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#26『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』ネタバレトーク

各ポッドキャストに『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』のレビューをアップしました。

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人類の夢を乗せたアポロ計画は、実はフェイクだった?!という宣伝に偽りあり。
これは真っ当など真ん中のハリウッド映画だ!
アメリカンドリームの景気の良さを詰め込んだ本作を、ネタバレ有りで語ります。

○Summary○

  • ど真ん中のハリウッド映画

  • スカーレットヨハンソンの初プロデュース映画なのに……

  • Appleの宣伝が良くないぞ

進行台本

収録に使った台本を掲載します。
自分用なので誤字脱字などはご愛敬。

いい意味で、普通
天下御免の映画バナシ

改めましてご機嫌いかがですか
このポッドキャストは
私カシマが、毎週新作映画を取り上げ
ざっくばらんに、忖度なしに語るプログラムです。

番組のフォロー、お忘れなく。

ということで本日の映画は「フライミートウザムーン」です

人類初の月面着陸を果たした一大プロジェクト「アポロ計画」
反戦機運高まる世の中で、月面着陸に関心を持ってもらうべく
広告のスペシャリストがNASAに送り込まれる

というお話ですね。

監督は『かぞくはじめました』『Love, サイモン 17歳の告白』のグレッグ・バーランティ
主演はスカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム
助演にウディ・ハレルソン、ジム・ラッシュ、アンナ・ガルシア
などなど

とまあ、これなんですが面白かったですね
景気のいい映画でした

しかしこれを観る前は、ちょっと不安だったんですね
予告編やポスターを見る限り、なんとなく
面白くなさそうだなと思ったんですよ

予告ではアポロ陰謀論が軸のようになったんですけども
アポロ陰謀論をモデルにしたサスペンス映画、ピーター・ハイアムズ監督の「カプリコン1」みたいなやつかと思っていたんですが
全然そうじゃなかったですね

堅物エンジニアと破天荒広告キャリアウーマンのお仕事映画でした

あくまでアポロのフェイク映像は物語上の試練の一つであって
陰謀論の是非を問うものではなかったですね

カプリコン1が作られた70年代では、アメリカという国に対する不信感がいまよりももっと強く
過去の栄光に対する懐疑心がリアルなものであったのに対して

現代ではアポロ陰謀論をまじめに唱えてる人は、まあヤバイ人ですし
純粋にエンターテインメントとして製作されたのが、興味深いですね

創作物は時代を映す鏡ですが
そんなことを思い返しました

まずこの映画は、マスタングの広告会議から始まります。
スカーレット・ヨハンソン演じるケリーが大きなおなかを抱えて、会議に乗り込むんですが
そこで彼女には「タイピストは雇ってない」とか「女には頼んでない」などという言葉が投げかけられます。
ここで彼女はそういうものを屁とも思わずにまくし立てます。
奥さんの心をつかまねば、男らしい車は売れません。
もう重役たちはタジタジなんですね。
しかもこのケリー、商談をまとめ上げ、帰りのエレベーターのなかで肉襦袢を外すんですよ。
妊婦だと思わせたんですね。

この時点で、彼女の仕事っぷりがよくわかるスマートな導入でした。

んでなんやかんやありまして。
国の上層部にやとわれてNASAの仕事を請け負います。

NASAへ向かう飛行機の中でケリーの秘書が
「国の仕事をやるんですか?ニクソンにやとわれるなんて死んでもごめんです」
と言い放つんですね。彼女は女性差別的な、保守的な政権を認めてませんが
ケリーはそれも意に介していない様子ですね。

金が貰えりゃなんでも売り込みますよっていうね
まったくどこの国も広告マンはおんなじですね。
僕はこういう主人公、とても魅力的だと思います。

規範とか、倫理とか、そういうものには目もくれず、ただ目的のために邁進する主人公
こういう人は周りにいたら結構迷惑ですが、映画内では輝きます。

でね、この映画、先ほど言及した2つのシーンからわかるように
当時の女性の立場、女性が働くということについて言及しているんですが
じゃあゴチゴチのフェミニズム映画、というわけでもないんですね
極めてアメリカ的な映画だとは思います。

もちろんフェミニズムの要素もあるんですが、
あくまで主軸は試練を乗り越えること、金を稼ぐこと、良心に従うこと
なんですね

描くものとしてはアメリカのマッチョイズムに近いなと思いました。
すなわち王道のハリウッド映画のスタイルなんですね

面白いことに、この映画、
スカーレット・ヨハンソンがプロデューサーに入ってるんですよ。
初のプロデュース映画が、これなんですけども
スカーレット・ヨハンソンは女性の権利運動にも関心がありますし、
中絶推進団体を支援したりしています。

普通ね、ハリウッドで俳優がプロデュースする映画は
社会的、政治的メッセージが強いものになる傾向にあります。
リベラル系の俳優なら、男女の格差、貧困、人種差別などですね
保守系の俳優なら、国防、移民、戦争参加への是非などですね

ショーン・ペンやティム・ロビンスとかそうですし
ブラット・ピットなんかもそうですね
近年だとマーゴット・ロビーが『バービー』を制作しましたが
あれなんかめちゃくちゃ社会的な映画でしたね。僕大好きな映画ですけども

そういうものとは、意識的に距離を置いているような気すらするんですね

つまりみんなで力を合わせて、試練を乗り越えて、悪い奴をやっつけて
自分のトラウマも乗り越えて、最後は美男美女がキスという
ど真ん中のハリウッド映画をやってきたことに驚いたとともに
スカーレット・ヨハンソンに好感を持ちました。

ドエンタメでも、社会的なテーマは差し込めるのに
それはほんの味付け程度にしてあるんですね

女性の活躍、よりも
一大プロジェクトの遂行をメインにしていますし、
文字通りみんなで頑張ります。

まあそれがほんとの男女同権だとは思うんですが
旧態依然としたNASAへのカウンターとして
スカーレット・ヨハンソン大暴れ、なんてのもできるし、それでも十分面白いと思います。

あくまで話の運びとしては、いわゆるハリウッド映画のど真ん中
ちょっと古臭さすら感じるんですよね

でも、頭空っぽにして見れました
これはスカーレット・ヨハンソンからの「映画って考えさせるだけじゃないんだ」
っていうメッセージのような気がしますね。
なんにも考えなくて、「あー面白かった」で終わる映画も
いい映画なんだと

創作の多様性が確保されているようで
大変喜ばしいことだと思いました。

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