思い出 in my head

再結成と無関係に無性に聴きたくなって、NUMBER GIRLを聴いている。

あの攻撃的な声を聴くと、NUMBER GIRLを紹介してくれた友人のことを思い出す。そのときぼくは19歳で、やる気の欠片もない浪人生だった。

高校生のころに太宰治教に入信していたぼくは、どこかで完全にぽっかり穴が空いた。眠れない日々にひたすら小説を読んでは人生の真実への怒りに打ち震えていたのだが、完全に虚無になってしまった。その虚無がなんだったのかわからない。人生の真実がなんだったかもさっぱりわからない。ある暑い夏の日に扇風機をつけっぱなしで引きこもっていた一日、扇風機のボタンをオフにしたらぽかんとなった。扇風機のブンブン回る音には確かにイライラしたのだったけれども。

友人はぼくと同じく浪人していた。彼は音楽に疎いぼくにNUMBER GIRLを教えてくれた。向井秀徳の声はなによりも耳に刺さった。彼はぼくに向井秀徳をこう説明した。「明治大学の文学部にでもいそうな風貌だけどほんとにすごいんだ」。いまはずいぶんカッコよくなってしまった。

向井秀徳の声は耳に刺さった。NUMBER GIRLはその時のぼくのように空っぽで、その空虚を埋めるために扇風機を回しているような音だった。ぼくは治りかけの瘡蓋を掻いているような気持ちになった。

友人は詩を書いていて、そのノートをぼくに見せてきた。その詩を読んでぼくの心の向きは変わった。ぼくはいままでブンガクにかぶれていただけで、表現するということがどういうことなのかまるでわかっていなかったことがわかった。連絡が途絶えて久しいけれど、彼は元気だろうか。

自分を傷つけることの快楽について書いていたのはドストエフスキーだったか。そんなことを思い出しながらNUMBER GIRLを聴いている。

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