ECMWFでのAI気象予測

BBCニュースの20分ほどの枠でECMWFの長官Florence Rabierさんが出演して、英国気象局の専門家やOxford大学の専門家らとAI予報の議論をされています。一般向けのニュースにこれだけの時間をとってAIで異常気象にどう取り組むか議論するのもすごいなと思いますし、これまで物理手法での数値予報で世界を席巻してきたECMWFの力の入れ方がよくわかる動画になっています。

Florence Rabierさん、あれはいつだったかなあ、国際会議で来日されて、居酒屋での懇親会でお話をしたことがあります。ECMWFや気象衛星など欧州各国で共同運用する仕組みはどう出来上がってきたのかなど質問した記憶があります。彼女は衛星関係の専門家だったこともあり、気象衛星を例に挙げて、ドイツとフランスが一緒にやるのは結構大変だったし、今もいろいろとあるのよ、という話をされていました。いまやECMWFのトップとして異常気象が世界で社会問題として認識される中で世界の気象予測をリードしています。

ECMWFでは、Workshop on Diagnostics for Global Weather Prediction (全球気象予測の診断ワークショップ)が先週(9/9-12)開催されました。
ワークショップの名称からも想像できるように渋い職人的な内容なのですが、この中でも人工知能・機械学習のセッションがあり、Why are AI models so competitive, and are they physically consistent?という討論など、AIによる気象予測がこの2年で急速に進展したことに対する専門家たちのさまざまな意見、展望等の討論があり、ECMWFの内外の専門家がいまどう受け止めているのか大変勉強になります。

ECMWFがすごいのは、こうしたワークショップを動画で希望者がだれでも閲覧できるようにしてくれることです。時差が大きな日本からもじっくり会議の様子を見ることができますので、関心のある方は下記から登録して勉強してみるのもよいかと思います。ただし、もちろん、すべて英語です。

このワークショップでも議論されていますが、こうしたAI気象予測が可能になったのは、ECMWFが過去の観測データをもとに再解析を行い、そのデータをGoogleやNVIDIAといった巨大情報企業がGPUベースの計算資源をたっぷり使ってAIで学習する仕組みを構築したからでもあります。再解析については下記に私の解説があります。

10月末にはこの再解析の国際会議が東大で開催され、主催者側として準備を進めています。もちろん世界の再解析をリードするECMWFからも多くの来訪者があります。

私自身、気象庁を退職して再解析プロジェクトの立ち上げに東大で関わった5年前、再解析がここまでAI気象予測に役に立つものとは思っていませんでした。まあ、こんなに猛暑をはじめとする世界の異常気象が頻発することが、21世紀後半を待たずに起きてしまったというのも想像以上だったというのもあります。私自身のAI気象予測の最近の動向について受け止めは下記にもありますので、こちらもよろしければどうぞ。


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