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備忘録#2【アメとムチの“アメ”を欲しがるやつは風俗に行け!!】

皆様。ご機嫌麗しゅう。
人生の混迷を極める仔羊、てんこ盛り男でございます。

今回のタイトルを承知で読み始めたあなたは勇者か、賢者か、はたまた狂人か。
何はともあれ今、私が書き綴る文章に存在意義が生まれているのはそんなあなたのおかげであることはまごう事なき真実。心より感謝申し上げます。

こちらの備忘録のタイトルは私、てんこ盛り男の心を震わし、日々死にゆく脳細胞と共に忘却の彼方へと走り去るはずであった誰かの言葉を引用させてもらっております。
もちろん今回も例外ではございません。

私、この度。
ひょんなことから知り合ったフリーランスの“女王様”のお誘いにより奇妙奇天烈な催しに参加してまいりました。

その名も『玉狩り大会』。

新宿歌舞伎町にあるキックボクシングジム

「“玉”を“狩る”とはなんぞや?」

よくぞ、聞いてくださいました。
『玉狩り大会』とはそれすなわち、我々男児を生物学的見地において男たらしめる象徴であり外界に対し薄皮一枚を隔てるのみの臓物“キンタマ”を
蹴り上げ、絞り上げ、音を上げさせることを目的とした大会でございます。

遂にてんこ盛り男の勲章も天に還る時が来たのか。
いやいや、まさか、滅相もございやせん。
私が生涯をかけてぶら下げてきたソウルメイト達にはまだまだ成すべきことがある…はず。
というわけで私。
僭越ではございますがレフェリーとして参加させて頂く次第と相成りました。

「そんな大会にルールなんてあんの?(笑)」

控えろ!下郎!!
偏見や好奇の目で見るのは構わぬ。
されど誇り高き彼等への侮蔑は仏が許してもこのてんこ盛り男が許さん。
『玉狩り大会』とは互いへの敬意を胸に他の尊厳を認めると同時に己が人生の幸福を追求する紳士淑女の祭典である。
この場に“変態”は存在すれど“人でなし”は1人もいない。

よってルールも当然存在する。

・全5ラウンド
・ダウン後10カウントでKO負け
・女性陣の蹴りを避ける,逃げる行為,内股は禁止
・いかなる状況,事情に関わらず射精した者は即時退場。永久的に出入り禁止

『玉狩り大会』公式ルールブックより引用

“性”と密接に関わる内容でありながらその最終目的である“フィニッシュ”は厳罰に処される。
さらに驚くべきはこのイベントの料金設定。

・女性は観戦無料。
・男性は3,000円。
・出場者はエントリー料10,000円。

『玉狩り大会』公式告知より引用

男女平等がなんのその。
女性に対して蝶よ花よの厚待遇。
このシステムこそが秩序を作り真の公平性を実現させるのだ。

遠路遥々、北海道からこのイベントにやってきた
美しいショートカットのウィッグにR18でも心許なさを感じずにはいられない過激なビキニを纏った
通称“メス豚のサキ”(おっさん♂)も例外無く観戦料を支払い入場した。

それはさておき。

“エントリー料10,000円”

聡明な読者諸君ならもうお気づきであろう。
この日集まった男性出演者は10,000円という対価を支払った上でキンタマをめちゃくちゃにされるのだ。
もちろん交通費から万が一、怪我をした際の治療費まで自腹確定。

数々の変態イベントに赴き、
変態達をレンズ越しに見つめ、そのカメラに収めてきたカメラマンの山田氏はこう言う。

「金払ってキンタマ蹴られるんだよ?こんな不条理どこにあるんだよ。」

そう呟く彼はどこか誇らしげで
そしてなぜか上裸だった。
熱を帯びつつ、さらに彼は続ける。

「アメとムチなんて言葉があるけど、こいつら(女性出演者達)はアメなんてくれねえよ。ムチだけ。それでもこうやって集まるんだ。最後にもらえるアメのためにムチもらってるわけじゃない。そんじょそこらの変態とはモノが違う。」

そして最後にこう締め括った。

「“アメ”が欲しいやつは風俗に行け!!」

『玉狩り大会』試合前 上裸カメラマン山田氏の発言より

人生という貴重な“時間”を費やし、
その身を酷使して得た“金”を支払い、
性風俗に行けば簡単に与えてもらえる“射精”を封じられ、
それでもなお、危険と隣り合わせの痛みを伴う快楽を追求する者達。

