#3 中堅派遣社員、スキルを武器に転職活動する。
派遣社員はどんなに実績を上げても、年収を上げることはできない。
5年も知らずに私は30代になっていた。
担当営業によると、たまに1000円ほど昇給していたのは、年功序列で上がっていたとのこと。
なんやねん。技術派遣で年功序列って。
技術を売っている身としては、せめて勤務年数に応じたスキルを評価していると言って欲しかった。
自分で言うのも何だが、スキルはある。
それは技術的なスキルだけではなく、周りと上手くやっていくスキルだったり、自動車業界の内情を知っていることも含む。
派遣先社員に代わり、開発プロジェクトを管理したこともある。
…すみません。プロジェクト管理はちょっと盛りました。
実際はプロジェクトの一部分のスケジュール管理を担当しただけです。
とにかく、年収を上げる術を見つけたいと思った。
そう思い始めると、同年代が昇格していることが気になり、焦りが生まれた。
同年代との年収の差は20代はあまりなくとも、年齢を重ねるにつれ差はどんどん開いていく。いずれ埋められなくなる。
埋める方法は一つしか思い浮かばなかった。
転職,年収アップ
ただ転職と言っても、働きたい会社は特に思い浮かばなかった。だって今の職場環境は気に入ってる。
職場の人間関係が良い。良い距離感で仕事ができている。
そうなると派遣先での直接雇用がいいと思えた。
何だかんだ言いつつ、派遣先の社風は自分に合っているように思う。
もし直接雇用されたら業務内容のレベルは上がるが、職場環境はそれほど変わらないことは魅力的に思えた。
実際に派遣から直接雇用された人を何人か知っていた。
これまでにも、直接雇用は考えたことはあった。
でも、言い出す程のモチベーションはなく、あと何か恥ずかしかった。
『え、私のこと好きだっの?』みたいな。
いやいや、そんな中学生みたいな事を言っている場合ではないので直接雇用ができないか調べてみる事にした。
ちなみに妻に派遣社員のままでは年収を上がらないことを伝えて、直接雇用を聞いてみるとすんなり賛成してくれた。というか、元々そのつもりだったらしい。
派遣先への直接雇用。
実際、何から始めれば良いのだろう?
以前、派遣先社員との雑談のなかで
『飲み会で酔っ払ってるH部長にお願いしたら、一瞬で決まるんじゃない?』
と言われたことはあったが、さすがにそれはないだろう。
セオリーは指揮命令者のNさんに聞いてみることにした。
と言うわけで、派遣の営業と面談した翌週、Nさんに『相談があるんですけど、お時間頂けませんか?』とのチャットを送った。
つづく