関東での降雪に伴う雷
再解析データを使って過去の顕著現象事例を調査されている黒良さんが、2月5日の関東南部での雪が降る中での発雷についてnoteで分析されています。
https://note.com/rkurora/n/nfc1aa8152348?sub_rt=share_pb&fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTEAAR3UpzJoajfrekq8uhDg_LyvKI83_u4UWkBJmoJXAUJGgTNu9d5OnVPn-_Y_aem_AeFm6K452HFnrs2NM75ygvDGGvRkRH1Rpx7oHnfPOXJcq0PwCR4uyTFiZZ8SxbvYvUGVE0A1OOT8Furke1wrtXRC
類似の現象が過去に3例あり、そのうち2010年2月1日の夜、雪が降る中で雷が観測された事例が今回の事例と背景が似ているようです。今回もそうですが、地表面付近に寒気が入って雪になっているので、大気の成層状況はかなり安定なので、日本海側の冬季雷とは異なり、なぜ雷が、というのが私の疑問でもありました。
2/5の大雪の夜、私も冬タイヤで都内を車を走らせていて、大渋滞の中、雷光をたびたび目撃してびっくりしました。この大雪、結果的には予報通りなのですが、なんでこんなに降水量が多くなったのか、なんで雷まであんなに活発だったのか、冬の日本海側の雷のようなもの、という解説もどこかで見ましたが、本当にそうなんでしょうか。
黒良さんの分析によると、地上から640hPa付近までは安定で、そこから上が湿潤断熱線に近く湿潤対流を起こしていたのではないか、ということです。すなわち、640hPa付近を雲底とするような対流雲が発生して雷を発生させていたというものです。気圧が640hPaに相当する高度は、ほぼ富士山の頂上付近、3700m付近です。そんな高いところを雲底としてそこから上に積乱雲がもくもくと立っていたということになります。
対流が立つかどうかの判断は、エマグラムでは地上から空気を乾燥断熱減率で持ち上げて飽和に達したら湿潤断熱減率で持ち上げて、それが背景場の気温と比較して浮力を得ることができるか、という方法で調べます。
数値予報モデルや気候モデルなどでも、対流をパラメタリゼーションするようなモデルでは、大気境界層(地表面から1000m程度の厚さ)から上空に空気を持ち上げて浮力の大きさを評価して、それをもとに湿潤対流の強さを決めることが多いです。
ただ、これではすべての湿潤対流を取り扱うことができない、ということで、今回の対象となった現象のように中層から持ち上げる中層対流、というものも古くから取り込まれています。
今回や2010年の関東南部での雪と雷の同時現象はまさにこの中層対流で発生した積乱雲だったということなのかもしれません。私はかなりガッテンです。関心のある方はぜひ黒良さんのnoteをお読みください。
積乱雲をある程度扱えるMSMのような非静力学モデルでこのような現象がどう表現できていたのかのも大変興味がありますね。過去の気象を再現する再解析データは、こうした調査においても大きな役割を果たします。