山田氏もまた、彼等に魅せられた1人なのだろう。
彼がてんこ盛り男に伝えたかったのはその愛すべき変態達のことを“ただの変人”という短絡的な見方で括って欲しくない。
その一心であったに違いない。

さて。満を持して紹介しよう。
この日、ジムを熱狂の渦に巻き込み数時間の死闘を繰り広げた後、私のヒーローとなった男達を。

タマキンピエロ【タマロー】
             〜覆面越しの不敵な笑み〜
『金蹴りインフルエンサー』を自称する彼は覆面に自作のTシャツがトレードマーク。
飛び上がり、声を上げ、リング上を所狭しと踊り狂う姿はまさにエンターテイナー。
彼の双肩には金蹴り界の未来がかかっていると言っても過言ではない。

トリッキーなリアクションで観衆を沸かせる タマロー氏



血染め大福【たま金二郎】
               〜金蹴り界の力道山〜
“デカ過ぎる”キンタマを持つもの静かな男。
しかしリングに上がると彼は豹変する。
時に蹴り手を挑発するように。時に鼓舞するように彼はその巨大なキンタマを揺さぶる。
たとえ血を流そうとも彼の顔から穏やかな笑みが消える事はない。
その大きなキンタマと背中にあの力道山が重なる。

自らグランドスタイルで闘う たま金二郎氏



西の独玉竜【つかポン】
     〜伝説に食らいつく いてまえ!タマキン道〜
長年の金蹴りにより片玉を失いつつも今もなお最前線を走り続ける金蹴り界の西の雄。
「自分はもうギリギリですよ。」汗だくになり、そう溢しながらも前に出続ける巨体はまさに重機。
タマキンブルドーザーは泥くさく、それでも確かにそして愚直に進み続ける。

絶叫と共に汗を散らす つかポン氏



金蹴られ一刀流【金蹴られ侍 シンジ】
          〜最強ゆえに干された伝説の男〜

金蹴り界の歴史は彼“以前”、彼“以降”に分けられる。
年間10,000発超え。
これは彼が積み重ねた金蹴られの数である。
圧倒的過ぎるがために干されてイベントに呼ばれない時期もあった。
それでもなお、ただひたすらに己のキンタマと向き合う研鑽の日々。天才とは孤高ゆえに孤独。
しかし、その侍の背を追う新たな侍により今日の金蹴り界がある。
生ける伝説。侍は今、何を思うのか。

膝蹴りで顔を歪めるもアソコはふっくらするシンジ氏



声高々な入場アナウンスと共に男達がリングに集結。
待ち構えるはドSのいおりん氏率いる“ドS軍”。
遂に決戦の火蓋が切って落とされる…

第1ラウンド。

ゴングと共にドS軍が静かに前に出る。
まずは小手調べ。
レジェンド金蹴られ侍が蹴りを受ける。

まだまだ互いに実力を隠しながらの攻防。
蹴られ手が侍からつかポンへ移り、そしてたま金二郎へと移る。
いつの時代も平穏は突如として崩れ去る。

挑発するようにキンタマを揺さぶる たま金二郎にドS軍の1人が烈火の如く蹴りを入れる。
それは今までのチュートリアルを思わせる蹴りではなく実践、中でも仕留めの蹴り。
怒涛のラッシュを受け、よろめく二郎。
しかし齢50歳前後のこの男の笑みが消える事はなかった。すぐにファイティングポーズを取り試合は続行。

一気に上がったドS軍の攻勢の熱は次なる標的タマローを襲う。

「ホォォォウゥ〜!!」

タマローの絶叫がジムにこだまする。
一撃でももらえば悶絶ものの蹴りを目の当たりにし、この絶叫を聞いてもレフェリーである私は試合を止める事はなかった。
なぜなら私は確信していた。

“タマローは愉しんでいる”

タマローだけではない、先ほどのたま金二郎も間違いなく愉悦の境地にいる。
痛覚がある以上、彼らも確かに痛みを感じているはず。
それでも顔を見れば分かる。彼らは痛み以外の何かを感じている。
何より、マジ蹴りを食らう2人を侍とつかポンが心なしか羨ましそうな目で見ていたことが私に確信させた。

“この人達なら大丈夫”

私は“心配”と言う名の鎖から解き放たれた。
タガが外れたようにつま先蹴り、膝蹴りを繰り出すドS軍に襲われる解放者達を見つめる私の目はレフェリーにはあるまじき輝きを放っていたことは言うまでもない。

