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春にして君を離れ
今回は人間関係について学ぶことが出来る小説をご紹介します。著者はミステリーの女王、アガサ・クリスティー。作品名は「春にして君を離れ」です。
アガサ・クリスティーにしては珍しいミステリーではない作品で、1944年に発表する前、わずか3日で書き上げたという異色の物語。
小説のあらすじ
時代は第二次世界大戦が始まる少し前。主人公は弁護士の夫を持ち、自己評価の高い主婦ジョーン・スカダモア。イギリスに住む彼女がバグダット(イラク)に住んでいる娘の急病を見舞った帰り道、彼女が乗車する予定だった鉄道が悪天候のために寸断されます。
トルコ砂漠に孤立する鉄道宿泊所(レストハウス)に、たった一人宿泊することになったジェーン。何もすることがなくなった彼女は、仕方なく幸福な結婚人生を砂漠の中で回想することに。
しかし、そこで主人公のジェーンは時間をかけて少しづつ気がつきます。家族の意見を尊重していなかったこと。友人を上辺だけで判断して見下していたこと。自分が独りよがりだったこと。それにより彼女に少しづつ不安が生まれます。
少しづつ自信を失っていくジェーン。やがてジェーンは自分の誤りを認め、家族に許しを請わなければと思います。謝らなければと考えます。しかし、列車が動き出して無事イギリスに帰ったジェーンは・・・
解説
とまあ、こんな感じで話が進む、「中年女性がトルコの砂漠の駅で足止めを食らい、過去の自分を回想する」話です。話のほとんどが主人公の頭の中で起きる自問自答。ドキドキするような冒険も、ハラハラさせるようなサスペンスもありません。
しかしこの小説・・・優越感を持った人間のもろさ、人間関係の不思議さ、そして人間の浅はかさを教えてくれます。
私たちは常に目に見えない人間関係を意識して生活しています。人間関係は全ての人に同じではなく、それぞれの人の「見方」や「考え方」、そして「場面」によっても変わります。
この小説を読んでいる時、私は試合途中にメンタルが乱れた時のことを思い出しました。格下だと思って見下していた相手に追い込まれた時、スコアが止まってしまった時の私の心理状況が、このジェーンの心理状況に似ています。もしかしたら試合中にメンタルが乱れる原因の一つは、この小説の主人公、ジェーンと同じかもしれません。
小説を読み、人間を知ることはスポーツに役立ちます。皆さんも是非。