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日本のアート市場は世界の3%!?現状を変えられるかもしれないNYアートサービスのビジネスモデル #テンカイズ

今、米・ニューヨークを中心に注目されている定額制のアート貸し出しサービス。手が出にくいアートの数々を、最初は気軽にレンタルできるこのサービスが若者を中心に広がりを見せています。
今回は、そんなアートのレンタルサービスCurina(キュリナ)の魅力に迫ります。


1. 初心者でも始めやすいアートサブスクサービス?

宇賀:今回もゲストとオンラインで繋がっています。
Curina創業者・代表の朝谷実生さんです。よろしくお願いします。

朝谷:よろしくお願いします。

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朝谷実生(あさたに・みお):幼少期をイギリスとアメリカで過ごし、東京大学法学部を卒業。コンサルティングファーム勤務を経て、コロンビア大学MBAを2019年に取得。ニューヨークで在学中に、かねてより趣味として楽しんでいた芸術鑑賞に時間を割くようになり、若手アーティストの経済的な苦悩やアートに興味のある若い人たちの声に触れることが増え、コロンビア大学やニューヨークのトップアートスクール卒業生たちと共に現代アートのレンタルリーシングサービスCurinaをニューヨークで起業。

宇賀:まずは、Curinaのサービスについて教えていただけますか?

朝谷:アートというと、どこから始めていいか分からない方が特に若い方だと多いと思います。初めてアートを買おうと思っている方向けに、定額制でアートをレンタルから始められるサービスを展開しています。
アートって、ギャラリーアートだと軽く数百万、数千万とかかかってしまうので、さすがに手が出しにくいですよね。定額制で始めて、気に入ったら購入してもらうというスタイルで、ハードルを下げてあげています。

宇賀:いろんなコースがあるんですか?

朝谷:3つの定額制プランを提供していて、それぞれ38ドル、88ドル、148ドル。日本円だと大体4000円、9000円、1万5000円ぐらいのプランです。作品の購入価格とサイズに応じて、どのプランに入るかを決めています。

宇賀:作品は選ぶことができるんですか?

朝谷:もちろんです。Curinaのサイトで選んでいただけます。
あとは、社内チームにインテリアデザイナーがいるので、自分の部屋の写真を送ってもらえば家具やインテリアに合わせてプロに作品を選んでもらうこともできます。

浜田:すごいですね。プロに自分の家に合う絵を選んでもらうサービス。

朝谷:そうしたインテリアの観点で作品を選んでほしいという方もいらっしゃれば、メッセージ性を重視される方もいらっしゃいます。その場合はアーティストのことを理解しないと難しいので、相談をさせていただくこともありますね。

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浜田:私達のようにユーザー側にとって、低価格でアートが楽しめるという魅力はもちろんありますが、アーティストの支援にもなりますよね。

朝谷:そうですね。
よく名前を聞くアーティストの方って、すでにギャラリーに所属されていたりするんです。私たちはその前の段階、これから芽が出てくるような若手のアーティスト達とたくさん契約をしています。
ニューヨークでこれから伸びてくるであろうアーティスト達と繋がりたい、レンタルを通じて彼らを支援したい、ファンになりたいと思われている方がユーザーでは多いです。

浜田:そうやって支援者、後援者みたいな気持ちにもなれますよね。

朝谷:そうした繋がりは絶対的にあると思っています。
だからこそアーティストの経歴や、どういう展示会に出たのか、どういう作品を作ってきているのかを念入りにチェックされる方も多いです。
作品をレンタル・購入して終わりではなくて、その後も同じアーティストから続けて作品を買っていたり、その人が出ている展示会に足を運んだり。ファンとしてアーティストを追っていくみたいな関係性があるので、私としても観察していて面白いなと思います。


2. メッセージ性に共感してアートを購入する「Henrys」

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宇賀:利用者にはどういう方が多いんですか?

朝谷: 30代前半〜40代中盤くらいの方が多いです。
アメリカだと”High earner not rich yet”と言って、「まだ資産はないけれども収入が高い」、これから経済的にもキャリア的にも成功してくるであろう人たちのことを「Henrys」と呼ぶんですが、まさにそういう方達が多いです。
職業的にはコンサルや金融やテック、GoogleやFacebookなどで勤めているようなキャリアアップを意識していて、社会的な動きにも鋭い目を向けている方。アートを買うことに関しても、消費者運動の流れとして購入される方も中にはいます。

浜田:その「消費者運動」というのは?

朝谷:アーティストは作品を作るときに抱いたメッセージがあります。
例えば、黒人のアーティストの方だと黒人としての人権を訴えるような作品を作っていたりとか、女性だと特に最近はフェミニズムの動きが多いのでボディエンパワーメント、「美しいとされている体って何だろう?」というのを探求するような作品を作っていたりとか。そうしたそれぞれのアーティストがテーマにしていることに対して、お客さんは共感すると、その作品を購入するということが多いです。
なので女性の方はフェミニズムをテーマにした作品を作っている女性アーティストから作品を買うことが多かったり、去年のBlack Lives Matter運動の時は黒人アーティストを応援しようという脈絡で黒人アーティストの作品を買われる方も結構いらっしゃいました。

浜田:朝谷さんはそういったアーティストの方とはどこで出会われるんですか?

