ひとりぼっちのアンチヒーロー「バニシング・ポイント」 (点滅社映画日記 ♯1)
どうも、こんにちは。ゴム製のユウヤです。
映画と読書とウルトラマンが好きです。あっ! あと点滅社で働いてます。
今回から社長の屋良様に頼まれて映画に関する記事を書くことになりました。
報酬はヤンヤンつけボーとサクマドロップらしいので、頑張って仕事をしたいと思っています。
俺としてはそれより、禁煙者の俺がいる狭い仕事部屋でぷかぷかぷかぷかタバコを吸うのをやめてもらう権利が欲しいのですが、落語の「鉄拐」みたいに自分の分身を吐き出す練習かもしれないですし、仕方無いですかね。
ちなみに屋良君とは6年くらい前からの友達です。
という訳で本題です。
屋良君からの要望としては、
・映画に関すること
・何か適当に縛りを入れて(テーマを決めて)
ということだったので、とりあえず人におすすめを聞いて、その映画の話をすることにしました。縛りはなんにも思いつかなかったですな。
で、記念すべき第一回目はですね、屋良君の好きな映画である「バニシング・ポイント」です。
実際におすすめを聞いた訳じゃないんですが、多分このタイトルを出すと思うので、先読みでやっておきましょうね。
バニシング・ポイント(Vanishing Point)
製作:1971年、アメリカ
監督:リチャード・C・サラフィアン
あらすじ
新車の陸送をしているコワルスキー(バリー・ニューマン)は、「15時間以内にデンバーからサンフランシスコまでをダッジ・チャレンジャーで走りきってみせる」というくだらない賭けをする。
無意味で無茶なこの賭けに勝つため、法を破り警察に追われながらも猛スピードでハイウェイを飛ばすコワルスキー。
旅の合間に少しずつ明らかになっていく彼の過去は、暗い敗北の歴史だった。
何にも従わずただひたすら道を突っ走るコワルスキーの姿に、体制への不満を募らせている市民たちは喝采を上げるが……。
ジャンルとしては「アメリカンニューシネマ」に分類されます。「アメリカンニューシネマ」というのは、大雑把に言うと1967~1979年頃に作られた反体制的な映画群の総称で、主人公が世間から疎外されていたり、悲劇的な結末を迎えたりすることが多いです(諸説あり)。
久し振りにこの映画を観て思いましたが、主人公は殆ど喋らないし、説明やナレーションも少ないし、隠喩表現も多いし、評価が結構分かれる物になっていますね。
何物も意に介さず走り続けるコワルスキーに寡黙な男らしさを感じる人、運転技術の卓越さに美学を感じる人、悲しみを背負って破滅にひた走る姿に共感してヒロイズムに酔う人、様々でしょう。
俺はコワルスキーが疲れの中で時折浮かべる笑顔と、乾いた大地の混ざりあった画面に諦念めいたものを感じて、一気にこの映画に引き込まれました。
コワルスキーは道中でラジオDJの助けを借りたり、強盗に遭遇したり、過去に助けた人物に出会ったりするのですが、映画の始めと終わりで成長や心境の変化が見られず常に一貫した姿勢でいるのも、ハードボイルド好きな俺にはハマる要素でした。
バリー・ニューマンの、若さを残しつつ人生経験によって老いに傾いている容姿、立ち居振る舞いもセクシーでかっこいいですね。
同じアメリカンニューシネマで設定がよく似ている「イージー・ライダー」(1969年、デニス・ホッパー監督)、「明日に向かって撃て!」(1969年、ジョージ・ロイ・ヒル監督)、「ダーティメリー・クレイジーラリー」(1974年、ジョン・ハフ監督)とは違い、道中に会う人々を除けばずっと一人でいることも、孤独な人間には共感出来る要素になっていていいですね。
「劇中で少しずつ主人公の過去が回想される」っていう構成は「野いちご」(1957年、イングマール・ベルイマン監督)からの引用だと思います。そしてそれが「バニシング・ポイント」を経由して「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(2019年、クエンティン・タランティーノ監督)に登場するスタントマン、クリフに受け継がれているんじゃないですかね。「デス・プルーフinグラインドハウス」(2007年、同)にはダッジ・チャレンジャーが出てきますし、タランティーノもこの映画が好きなのでしょう。
この映画を気に入った方には、荒っぽいカーチェイス、反権力といった「バニシング・ポイント」の思想を受け継ぎつつも別の方向性を指し示してくれる「コンボイ」(1978年、サムペキンパー監督)をおすすめします。破滅的で一本気な作品が多いやくざ映画に対しての「チ・ン・ピ・ラ」(1984年、川島透監督)のように、新しい世代として、ハッタリかましてでも生きる根強さを見せてもらえます。
ということで、もう疲れたので「バニシング・ポイント」の話はここまでにしましょうね。
それじゃあ次回があればまた会いましょう
(ゴム製のユウヤ)
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