話題の「劇団ノーミーツ」!完全リモートのライブエンタメの姿に迫る 2020/10/14 #テンカイズ
新型コロナウイルスで大きな影響が出たエンタメ業界。その中でも演劇業界は、様々な公演が中止を余儀なくされるなど甚大な損害を被りました。
そんな時、旗揚げされたのが今夜注目する”劇団ノーミーツ”。完全リモートで行われた旗揚げ公演の「門外不出モラトリアム」は、2500円の有料チケットを購入した合計5000人が自宅での演劇鑑賞を楽しみました。制作も上演もフルリモートの劇団ノーミーツ。今アツい演劇集団です。
MCは宇賀なつみさん、プレゼンターはBusiness Insider Japan浜田敬子さん。
収録の様子は【番組公式YouTubeチャンネル】でご覧いただけます。
宇賀:今夜のゲスト。劇団ノーミーツ主催の広屋佑規さんです。
広屋:劇団ノーミーツの広屋と申します。よろしくお願いします。
浜田:ノーミーツなのに会っとるやん!みたいな(笑)
広屋:そうなんですよ!ミーツで今日はお願いします。
宇賀:いろいろ伺いたいことあるんですが、そもそも広屋さんは何をされてた方なんですか?
広屋:僕は元々ライブエンタメ畑の人間でして。「Out Of Theater」という没入型のライブエンタメカンパニーで、街中とかを舞台に見立てて、ミュージカルのショーをしたりとか。「Out Of Theater」という名前の通り、劇場から飛び出していろんな場所を舞台空間にしようっていうプロジェクトを中心にずっとやっていました。
浜田:The リアルの街中でやってた?
広屋:Theリアルですし、なんなら舞台よりも3密が売りの企画をたくさん手がけていたような人間だったりします。さらに自治体の方とか組んだりとかして、ひとつのショーを作るみたいなことをずっとやっていました。
宇賀:それがコロナでできなくなって……ってことですよね?
広屋:コロナの影響もあって今年(2020年)の2月、3月ぐらいまで準備してきたものが、全部中止ないし無期限延期になってしまって。もう完全にお先真っ暗の状況になってしまったというのが、今年の最初ですね。
<フルリモート演劇って、一体どんなもの?>
宇賀:そんな中で製作も上映もフルリモート。「劇団ノーミーツ」旗揚げですが、いつ頃から考えて、どういうきっかけ、経緯でできたんですか?
広屋:きっかけはまさにコロナの影響で、やはりリアルのエンタメができなくなってしまったので、どうしたものかと相当悩んだ時もありました。でも世の中の人がオンラインツールを使い始めていて、僕もZoomを使ったんですけど、Zoomって単純にオンライン上で会話ができるじゃないですか。会話ができるなら、お芝居だったらまだできるかもって思って、そこで1回、Zoomを使ったお芝居を作ってみようって思って仲間に「作品作らないか」って声をかけ始めたというのが最初でした。劇団ノーミーツを旗揚げしたのが4月9日で、緊急事態宣言が発令されたのが4月7日でした。
宇賀:すぐですよね。
広屋:最初に声かけしたタイミングが、さらに2日前の4月5日ぐらいでした。とりあえず声がけしてから、3〜4日で何かちょっと作ってみようよって仲間を集めて、最初に作品を発表したのが4月9日。
浜田:最初はTwitterでしたっけ?
広屋:はい、最初はTwitterで140秒以内の短編のリモート演劇作品を発表してました。
本当にあの時は仕事がなくなってしまったからこそ時間があったので、3日に1編ぐらいのペースでどんどん作品を発表してたんです。ありがたいことに、一応今の所累計再生回数が3000万回再生を超えるぐらい多くの方に見ていただいて、それで「劇団ノーミーツ」っていう名前を知っていただいたという声もあります。
浜田:そこから旗揚げ公演が5月ですからね。
宇賀:その公演は結構長いんですよね?
