求できる、というもの。原則、再調査と審査請求は兼ねられないからね。
で、その場合においては、再調査請求の方を取り下げたことにしましょう、ということ。しかし、すでに再調査の対象であった処分が取り消されていたり、事実上の行為が撤廃されていたりする場合は、審査請求の方を取り下げることにします。
(3月後の教示)
第57条 処分庁は、再調査の請求がされた日(第61条において読み替えて準用する第23条の規定により不備を補正すべきことを命じた場合にあっては、当該不備が補正された日)の翌日から起算して3月を経過しても当該再調査の請求が係属しているときは、遅滞なく、当該処分について直ちに審査請求をすることができる旨を書面でその再調査の請求人に教示しなければならない。
3カ月経過したときは、「遅滞なく」「文書で」、審査請求可能教示をする。これは義務である。親切ですね!
(再調査の請求の却下又は棄却の決定)
第58条 再調査の請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、処分庁は、決定で、当該再調査の請求を却下する。
2 再調査の請求が理由がない場合には、処分庁は、決定で、当該再調査の請求を棄却する。
(再調査の請求の認容の決定)
第59条 処分(事実上の行為を除く。)についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、決定で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。
(決定の方式)
第60条 前二条の決定は、主文及び理由を記載し、処分庁が記名押印した決定書によりしなければならない。
2 処分庁は、前項の決定書(再調査の請求に係る処分の全部を取り消し、又は撤廃する決定に係るものを除く。)に、再調査の請求に係る処分につき審査請求をすることができる旨(却下の決定である場合にあっては、当該却下の決定が違法な場合に限り審査請求をすることができる旨)並びに審査請求をすべき行政庁及び審査請求期間を記載して、これらを教示しなければならない。
・再調査の場合、「裁決」ではなく「決定」という。
・再調査の場合、審査庁ではなく行政庁が決定に関する事務を行う。
・棄却、却下の場合は、審査請求ができる旨、請求先、期間の教示が必要。
〇審査請求の準用がされないもの
・審理員の規定全般(審理員は置かれない)
・処分庁以外の審査庁による執行停止(処分庁と請求人側のみの手続)
・諮問機関 (処分庁と請求人側のみの手続)
・不作為 (不作為を調査はできない。「処分」のみ)
・関係行政庁の拘束力 (再調査→審査請求場合に決定が覆る可能性あり)
・処分庁等からの証拠書類等の提出 (あくまで「調査」請求)
以上が準用されないリスト。非常に重要。基本的に処分庁と請求人のみの手続きであるので、第三者的なものは準用されない。なお、証拠書類の提出は、行政庁側からのみが準用されない。請求人側からの提出はできる。
再審査請求の方法
〇請求期限
(再審査請求期間)
第62条 再審査請求は、原裁決があったことを知った日の翌日から起算して1月を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2 再審査請求は、原裁決があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
・原裁決を基準として「知った日から1カ月」は、審査請求で再調査の決定を経た場合と同じ。1年は変わらず。
※何が3カ月で何が1カ月なのか覚える。再調査後の審査請求や、裁決後の再審査請求の期限が1カ月なのは、すでに書類などが準備できているため!
〇審査請求の準用
・弁明書の提出(もうしている)
・反論書の提出(もうしている)
・行政不服審査会への諮問(もうしている)
・45〜49条(中でも48条に注意)
これらの準用がない!!!(重要)
中でも
(不利益変更の禁止)
第48条 第46条第1項本文又は前条の場合において、審査庁は、審査請求人の不利益に当該処分を変更し、又は当該事実上の行為を変更すべき旨を命じ、若しくはこれを変更することはできない。
不利益変更の禁止の準用がないことに注意!
行政不服審査会
(設置)
第67条 総務省に、行政不服審査会(以下「審査会」という。)を置く。
2 審査会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。
(組織)
第68条 審査会は、委員9人をもって組織する。
2 委員は、非常勤とする。ただし、そのうち3人以内は、常勤とすることができる。
(合議体)
第72条 審査会は、委員のうちから、審査会が指名する者3人をもって構成する合議体で、審査請求に係る事件について調査審議する。
(意見の陳述)
第75条 審査会は、審査関係人の申立てがあった場合には、当該審査関係人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、審査会が、その必要がないと認める場合には、この限りでない。
2 前項本文の場合において、審査請求人又は参加人は、審査会の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。
(主張書面等の提出)
第76条 審査関係人は、審査会に対し、主張書面又は資料を提出することができる。この場合において、審査会が、主張書面又は資料を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。
(委員による調査手続)
第77条 審査会は、必要があると認める場合には、その指名する委員に、第74条の規定による調査をさせ、又は第75条第1項本文の規定による審査関係人の意見の陳述を聴かせることができる。
(提出資料の閲覧等)
第78条 審査関係人は、審査会に対し、審査会に提出された主張書面若しくは資料の閲覧(電磁的記録にあっては、記録された事項を審査会が定める方法により表示したものの閲覧)又は当該主張書面若しくは当該資料の写し若しくは当該電磁的記録に記録された事項を記載した書面の交付を求めることができる。この場合において、審査会は、第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があるときでなければ、その閲覧又は交付を拒むことができない。