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これからの自動車の役割って?自動車産業のデータ革命に迫る 2020/08/05 #テンカイズ
公共交通機関の利用率がコロナウイルスの警戒で低下しています。
そこで、注目されているのが車での移動。
コロナの時代、安全な移動手段として自動車の役割はどのように変わるのか。また物流や移動は今後どう変化していくのかを探ります。
ゲストは株式会社スマートドライブ代表取締役CEOの北川烈さんです。
MCは宇賀なつみさん、プレゼンターはNewsPicks野村高文さん。
収録の様子は【番組公式YouTubeチャンネル】でご覧いただけます。
<データ収集で運転手の事故確率も分かる?!>
宇賀:株式会社スマートドライブは、どんな会社ですか?
北川:スマートドライブは、車・バイク・トラックなどの移動体にセンサーをつけ、情報を収集し解析する事業をやっています。
具体的に言うと、例えば法人の営業車両や配送車両がどのように動いたのか調べ、安全運転の度合いを分析。そこから事故を起こす確率や配送の効率を調べます。あとは我々の解析メニューと他のデータを組み合わせ、一緒に様々な会社と新規サービスも立ち上げています。
野村:情報収集のセンサーは全て自社開発ですか?
北川:全てではないです。
うちの製品では、運転操作を計測できるデバイスやドライブレコーダー作っています。他からだと、自動車メーカーと提携し直接、車の故障の情報、燃費の情報とかを扱っています。
野村:データから具体的にどういうことが分かるんですか?
北川:実は無限の可能性があるんです。
例えば、一人のドライバーの運転のデータを2週間とると、1年以内に事故を起こす確率が9割ぐらい当てることができます。
あとはエンジンをかけた瞬間に過去の行動履歴から、向かう先の予測立ての分析も。さらにそれを他のデータと組み合わせることで、マーケティングに応用することもできます。例えば「Ponta」というポイントカードをやっているロイヤリティマーケティングさんと提携し、最近どこで買い物し、次に何を買うのかを分析できます。
また、スマートシティ文脈で、交通渋滞や事故の予測立ても。
非常に可能性がたくさんある分野だと思っています。
野村:2週間の運転を追跡すると事故を起こす確率がわかるって怖いですね。
北川:どちらかと言うと事故を防ぐ意味です。
このドライバーの運転はちょっと危ないのでこう改善して下さいなど。
宇賀:それは具体的に何をつけて見ているんですか?
北川:我々で録っているのは、GPSと加速度です。
その方がどういうエリアを運転しているのかと急ブレーキとか急発進を見て、事故とどう相関があるかをAIで分析しています。
実際に保険会社と提携して、事故データを頂き本当に1日の運転を30万通ぐらいの軸に細かく分解をしているんです。
野村:このデータを事故の防止だけじゃなくて、今後どういったことに応用が可能ですか?
北川:我々が興味あるのは、公共交通の社会的な課題をデータによって解決したいということです。
一つ目は公共的な観点の利用。事故を減らし渋滞を回避することはもちろん、街づくりにも役立ちます。例えば、このエリアは危険運転が多いので、木を伐採して見通しを良くしましょうとか。
二つ目は、人々の皆さんの行動とか物の移動を効率化。
今、物量が増えている中、いかに効率化するかとかが課題です。
先ほどの商品購入マーケティングと組み合わせて、「実はこのエリアの近くにあなたがすごい興味がありそうなこういうものがありますよ」など、レコメンドして人々の行動を変えていく活用は、世の中のためになるサービスになると思っています。
野村: 車から直接レコメンドされてくるんですか?
北川: まさに、過去の購買データから道案内での促進、メンテナンスの提案もあります。
また、ある保険に入ると我々のデバイスが送られ、安全運転していると保険料が安くなる提携もあります。
あとは、我々自身で法人のお客様に配送の効率化サービスも出しています。
様々なデータが我々に集まって、全部解析している形です。
宇賀:その法人のお客様は具体的にどういうデータを欲しがるんですか?
北川:配送とか営業車両とかが多いので、例えばドライバーが今どこでどういう業務していて、サボってないかを気にされる方もいらっしゃいます。
また、会社として事故を減らすためであったり、天気と組み合わせて配送の効率を分析しています。
最近だと営業の情報と組み合わせて、こういうお客さんにはもっと訪問した方がいいけど行けてないよねとか。
本当にお客様によって移動の悩みってかなり幅広いと思っています。
<なぜ、データを使ったビジネスを始めたの?>
宇賀:そもそも北川さんはなぜこのビジネスを始めたのですか?
北川:私、実は大学院にいる時に起業しているんです。
元々大学院で移動体、車に限らず動くもののデータの分析を研究していました。でも私自身は研究者より、技術を世の中に広げていく方が自分にとって価値があることができると思ったんです。
そこで技術を使い社会的な課題解決できるビジネスを考えていた時、テスラとかGoogleで自動運転の車を作る知人から、今後、車が移動を大きく変えていくことをすごく実感として感じました。基盤となるようなデータが集まる物をビジネスとして、日本から世界に発信できたら意味があるんじゃないかなと思い、起業しました。
野村:モビリティってそれこそハードウェアを使ったビジネスじゃないですか。大企業との連携や、センサーを揃えなきゃいけないとか初期参入障壁、最初がすごい大変なんだろうと思っています。
そこはどういうふうにして乗り越えられたんですか?