広屋:そうなんです。最初4月の時は短編を作ってたんですけど、やっぱり長編をチャレンジしたいと。2時間丸々、オンラインだけで上映する演劇というのを5月末に上演しました。
<オンラインでも自然な会話を演出>
浜田:旗揚げ公演が話題になっていたので公演見てみたら、これまでにない衝撃の面白さ。しかも役者さんがそれぞれの自宅にいて、その自宅からひとつの空間で演じてるんです。打ち合わせから、役者のオーディションから、稽古から、一回も会ってないんです。
宇賀:すごいわ〜でもあの時期いろんな方がいろんなことを考えて、いわゆる家でできるリモート撮影で作品作ったりされてる役者さんとか他にもたくさんいらっしゃったと思うんですけど、「生」っていう。
広屋:「生」にこだわりたかったっていうのはやっぱりあります。演劇であるというところが、すごく大事な部分だったので。
浜田:オンラインってことを感じさせないぐらい、コミュニケーションのストレスがない。あれは何でできたんですか?あのタイムラグのなさ。
広屋:それは本当にこの短期間で既に2回長編をやったというその経験の蓄積でしかないんですけれども、一つはもちろんテクニカルサイドとしてスタッフが一生懸命環境を整えるってところはあります。
あと一つは、オンラインだと会話ですらもう一拍ぐらい遅れてしまうと思うんですよ。それを役者の方が稽古を重ねていく中で、その一拍を置いた中での会話というのを自分の中に落とし込んでいただくんです。なので会話が違和感なく聞こえる。
浜田:一人語りでずっとしゃべるシーンはまあいいんですよ。でも掛け合いみたいなところがあるじゃないですか、そこが本当に自然だったんです。
広屋:僕たちもオンライン上でお芝居を見せるという挑戦が初めてで。今って実際の劇場で無観客配信をしていたりして、でもそれって「リアルな舞台の方がとても素敵だし楽しいけど、今は仕方ないから配信しよう」という動きになってると思うんです。もちろんそれはそれで一つありつつ、僕たちが挑戦したいのはむしろ「オンラインで上演する演劇って、新しいし面白いジャンルだよね」っていうふうに持っていきたいんです。
オンライン上で観る観劇体験って、楽しいんですよね。チャットを設けることによって、数千人の方が一緒にチャットを打ち込みながら見てるので、その場で演劇の感想を言えたり。しかも自宅だから、お酒飲みながら、寝っ転がりながら観られちゃうこの気軽さというか。そういうところをすごく面白がってくださって、今2作品で合計12,000人の方に観ていただくことができています。
【劇団ノーミーツYouTube】
<アフターコロナ、ライブエンタメのこれから>
浜田:すごく面白いと思ったのが、広屋さんは専従でやってらっしゃったんですけど、スタッフのうちの半分ぐらいの人が会社員なんですよ。いわゆる副業というか、課外活動のような形でやってるんです。仕事が終わった後の夜6時からオンラインで稽古を始めて、終わるのが23時とか。みんな若いからできるんだなって思いました。
宇賀:若いんですか?皆さん。
広屋:劇団ノーミーツに今13人いるんですけど、平均年齢26歳とかですね。
浜田:いっぱいいろんな活動してるっていうのが、今っぽい。
広屋:もちろん僕たちも大前提、リアルでの演劇とか、映画を映画館で上映したりとかっていうリアル好きな人間が集まっているので、本当にいち早くリアル復帰してほしいなって思っています。
ただ一方で、やっぱりオンラインでの演劇を観る良さをすごく感じている。それはお客さんにとっての見やすさだったりとか、アクセスのしやすさ。場所が関係ないから、全国から見られるとか。
これからは、役者のお芝居を生で味わいたい方はリアルの舞台に行って、それをオンラインでも配信して気軽に見たい人にはそこから見てもらうみたいな「ダブルスタンダード」というか。どちらも準備されていく公演が増えてくるだろうなって思います。
今後の可能性として、僕たちの作品の中でもリアルを混ぜ込んでみるとか、逆に僕たちがリアルに行き始めるとか、そうやってオンラインとリアルをどんどん混ぜ合わせていくことで、結果的にアフターコロナでライブエンタメもっと面白くなってるじゃんっていうふうになったらいいなって思って、今一歩ずつ一歩ずつ動いてるっていう形です。
浜田:そして、ついに会社まで作っちゃったんですよ。
宇賀:そうなんですか?
浜田:会社は「ミーツ」っていう名前なの。え?会うの?みたいな(笑)
広屋:劇団ノーミーツがまだ一度も全員で会っていないので、「いつかみんなで会いたいよね」って思いを込めて、株式会社ミーツという会社を立ち上げさせていただきました。
浜田:会社ミーツでは、劇団ノーミーツの活動の他にどんなことを?
広屋:今までは劇団ノーミーツとして作品を作ることを軸にやってたんですけど、これからはオンライン演劇というものをより多くの方に見ていただいたり、挑戦してもらえる、そういう広げる動きっていうのもやりたいなと思っていて。
一つは、今すごく学生の方々の活動が制限されてるじゃないですか。それで劇団ノーミーツにも、「文化祭がなくなってしまったので、何かリモート演劇やってくれませんか?」みたいな声をいただくことがあったりして、僕たちなりに何かできることないかなっていうことはすごく悩んでいて。その一つとして、彼ら学生に対して、僕たちが培ってきたりリモート演劇のノウハウを公開して、一緒に青春を取り戻そうよ!みたいなことを言える企画を今準備しようとしていたりとか。
僕たちが今やってることって、オンライン上にある劇場作りみたいなことなんじゃないかなと思っていて。オンラインでの上演をしてきたノーミーツが、オンラインで劇場みたいなものを生み出せたらいいなって思ってるんですけど……これはまだまだ概要部分だったりするので、より深めていって何か発表できたらいいなと思っています。
宇賀:また何か会ったときは、ぜひ遊びに来てください!
浜田:ライブでその瞬間を共有するっていう楽しさは、リアルでもあるしオンラインでも。
宇賀:でもわざわざちゃんとお洋服着てどこかまで出かけていくっていう手間がないから、お家で飲みながらでいいんですもんね。観てみたいです、リモート演劇!
今夜のゲストは劇団ノーミーツ主催の広屋佑規さんでした。ありがとうございました。