変形性膝関節症 完全攻略BOOK
Question1. 重度の膝OAでも無症候性患者がいるのはなぜ?
レントゲンにて重度の変形が読み取れた場合にも「私全然痛くないよ!」という声は多く聞きます。
実際に僕のおばあちゃんも明らかなOAなのに、一度も症状を訴えたことはありません。
これはなぜでしょうか?
そもそも疼痛発生のプロセスはこのような流れを辿ります。
つまり痛みが生じる事の発端は関節の不安定性です。
膝関節の屈曲拘縮で側副靭帯(MCL、LCL)が緩んでいる…
明らかにACLで前方への引き出しを制動できていない…
こういった場合に、痛みを発する可能性が高いです。
「関節不安定性=疼痛」この方程式は正しいです。
では、ここに変形の程度が絡むとどうなるのでしょうか?
「変形の程度=関節不安定性=疼痛」?
ちなみに変形の程度は「Kellgren-Lawrence分類」で表現されます。
一見すると、この方程式も正しいように見えますが、実は誤っています。
こちらをご覧ください↓
これは変形の程度ごとの前後動揺性を表したものです。
まさかの重度になるにつれて、前後動揺性は健常者と同じレベルに近づいています。
続いてこちらは内外反動揺性を表したものです↓
こちらは若干ではありますが、変形が重度であるほうが動揺性を認めています。
ただそこまで大きな差があるとは言えず、この時点で「変形の程度=関節不安定性=疼痛」が成り立たないことが分かります。
そして注目すべきはやはり前後動揺性の解釈です。
なぜ重度になればなるほど動揺性が軽減するのでしょうか?
この報告はかなりその答えの核心をついています。
本来前後動揺性と聞くと、ACLの状態が関与していると予想されますが、ここではあまり関与していなかったとされています。
つまりACLが変性・消失していても、他の要素で制動が可能となっていることがうかがえます。
ここが膝OAの特徴で、個人的にこの原因は骨棘や靭帯のstiffnessではないかと睨んでいます。
変形が重度になる前に、必ず前後動揺性が増大するフェーズが存在しますが、その段階でその前後動揺性をなんとか抑制しようとすべく、骨棘や靭帯のstiffnessが増大し、その結果、偽物の安定性を獲得できているのではないかと考えています。
結論、個人的な見解としては、重度のOAでも無症候性患者がいるのは、骨棘や靭帯のstiffnessによって偽物の安定性が出現しているため、症状を発していないということになります。
少しでも臨床のヒントになっていれば幸いです!!!