北川:ビジネスの必要性を信じ込んでいましたね。
おっしゃる通り大企業と提携しないとビジネスができない、と周りからもよく言われました。当時、学生でしたので何もないし、アプリだけじゃなくてハードウェアも作る中でもう三重苦だと、よく言われました。
しかし、根拠のない自信と言うか、データプラットフォームは将来的にすごく必要になると思っていました。
多分自動車メーカーも近しいことをやってらっしゃると思いますが、
車買い換えるとデータが引き継がれないとかで、所属したプラットフォーム内でしか通用しない。
全部の横串にどういう車にも対応でき、保険会社にも適応できるデータプラットフォームが必要になるっていう確信があったので自信を持ってやってきましたね。
<これからの移動の進化とは>
野村: これからの移動の未来を伺いたいです。
コロナの時代になり、今までの公共交通機関で一気に大量に輸送することは減って、モビリティーの重要性も増しています。その辺ってどのようにお考えになっていますか?
北川:そこはすごくあると思います。
実際にお客様のデータから、今どういう世の中になっているかを分析したんです。やっぱり都心と地方で全然違っていて、都心はそもそも移動自体がかなり減っています。
それこそテレビ会議とかで全てを完結させているってところもありますし、
公共交通機関がかなり混むので出社せずに家にいる傾向がかなり強いですね。
ただ地方は逆に、短い距離を電車やバスで移動していたのが全部車に切り替わっているので、意外と地方は、車だと移動の総量が増えている状況ですね。
野村:今後、個人の移動はどうなるんですかね?
北川: 1つはやっぱり効率化ですよね。通勤通学を毎日当たり前のようにやっていましたけど、訪問、挨拶とかも実は誠実に対応すればテレビ会議でもいいと分かってきましたね。
ただやっぱり人に直接お会いしたいとか、どこか新しいとこに行き、何か新しいものを感じるのは、人間の根底にある欲求だと思っています。
データを活用するなり、新しい移動が生み出されてくるとすごく世の中にとってもいいんじゃないかなと思っています。
野村: 個人移動だと、4人乗り5人乗りの車が当たり前ですが、もっと小さい車の1人、2人乗りが広がるのかなと思います。土地が狭い東京にも、気軽に置いておけるような物は広がらないかなと思いますが、その辺でいかがですか?
北川:これは、本当にコロナの前から絶対来ると思っています。
ちょっと近くに行く時に乗るような速度も遅いモビリティ、そういったものが今後でていくでしょう。まさに配送とかも近くまでは大型のトラックで運んで、そこから小さい車が個別に行くとか。
毛細血管のような移動は今後増えてくるんじゃないかなと思っていますね。
野村:どれくらいでできるんですかね?
北川:本当10年以内に出てきても全くおかしくないんじゃないかな。技術的には、テスラさんがちょうど年内に完全自動運転出すっておっしゃられてるくらいほぼほぼ近しいところまで来ている。
単純に各国の法律や保険、保証での時間がかかるだけかなと思っているので、遠くない未来だと思っています。
野村:それこそ住む場所にも影響しますよね。なんなら自然が豊かな場所で多少駅に遠くても全然選択肢に入ったりしますよね。
<移動の進化を後押ししたい。国際化に向けて>
野村:今後マレーシアでプロジェクトをされようとしているんですよね?
それってどういうものなんですか?
北川:創業期からグローバルに使われるプラットフォームにしたいっていう目標がありました。12、3か国を仕事で周った時、東南アジアの方が日本よりも移動の課題が大きいと感じたんです。渋滞とか事故がすごく多いですし、国によってはぶつかっても特に何もないとかですね。
野村:結構道に人が倒れてたりしますよね。
北川:そういう国で我々の技術を使い社会課題を解決できるのは、すごくチャレンジのしがいありますね。
昨年末にマレーシアに進出をしましたが、やっていることは基本的には日本と一緒なんですけど、国の課題としてもスマートシティとか国全体の渋滞をどう減らすかなどのご相談をいただくことが多いので、
より公共交通というか社会課題に近いような取り組みもしていますね。
野村:確かに東南アジア諸国は本当にもう日常的に渋滞が起きていますよね。それがなくなるだけで相当生産性が上がるんだろうなっていうのは思います。
宇賀:他に北川さんの今後の目標や夢というのはありますか?
北川:我々のコーポレートビジョンは、「移動の進化を後押しする」です。
移動って今後、我々が仮にいなくても自動運転とか様々な技術により、どんどん進化していくと思うんです。
しかし、我々みたいなオープンプラットフォームがあることによって、そういう未来が少しでも早く実現できるとか、少しでもいい形で実現できることを念頭において事業をしているので、色んな所に使ってもらいたいですね。
さっきのマレーシアもそうですし、いろんなお客様に我々のデータを活用していただき、広げていくのが今後の目標です。
宇賀:ありがとうございました。今夜のゲストは株式会社スマートドライブ代表取締役CEOの北川烈さんでした。