新しいBORO 前編
捨てられた服から、新しいコットン生地ができるまで
環境に配慮したリサイクルコットン素材「BORO」は、循環する服作りを目指すtennenのメインプロジェクト。
より多くの方に広げたいとクラウドファンディングでも製品を販売中ですが、意外とマガジンで取り上げたことはなかったので、改めてここでご説明させていただきます!
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私たちtennenが目指すゴールは「幸せの循環」を作ることです。それにはまず、私たちの住むこの地球を健全にすること。その上で誰も不幸にしない循環を作ることができれば……。
現状のアパレルのシステムはどこかで(地球も含む)誰かが不幸になってしまっています。tennen BORO プロジェクトは、「実際に廃棄されたコットン製品から新たなコットン製品を作る」新しいリサイクルシステムです。
“着古して捨てられたコットン衣料”から
新しいコットン衣料を作ろうと思った理由。
現在アパレル産業における環境問題は多岐にわたっていて、様々な問題を抱えています。例えば、Co2 排出量、水の使用量。さらに自然環境汚染、労働問題、健康被害、人権問題など。
ここにきてアパレルメーカー、ブランド、関係者の皆様もサステナブルをテーマに取り組み、すでに改善策はムーブメントになりつつあります。それはとても意味があることで、これからの時代にもっとも重要な事だと思います。
しかし、なかなか前に進まないのも現状です。今までの経済活動を抜本的に大きく変化させなければ、これらは企業のPRの範疇を抜け出せません。それでも地球規模の汚染やエネルギーの消費などについては、もう待った無しの状態です。
私たちは大きくシフトチェンジし、大きくマインドチェンジしなくてはいけないと思っています。そこで「tennen」は、「誰かがやらなくちゃいけない」であれば「やってやろうじゃないか!」という事で、日本の素晴らしい技術を集約して、新しいエネルギー(原料)作りに挑戦しました。
江戸時代から続く日本の伝統
「襤褸」から着想を得たtennenの「BORO」
新しいエネルギーをと考えた末、行き着いたのは江戸時代の庶民の生活文化。
現在の日本はエネルギーの78%、衣類に関しても95%以上は輸入に頼っていますが、江戸時代の約250年間は鎖国をしていたので、エネルギー自給率は100%に限りなく近かったはずです。
当時は海外からは何も輸入せず、すべてを国内のエネルギーや資源でまかなっていて、衣料品でいえば「古着屋」が重要な役割を果たしていました。
※画像はイメージです。
明治時代までは、布はすべて手織だったので高級で貴重なものだったそうです。そのため、着古した服でも継ぎ接ぎしながら、大切に着続けられました。当時の江戸の町にはリサイクル文化が根付いていて、4,000軒もの古着商がいたとも言われていて、その当時、繊維リサイクル業者の人々を「ボロ屋」と呼びました。
漢字で「ボロ」を書くと大変難しいのですが「襤褸」、こうなります。この意味を調べると
・使い古した布、ボロ切れ。
・着古して破れた衣服。また、継ぎだらけの衣服。となります。
その昔、寒冷地である東北地方では綿花の栽培ができず、農漁民の日常衣料は麻(ヘンプ)を栽培して織った麻布でした。1枚の麻布で寒すぎれば、何枚でも重ねていく。枚数を重ねれば防寒性が増すし、糸を刺していけば丈夫になる。傷んで穴が空けば小布でつくろい、また布と布のあいだに麻屑を入れて温かくする。
そうした厳しい生活環境から生まれた知恵こそが、「ボロ」なのです。
tennenの「BORO」プロジェクトは「ボロ(襤褸)」の再生であり、現代版。日本の技術と精神、クリエイティブの力を発揮し、本来価値のあるはずの洋服をもう一度蘇らせます。
これからは、化繊衣料だけではなく
コットン衣料もリサイクルする時代。
最近は様々な場所で着古した洋服の回収BOXが置かれるなど、洋服に対する消費者の意識もずいぶん変わったと思います。またメーカー側も、化学繊維のリサイクル素材を使ったウェアを作っているところが増えてきています。
そんな最中、tennenが取り組んでいるのは“着古された”コットン衣料のリサイクルです。
特定の石油系の化学繊維であれば溶かして原料に戻す「ケミカルリサイクル」ができますが、綿花が原料であるコットン衣料はその方法がとれません。だから細かく裁断して繊維状にして、また再び紡ぐという「マテリアルリサイクル」という方法をとらざるを得ません。
もちろん、コットン素材のリサイクルは以前から存在はしていたのですが、それはあくまで余ったワタや残布、裁断クズを使ったものでした。しかし、tennenの『BORO』は、不要になったコットン製品から新たな原料を作り、そこにオーガニックのバージン素材をミックスして作り上げています。しかも、快適な着心地と共に。
実は問題だらけの繊維業界。
化学繊維はもちろん、コットン栽培も環境負荷が大きい?
化学繊維は石油から作られているためエコとは言いにくいですが、コットン衣料の生産においても、実はたくさんの資源が使われています。私たちは、このような問題を、循環型コットンウェアで変えていきたいと思っています。
下図はおおよそTシャツ一枚にかかるエネルギーや水の量になります。
これらの問題を解決するために、『BORO』の繊維は50%を衣料品からのリサイクルコットン、50%をオーガニックのバージンコットンから作っています。
どうしても繊維長が短くなるので現状では再生原料のパーセンテージは50%が限界ですが、いずれは割合を増やせるかもしれません。
しかし単純に考えると、必要な新しいコットンは通常の半分。これだけでもCo2の排出をはるかに抑えられ、Tシャツ一枚あたり約2,700リットルの水も削減できます。
また、この動きが広がればコットン栽培に使用する化学肥料や農薬も削減することができますし、環境に対するインパクトを抑えられます。そしてその先には、綿花栽培で働く方々の健康的被害も低減させ、正しい環境を生むことにつながると考えています。
着心地が生むサステナビリティ。
ただ「環境負荷が少ない」というだけでは、アパレルメーカーとしては50点。あとの50点を獲得するためには「今までのやり方で作られた製品と変わらない品質の服を作る」必要がありました。いくらエコだからと言っても、着心地が悪くて着られなくなったら本末転倒です。
「捨てられた服から服を作る」というという課題に取り組むと同時に、「捨てられない服を作る」というのも同じように大きな目標として掲げています。
今回生まれた長袖Tシャツとパーカーは、タフで着心地がよく、どこか懐かしいヴィンテージ感のある見た目で、なおかつエコフレンドリーです。
ファストファッションとは違い、決して安価ではないtennenの洋服。ですが、素材、匠の技術をもつ協力工場、tennenのビジョンを知っていただければ、きっとリーズナブル(理由のある)なものだと感じていただけると思います。
BOROプロジェクトは進化中!
2020年にクラウドファンディングにて皆様にご支援いただいたBOROプロジェクトの第一弾 BORO Tee。当初の予想を上回る反響に、BOROの明るい未来を感じることができました。それと同時に様々なご指摘・ご意見もいただきました。
現在展開している長袖Tシャツとパーカーは、前作から一年以上をかけて、さらに研究開発し、アップデートされた第二弾。
前回同様に原料は捨てられたコットン衣料50%と、オーガニックコットン50%のブレンド。しかし、今回からリサイクルコットンの糸づくりを工程から全て、見直したことで肌触りの良さを向上させ、New BORO というべき自信作に仕上げることができました。
詳しいプロダクトに関しては、こちらの後編をご覧ください。