NHK新人落語大賞、桂宮治の鼠穴、鬼束ちひろの流星群

「11月23日は私が赤江さんの審査をします!」
TBSラジオ『たまむすび』で春風亭一之輔は高らかに宣言した。
NHK新人落語大賞の審査員に赤江珠緒が選ばれたことを受けての発言である。プロの目線から審査員の審査をする、ということらしい。
かくして、11月23日はNHK新人落語大賞を見た後TBSラジオで審査員として審査される赤江珠緒を楽しむ(?)ということになった。

NHK新人落語大賞は近年、収録日から放送日まで結果について緘口令が敷かれる不思議な風習がある。
しかし、収録を見に行ったある方に言われた「あなたの期待した結果になっている」という言葉を額面通り受け取ると、立川吉笑の優勝は揺るぎないと思っていた(でも三遊亭わん丈とはメル友だし、その方がそっちを意識して言った可能性はあると思った。なお林家つる子さんとは一方的にメル友になりたいです)。
13時からは別の大事な用もあった。よみうり大手町ホールで行われる「桂宮治独演会」の配信視聴である。落語サブスク「産経らくご」で見られる生配信。NHKの出場者には申し訳ないが、ミニスカサンタの桂宮治と大緊張のNHK出場者、両者を睨み合いながら祝日の午後は過ぎて行った。
NHKは立川吉笑の完全優勝。三遊亭わん丈も立川吉笑のいない年なら間違いなかったと思わされる出来だった。
赤江珠緒審査員は出場者2人に8点をつけた。個人的には一番の衝撃。近年の基準なら8点はダメ、7点は死刑宣告である。
15時からの『たまむすび』で赤江珠緒は直球かつ真摯に8点の理由を説明した。radikoのタイムフリーで聴いてほしいが、とても明確な基準によるもので審査員としての仕事を全うした結果だった。赤江さん、ごめん。鶴太郎より落語にちゃんと向き合ってると思うよ。
その放送でもう一つのポイントは、一之輔が語った「NHKを早く取りすぎた自分の、そして桂宮治の苦しみ」である。宮治はNHKをとった日から真打昇進までに苦しみがあり、笑点メンバーになった日から今に至るまでの苦しみがあるだろう。苦しみの質は違うが、一介の宮治ウォッチャーとしては最近特に大変だろうなあ、と思う。ところで宮治ウォッチャーって何だ(堀井憲一郎審査員がよくやる手法)。
と、そこでモニターに目をやると宮治が「鼠穴」を演じていた。宮治は独演会の最後に「どうしようもない人間の業」を描いた暗い噺をすることが多い。最初は違和感があったが、宮治はもしかしたらこういう噺がしたい噺家なのかもしれない、と近年思うようになった。
宮治流「鼠穴」のサゲが凄かった。本当の意味で救いようのない噺。笑点メンバーの明るい高座を期待した客はノックアウトされただろう。これからも宮治はこのような形で良い意味で客を裏切り続けると思う。でも宮治の「苦しみ」がこのような形で浄化されるなら、ファンとしては本望だ。
もしかしたら立川吉笑も、これからはこれまでとは違った形の「苦しみ」があるかもしれない。もちろん誰もが苦しみを抱えながら生きているし、『ぷるぷるの夜』に書かれたいくつもの夜を想うと、そこらへんの噺家にないタフさを備えていると思う。
生意気に言わせてもらうなら、苦しみを抱え込まない程度に、軽やかにこの道を歩んでほしい。同年生まれの一ファンとして、そう思っている。
改めまして、立川吉笑さん、NHK新人落語大賞おめでとうございます。

今朝、小学校の同級生の訃報を知る。禍福は糾える縄の如し。

そんな中、朝のラジオで鬼束ちひろ「流星群」が流れてきて、感情がブワーとなって、落ち着くためにこれを書きました。ワーキングブワー。

『ぷるぷるの夜』に登場する明け方のラジオは何だろう。
『生島ヒロシのおはよう一直線』でないことは確かだ。

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