朝谷:最初は私、ニューヨークにアーティストのコネがあったわけではなかったんです。
ニューヨークのブルックリンの辺りに、外から見ると普通のアパートだけど、中に入ってみると1階から5階まで全部アーティストスタジオになっているようなビルがあります。そういったところに入っていって、スタジオのドアを叩いてアーティストに直接会って、自分のビジネスカードを配って営業活動をしていました。

浜田:飛び込みで営業していたんですね!

朝谷:そうですね。
いろんなイベントに足を運んで、とにかく自分の顔を覚えてもらおうとビジネスカードを配って…といった感じで。自分の話すミッションやビジネスモデルに共感してもらえる人を多く集めていました
今ではアーティストが他のアーティストを紹介してくれたり、アーティストの方から問い合わせが来ることが多いです。

宇賀:今、契約しているアーティストさんはどのくらいいらっしゃるんですか?

朝谷:今は140〜150人ぐらいです。

浜田:そうすると多彩な作品から選べますね。

朝谷:画風も抽象画もあれば人物像だったり、風景画もあります。メッセージ性もいろんなものがありますね。


3. コロナがアーティストや鑑賞者に与えた影響とは

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浜田:ニューヨークは特にコロナで大きな被害があったと思いますが、コロナ禍でビジネスをするのは大変だったんではないでしょうか?

朝谷:去年の3月は全てがストップしていたので、アーティストに会うのは難しかったですし、お客さんに作品を届けるのも気がひけるくらいでした。
ただそんな中でも工夫しながら、Zoomでアーティストのスタジオを見せてもらってインタビューさせてもらったり、作品を見るのも全てオンラインでした。それでも去年の3月の時点から新規アーティストも100人くらい獲得できているので、順調に、効果的に勧められたんじゃないかと思っています。

宇賀:コロナがアートやアーティストに与えた影響ってあると思いますか?

朝谷:アーティストにインタビューしていてよく聞くのは、まず作品数が増えたということ。家の中にこもると時間がアーティストも増えるので、どんどん創作活動に集中できてすごく良かったっていうアーティストもいます。
一方で去年の3月、4月は暗い時期だったので、この世界がどう変わっていくのか分からない不安定な中、そうした面が作品に表れているアーティストもいました。それは私も一人の鑑賞者として面白いなと思ったり。
あとは散歩に出たり公園に行くアーティストが増えて、自然をテーマにした作品が増えるアーティストもいました。画風自体にも影響を与えるところもありましたね。

浜田:逆に借りる側、鑑賞する側にとってはどんな変化が見られましたか?

朝谷:まずコロナで作品を複数枚借りたいというお客さんが増えました。特にZoomの背景に部屋が映るので、その時に単純な白い壁じゃなくて、一つでも作品があると「スモールトーク」できると。
会議の時に単純に仕事の話だけじゃなくて、ちょっとしたスモールトークがないとチームメンバーとのコミュニケーションもドライになってしまうので、それが話のきっかけになって良いと借りられる方が増えました。

浜田:私もオンライン会議をするときに、わざわざ絵の前でズームしている方が多くて。そうすると素敵な絵だなと思って、「それ誰の絵ですか?」って聞いたりすることありました。

朝谷:そうですよね。
その時に聞かれた質問に答えられるように、アーティストについての情報をもっと教えてほしいという方もいれば、スクリプトを作ってほしいという方もいらっしゃいました。


4. 変わっていくアートの形

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宇賀:今はアメリカを拠点にされていますが、今後このサービスを日本で展開することは考えられていますか?

朝谷:今はニューヨークのアーティストだけを扱っているので、レンタルで彼らの作品を日本に届けるのは難しいです。
ただ、販売は日本でもしています!

宇賀:でも、日本でもレンタルサービスやってほしいですよね。

浜田:やっぱり買うとなるとハードルが高いから、レンタルを何回かやってみて、気に入ったものが買えるのはすごく良いですよね。ぜひ日本で始めてほしいです。

朝谷:日本って美術館の観客動員数は世界でもトップレベルで、美術館に足を運ぶ人の数でいうとすごく多いんです。ただ市場規模でいうとすごく小さくて、世界の3%とか。ちなみにアメリカは44%。
鑑賞をするのは好きだけども、鑑賞から購入につながらないのが日本の特徴で、そこにはアートを買うことに抵抗があるんだと思いますね。

宇賀:今後、アートをめぐるビジネスはどうなっていくと思われますか?

朝谷:まずアートの定義そのものが変わってきています。
例えば「アート」と言ったときに、単純にキャンバスに描かれている二面的な作品だけじゃなく、今だとデジタルのアートや、音声や、動画もあります。
それから所有の形も、実際に物を購入するだけじゃなくて、分割共有のモデルや、NFTの形で高値で売買されることもあります。
それと同時にアーティストの報酬の仕方も変わってきているので、それもすごく好ましいことだなと思います。
アートの捉えられ方がどんどん変わってきて、すごくワクワクする世界になってきているんじゃないでしょうか。

宇賀:では最後に、朝谷さんの今後の展開を教えてください。

朝谷:今年初めに資金調達を終えましたので、サービス展開する地域をどんどん広げていくと同時に、アーティストのコミュニティもさらに拡大させていき、より多くのお客さんにアートを楽しんでいただけるように頑張っていきたいと思っています!

宇賀:ぜひ、日本でもよろしくお願いします。
今回のゲストはCurina創業者・代表の朝谷実生さんでした!ありがとうございました。


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