突発性季節性宵闇
春夏秋冬でどれが好きかと言われると、間違いなく秋なのですが、皆さんはどうでしょう。
僕はアンニュイの化身みたいなところあるんですが、だからというか秋との相性ぴったり!キャ~!って感じですよね。
TUBEが夏の化身だとしたら秋の化身は僕だねぇ。TUBE前田が華々しくステージで歌い上げた後に、舞台袖でアコギ一本持っておどおどスタンバイしてるのが僕。
「あ、どうも〜…盛り上がった後にスンマセン…秋ことtenngumanです…特に近年は短い時間ですが、よろしくお願いします〜…へへっ…」
しかし、クソガキ期も秋が好きだったかと考えてみたら、べつにそうでもなかった。多分冬が好きだった。クリスマスとお正月があるから。あと節分も好き。節分のことシューティングビーンパーティとしか思ってなかった。SBP。SBPは特発性細菌性腹膜炎のことらしいよ。ふーん。
◇
中学期
僕はバドミントン部に属しており、放課後は体育館でパチュン、パチュンと、げにダルげに羽のついたコルクをあみあみ棒で打っていた。仲のいい友だちが入るから一緒に入っただけなので、バドミントンに対する情熱は皆無だった。
バドミントンは体育館の窓を閉め切って行われるため、夏はクソ暑い。クソ暑を乗り越えた先の秋の体育館。その過ごしやすさに、人生で唯一「スポーツの秋」とやらを感じた。夏の練習着は白T in 黒短パンと決まっていたのだが、ダサかったから早く寒い時期になってかっちょいいウインドブレーカーを着たいという気持ちもあった。ウインドブレーカーって†風壊シモノ†みたいでかっちょいい。
2学期の中間テスト明け、久々の練習に「うわー下手になってるわ」と元々下手なくせにほざきながら練習をしていたのを覚えているが、そんな時期の練習終わり。18時だったと思うが、体育館から出ると外はもう信じられないぐらい暗かった。
校舎と体育館を繋ぐ、朽ちた渡り廊下を照らす蛍光灯が一本だけ光っていた。僕はこの、来てはいけない時間に学校に来てしまったような、謎の背徳感に似た何かに興奮を覚えた。
「おつかれー」
と声がして振り返ったが、姿ははっきり見えない。声から卓球部のシホちゃんだとはすぐに分かった。シホちゃんとは普段からよく話していたが、普段の会話ですらこの突然現れた夜では特別なもののように思えた。僕の爆笑トークにシホちゃんがいったいどんな顔をしているのか見えないのがよかった。もしかしたら暗いのをいいことに「つまんね」みたいな顔をしながら聞いていたのかもしれない。こうやってどうとでも解釈できるので、将来こうやって書き起こす時には暗い時の思い出のほうが助かるね。
ほんの10分ぐらいの通学路、気づいたらなんとなく秋だったのだ。
その時はじめて秋を知ってから、僕はずっと秋にいるのかもしれない。
それからの僕は「暗さ」に取りつかれていた。
テレビを卒業し、ラジオを聴き、まだ地方では存在すら知られていないヴィレッジヴァンガードに通っては「何かよくわからんスライムみたいなのが液体の中で上下する光るやつ」とか、「天井に貼る蓄光する星々」とか買っていた。
これを中2病などと呼ぶのは昔の自分に失礼な気がするため、僕はこれを秋と呼んでいる。
秋=暗い。暗いの意味は多様化しているけど。
それからずいぶん経った今でもまだ秋だ。
部屋、暗すぎる。
「てってってーれびをみーるとっきはーへーやあっかるっくしてはなれて見てね」
こち亀のみんなが歌っていたけど、ごめん。こち亀はこの部屋で見れそうにない。
おやすみと同居者が僕に告げる。
おやすみと返事をするも、暗くてその顔がよく見えなかった。秋だった。