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午後4時、埼京線各駅停車

1本の埼京線が荒川を渡っている。

あの人たちが口を揃えて嫌っていた満員電車の影はなくて、穏やかでぬるい空気がぼくを微睡ませる。高架上を走り続ける埼京線は背が少しずつ違うアパートの間を通り抜ける。脈を打つように現れたり隠れたりする夕陽の日差しは、ずっと眺めていたい。昼間は眩しくて見つめられないけれど、今だけは見つめていたい。

それぞれのシートの隅に座って、壁にもたれかかる。ぼくたちは目的も行き先も違うけれど、この時間と空間を奇跡的に共有していている。たった数分間だけは同じ方向に同じスピードで進む。でも、もうすぐ止まるだろう。

浮間舟渡駅はもう東京都だ。人が多くなってくるだろう。この微睡みは解かれてしまう。まだ着かないで。