ゴングが鳴り響く。


第1ラウンド終了。


経過時間は約30分。
この試合は5ラウンド制。
まさか彼らのキンタマはあと2時間近くもこの打撃に晒され続けるのか?
背筋を凍らせる私をよそに戦士達の表情は秋の空の如く晴れやかであった。

第2ラウンド。

第1ラウンドの後半では自ら蹴りの威力を倍増させるグランドスタイルを取りドS軍を圧倒した男達。
しかし第2ラウンドでは蹴りに加え恐怖の技が追加される。

“玉絞り”

キンタマを握り搾り上げる鬼畜の所業。
さらには大地に寝転ぶ男のキンタマを掴み持ち上げる“キンタマ神輿”
キンタマを両手で掴み大回転を加える“キンタマジャイアントスイング”。
金蹴られのスペシャリストである4人は口を揃えて言う。

「握り技が1番痛い。」

恐れながらも彼らが退く事は無い。
果敢に挑み来るドS軍の攻撃を全て受け切り、若干アソコをふっくらさせる男達。
そんなリングに突如として暗雲が立ちこめる…

たま金二郎のパンツに血が…!!

握り技の際、ドS軍のネイルが二郎の薄皮を傷つけたことによる出血。
さすがのてんこ盛り男も試合を止め二郎の元に。
試合棄権も視野に入れて安否を確認する私に二郎はずっと変わらない穏やかな笑みを向けた。
我々の間に言葉は必要無い。
その笑みこそが何よりのファイティングポーズ。
たかがレフェリーに1人の男の悦びを奪う権利などあるものか。
パンツの交換を促し、交換が完了次第試合再開。

そこから3度のパンツ交換を行いながらたま金二郎は最終ラウンドまで戦い抜いた。

第3ラウンドは鞭など道具の使用解禁。
第4ラウンドは全ての複合。
そして第5ラウンドはヒール、安全靴、Dr.Martinを装着しての蹴り。

このジムでの出来事は私にとって一瞬のようで永遠のような時間だった。

「サオはやめて!!!!」

鞭がキンタマではなくサオに直撃した時のタマロー氏の発言より

「乳首は苦手なんですよね」

乳首を捻り上げられた後のつかポン氏の発言より

「痛い!痛い!玉じゃなくて四十肩が…!!」

羽交い締めにされた金蹴られ侍シンジ氏の発言より

「安全靴はマズいですねぇ」

第5ラウンド直前ビビるつかポン氏の発言より

「ブーツ好きなんですよ///」

第5ラウンド直前ブーツを見たタマロー氏の発言より

「邪魔だよ!盛り男!!キンタマが見えねえよ!!」

試合中リング外で撮影を行う上裸カメラマン山田氏の発言より

肩で息をするドS軍の前に立ち塞がる四つの背中と七つのキンタマ。
3時間に渡るドS軍の猛攻にダウン無し、ひと玉も欠けることなく立ち続けた金蹴られ侍、つかポン、たま金二郎、タマローの4名。
エントリーした全員が残ったため、優勝者はじゃんけんで決めることに。
映えあるチャンピオンに輝いたのは…

優勝 金蹴られ侍シンジ

景品のゴールデンタンブラーを手にする金蹴られ侍シンジ氏

偶然にもじゃんけんによる優勝者決定戦はレジェンド金蹴られ侍シンジ氏の優勝で幕を閉じる。
しかし、この日1番の声援と拍手は選手達全員に送られた。
4人はドS軍を讃え、ドS軍は4人への敬意と共に再戦を誓った。

ひとしきりの宴を終えた後、選手、観客、その場にいた全ての人間は着替えを済まし日常へと戻って行く。
ひとたびジムを出てしまえばあの熱狂が夢だったようにいつもと変わらない見慣れた景色が広がる。
ここは新宿歌舞伎町。天下御免の欲望の街。
その街で最も欲望にまっすぐ向き合い、選手、観客全員ががむしゃらに駆け抜けた『玉狩り大会』が今終わった。

まだ熱の残る私の身体に冷たい秋の小雨が降りかかる。
私の横を私服に着替えた金蹴られ侍シンジ氏が通り過ぎる。
私の挨拶に応えてくれる“普通”のおじさん。
つかポンもたま金二郎もタマローもまた、それぞれの日常へと戻って行く。“普通”の1人の社会人として。

けれど、私が忘れる事は無い。
あの日の感動、胸を焦がすような熱狂、自身の欲望と無邪気なまでに純粋に向き合う彼らの姿を。

誰が何と言おうとこんな素晴らしい仕事に呼んで頂けたこと。
恐悦至極、感謝感激雨霰雹に狐の嫁入り通り雨でございました。

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