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コロナで変わっていく飲食業界。話題の新橋「絶メシ食堂」とは?2020/09/02 #テンカイズ

東京・新橋に先月オープンした「絶メシ食堂」。時代の流れとともに絶滅してしまうかもしれない絶品グルメをメニューとして提供し、オープンするやいなや各メディアから取材が殺到しています。東京で絶メシを広め、全国各地に点在する絶メシの地元も盛り上げるとの新たなビジネスに注目します。

MCは宇賀なつみさん、プレゼンターはBusiness Insider Japan浜田敬子さん。
収録の様子は【番組公式YouTubeチャンネル】でご覧いただけます。

宇賀:今夜のゲストは東京・新橋で居酒屋「烏森百薬」、そしてその昼の部、「絶メシ食堂」を運営する株式会社ミナデイン社長の大久保伸隆さんです。今回も浜田さんが紹介して下さったんですね?

浜田:大久保さんとは長いお付き合いで。
もともと塚田農場って居酒屋さんを運営しているAPカンパニーの副社長でいらっしゃったんです。その時代からめちゃくちゃアイデアマンで、とにかくアルバイトがやめない人事をやってらっしゃって、取材も何回かさせていただいたんです。その会社を辞めて、新橋にお店を出されたんですね。その時に最初、夜は居酒屋をやってらっしゃったんですが、今回、昼間は地方にあるいろんな絶品なんだけれども、今にも廃れそうなレシピというのを紹介する食堂を開いたということで。

宇賀:では、大久保さんからそのご自身の会社、そして居酒屋、食堂について教えていただいてよろしいですか?

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大久保:ミナデインの大久保と申します。
「烏森百薬」という居酒屋は食のセレクトショップというコンセプトで、全国の美味しいお料理をお取り寄せしてお客様に出す居酒屋です。「絶メシ食堂」に関しては、絶メシという地域の絶滅寸前の絶品メシのレシピを教えていただいて、僕のお店で再現してお客様に提供し、売り上げの一部を絶メシ店、地域のお店に還元していくっていう仕組みの食堂をやっています。

宇賀:絶メシってちょっと前から聞くようになりましたよね?

浜田:元々あった言葉なんですか?

大久保:もともと群馬県高崎市の地域創生プロジェクトの一環で「絶滅寸前の絶品メシ」っていう言葉があって。飲食店の廃業問題に取り組んでるプロジェクトだったんですけど、その言葉をお借りしてやってます。

浜田:今回コロナで緊急事態宣言になって飲食店が休業せざるを得ないという中で、そういった飲食店を何とか救いたいということで、「絶メシ食堂」っていうアイデアを考えられたんですよね?

大久保:そうですね。僕らも4月は自粛していて、全店お店を休んでいた時に時間もすごくあったので、「自分たちに何かこれからコロナの間にできることはないかな」っていうことを考えていた時に、地域のお店に売上の一部を還元するっていうスキームはぼんやり頭に浮かんでいたんです。たまたま自粛中にAmazonプライムを観ていたら、『絶メシロード』っていうドラマを見つけて、どうせならこれは一緒にやった方がスピード感も出るし、お客様に還元できる額も上がっていくだろうということで、コラボレーションすることにした感じです。

浜田:前の居酒屋をオープンされた時もなるほどと思ったのが、例えば居酒屋とかレストランって自分のところで作るのは当たり前っていう常識があったでしょ。でも別にそこで作らなくても、お客さんにとってみれば美味しいものが手軽な価格で食べられればいいわけじゃないですか。
大久保さんたちが発明したやり方では、地方にある美味しいものを取り寄せて、ほとんど調理はしないんですね。包丁もほとんど使わないと。

宇賀:あっためるとか、解凍するとか。

浜田:それによって何が良かったかって言うと、飲食業をやるコストって人件費が非常に重いわけですよね。だけども人件費が圧縮できる。そのことによってお客様にはリーズナブルな価格で出せると。
飲食業界ってとても利幅が薄くて、3K職場ってよく言われがちで。長時間労働で営業時間を伸ばすことで利益を上げる構造の飲食業界自体を変えたいっていうのが、APカンパニー時代からあったんですよね。新しいビジネスモデルとして居酒屋を始められたんです。

大久保:バッチリ!完璧です!笑

宇賀:じゃあその居酒屋さんに行ったら、全国各地のお取り寄せが食べられてことですよね?

