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変形性膝関節症 完全攻略BOOK


No.1 変形性膝関節症と伸展制限

言わずもがな変形性膝関節症(以下:膝OA)とは、膝関節の関節軟骨と軟骨下骨の進行性退行変性が慢性的に生じる状態のことです。

そんな膝OAの危険因子はこちら↓

このように様々な要因が挙げられますが、我々理学療法士としては、この中で修正可能なものに何かしらの介入を施していく必要があります。

メインとしてはこのあたりです。

肥満・BMI増加・体重変化 → 食事や運動指導
大腿四頭筋筋力低下 → 筋力トレーニング
重労働・スポーツ活動 → 生活指導
抑うつ → 認知行動療法 etc…

中でももっともフォーカスがあたるのは「大腿四頭筋筋力低下 → 筋力トレーニング」ここですよね。

実際に膝OAのリハビリ場面を覗いてみると、大腿四頭筋に対する介入の一環として、パテラセッティングが行われている様子を目にします。

若手セラピストの話を聞いていると「膝OA=パテラセッティング」のような思考になっていることも多いです。

疾患と運動はイコールで結べませんので、これはダメです。意義をもちましょう。

そしてもう1点、そもそも論ですが、パテラセッティングは膝を伸ばす運動ですので、伸展可動域ありきの話です。

ただし、そこを度外視してパテラセッティングが行われていることも往々にしてあります。

当たり前ですが、理想的な流れとしては、可動域の確保 → トレーニングであるべきです。

そのため、伸展制限があるのであれば、まずはその改善に努める必要があります。

ちなみにですが、伸展制限の存在は膝OAにとっては超大敵で、早く改善しないと膝OAの悪化因子となってしまいます。

<伸展可動域の制限が及ぼす悪影響>
・外部膝関節屈曲モーメントが増大する
・膝関節の接触面積が狭くなる
・KAM¹⁾の増大によってメカニカルストレスが増大する

1)※KAM = Knee Adduction Moment ▶ 膝関節内反モーメント

ここも伸展制限を改善する意義としては、非常に重要な部分になりますので、1つずつ解説します↓


・外部膝関節屈曲モーメントが増大する

伸展制限があると、常に膝は屈曲位を強いられますので、外部屈曲モーメントが増大し、それに抗するように内部伸展モーメントも増大します。

つまり筋でいうなれば、大腿四頭筋の遠心性収縮が常に要求いるということです。

そしてその状態が慢性化してしまうと、徐々に大腿四頭筋が疲労し、疲労物質が貯留してしまうので、結果的に筋力低下に繋がってしまいます。

だからこそ、伸展制限の改善が必要です。



・膝関節の接触面積が狭くなる

膝関節の屈曲角度が増加するにつれて、関節面の接触面積が狭くなる。

Walker PS, et al. The load-bearing area in the knee joint. J Biomech.1972 Nov;5(6):581-9.

伸展制限があると、関節面の接触面積を広く使うことができなくなり、限局的なストレスがかかり続けることとなります。

当然ながら、その状態が慢性化すると、変形の助長に繋がってしまいます。

だからこそ、伸展制限の改善が必要です。



KAMの増大によってメカニカルストレスが増大する

そもそもKAMというのは、膝関節内反モーメントのことで、外力によって膝が内反する力のことです。

このKAMは床反力ベクトル×モーメントアームで求められ、伸展制限を発端として、大腿骨の外旋や膝の不安定性があると、この数値が増大してしまいます。

結果的に内側コンパートメントのメカニカルストレスが増大し、これまた膝OAの悪化因子となるわけです。

だからこそ、伸展制限の改善が必要です。

という感じで伸展制限は膝OAに対して多大な悪影響を及ぼすため、リハとしても優先度高く、改善に努める必要があると考えています。

ちなみにアメリカの膝を専門とするセンターにて、こういった報告もなされています↓

やはり可動域ファーストで見ていますよね。

そして膝OAの症状や機能改善のみならず、TKAの回避に大きく繋がっています。

改めて伸展制限の改善がいかに重要かお分かりいただけたかと思います。

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少しでも臨床のヒントになっていれば幸いです!!!