大久保:そうです。例えば日本一を2回取った唐揚げがあります、大分の。

宇賀:もう食べたい!

大久保:そういうものって僕が一から唐揚げを研究してお客様に提供するよりも、ちゃんとレシピをいただいたりとか、そもそも完成品を送っていただいて店舗で最後ラストワンマイルみたいな事をやってお客様に提供した方が満足度は絶対に上がるなと思ったんです。僕自身料理ができないから、料理人への尊敬とかもすごくあって。一から研究してもそういう人に勝てるお店は作れないと思った時に、セレクトショップってコンセプトを思いつきました。

宇賀:え〜面白い。

浜田:その地方の店にちゃんと売上の一部が還元されるから、東京と地方がつながる。

宇賀:食べてみて美味しいと思ったら、自分で個人的に頼むこともできるってことですよね。

大久保:そうですね。うちの店でお店の宣伝も兼ねているというか、アンテナショップ的な面もある。

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<絶メシ集め、老舗を相手にどう交渉する?>

宇賀:絶メシ、昼の部の方ですけど、今はどういうメニューがあるんですか?

大久保:今3品ありまして、群馬県高崎市の唐崎食堂さんの「白いオムライス」っていうホワイトソースのかかったオムライスと、同じく高崎市の松島軒さんの「黄色いカレー」っていう昭和の昔ながらのカレー。あとは千葉県木更津にある、とみ食堂さんの「ポークソテーライス」という三品を出しています。

宇賀:これはどうやって見つけてくるんですか?

大久保:ドラマ『絶メシロード』でリストはもう上がっていたので、そこから新橋のお客様に合うであろうものを僕がピックアップして……っていうプロセスなので、さほど選定には時間はかかってなくて。むしろレシピを教えていただく交渉に時間がかかりましたね。

浜田:最初すぐ理解してもらえました?

大久保:もう全くですね。

浜田:老舗だから、結構ご年配の方とかが経営していらっしゃる?

大久保:多いですし、やっぱり群馬県でずっと店舗だけに立っていた方だったので。

浜田:守ってきた味。それをそんな簡単に人に渡せるか!みたいな。

宇賀:秘伝のソースですもんね。

大久保:そりゃそうだって思いながら。

浜田:どうやって交渉したんですか?

大久保:ひたすら毎日行って説明をして。実際タイミングとしてはあちらの地域のお店もコロナで売り上げが下がっていた状況も重なって、それをもしかしたら救える一手になるかもしれないんでっていうことをずっと根強く伝えながら、レシピをもらう。

浜田:レシピを頂いて作るのは東京のお店で、それを再現して、売り上げの一部をレシピ代として還元すると。

大久保:そうです。うちのシェフに絶メシ店に修行に行ってもらって、お店でちゃんと再現するっていう。

浜田:ほぼ同じ味ができる?

大久保:同じ味ができる。最初はやっぱりレシピを数値化してないとかあるので、そこの数字を起こすところとかも結構大変なんですけど。

浜田:職人技でやってるもんね。

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<コロナ禍での飲食業界。これから生き残るお店とは?>

浜田:今のコロナの影響って飲食業界、外食業界にとってどのくらい深刻なものだったんですか?

大久保:大きいお店の居酒屋チェーンはやっぱりかなりしんどいと思いますし、あと個人店で提出できる資料がない、管理会計をちゃんとしてないお店は助成金をもらえないとか、多分どのお店も大変なんだと思うんですよね。
今うまくいってるお店っていうのは本当にごく一部なんで、6割ぐらい売上減少しているお店がほとんどなんじゃないかと思います。

浜田:当分コロナの影響って続くと思いますし、いわゆる会食とか大規模な飲み会は控えて下さいって時期は当分続きますよね。そうなってくると生き残れる飲食店、外食ビジネスってどういうものだと思います?

大久保:一つは人の繋がりだなと思っていて。例えばトップシェフの店で、予約がすぐ戻っている店と戻っていないお店。

浜田:結構、満員のお店は満員なんですよね。

大久保:それは何なのかなって思った時に、なんとなく店主が寡黙で、美味い料理をとにかく食べなさいと。でも一方でコミュニケーションもちゃんと取ってキャラが立っていてっていうセットになっているお店の方が、戻りがすごく早い気がしているんですよね。応援しなきゃっていう気持ちが働くんだと思うんですけど。
なので僕らがやろうとしていることっていうのは、スタッフとお客様の繋がりだと思うので、しかもそれをむやみにやたらに広げるわけではなく、深く深く。「圧倒的な1000人を作ろう」っていうビジョンでやっています。

浜田:一店につき1000人のファンを作ると。

大久保:月に1回来るお客様が1000人いれば、一人では来ないので、だいたい二人で来ると2000人はもういらっしゃるわけじゃないですか。そうすれば一店舗分の売り上げは担保できるので、そういった常連さんをたくさん作って行こうと。

浜田:大久保さんがよくおっしゃっているのは、継続できることが大事ということ。無理なくサービスとかビジネスが回る仕組みをすごく大事にしてますよね。

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<30歳で副社長、どう昇りつめたのか?>

浜田:そもそもAPカンパニーで30歳で副社長だったんですよね。なんでそんなに早く出世したんですか?

宇賀:普通に新卒で入られたんですか?

大久保:いえ、第二新卒で。もともとは不動産です。
でもタイミングは良かったです。上場前に入ったっていうタイミングは絶対味方していると思うんですけど、一店舗の店長をやっていた時に、自分がいなくなっても従業員のパフォーマンスが高かったりとか、お客様の満足度が高いっていうことなんですけど、「自分がいなくても、お店がどう回るか」っていうことを考え続けたんです。いろんな研修を作ったり、スタッフがサービスをやりやすくしたりっていう仕組みを作っていったものが横展開、うちのお店全部に広がって行って、それが会社全体の戦略になったんですよね。そうしたら自ずと僕が一番わかっているから、営業本部長になって。

浜田:副社長になって。仕組み作りが上手いですよね。

大久保:好きですね。そういうことを考えるのは。

浜田:なるほどと思ったのは、飲食って人の定着がすごく難しいじゃないですか。でも塚田農場はアルバイトがやめないっていうので有名だったんですよね。それどうやって作ったんですかって聞いた時に、「誰もがモチベーションを持って働くには、自分が決められるとか、自分に裁量があることがすごい大事」って、お客様が払う売上げの1割をアルバイト裁量で使えるようにするっていう仕組みを作られたんですね。
例えば4000円払いますと。400円分は、そのアルバイトが自由に戦略的に使えるんです。例えばお通しできたキャベツって食べない人多いじゃないですか。それを「ちょっといいですか」って言って下げて、一回別の料理に作り変えてくるとか。そうするとお客様は感動するし、食べようと思う。そうやって自分で決めて、どんなアルバイトでも考えさせるみたいな仕組みを作っていて、すごいなこの人と思ったんです。

宇賀:それが自分に入るんじゃなくて、そのお金を使って何かができるってことなんですね。やっぱり単純作業って、最初に覚えていくところは楽しいんですけど、慣れちゃうとね。

浜田:飲食ってマニュアルで全部人を管理してるわけですよ。チェーン店は特に。だけどマニュアルだけだと人はやる気にならないって言うので、それを考えたと。

大久保:完璧!笑

宇賀:もう広報みたいになってますけど!笑
では最後に大久保さんの今後の夢や目標を聞かせていただけますか?

大久保:まずこの「絶メシ」っていうものを広げて行って、できるだけ多くの地域の方々と関わっていきたいなと思っています。加えて飲食店だけではなく、これからきっと生活様式が変わって当然デリバリーやテイクアウトもみんな考えていると思うんですよね。そこでも一味違ったアイデアを出して戦っていきたい。
コロナで外出はできないけど外食したくないわけではないと思うので、そういった方がより楽しめるような足場固めというか、そういうものをしていきながら変わっていくもの、変わらないもの両方大事にしていきながら事業を展開していきたいなと思います。

宇賀:ではとりあえず行きますか。予約をさせていただきたいと思います。
今夜のゲストは東京新橋で居酒屋「烏森百薬」そして昼の部「絶メシ食堂」を運営する株式会社ミナデイン社長の大久保伸隆さんでした。ありがとうございました。

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