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LCA(ライフサイクルアセスメント)セミナー イベントレポート

2024年4月17日に、石川県産業創出支援機構(ISICO)東京大学先端科学技術研究センターによるLCA(ライフサイクルアセスメント)セミナーに参加しました。このセミナーでは、東京大学の醍醐市朗教授がLCAの基本概念や重要性、具体的な手法について説明されました。
本記事では、セミナーの内容を基に、LCAの基本からビジネスへの活用までを分かりやすく解説します。


LCAとは何か?

LCA(ライフサイクルアセスメント)とは、製品やサービスが環境に与える影響を「ゆりかごから墓場まで」分析する手法です。具体的には、資源採取から製品の製造、使用、廃棄までの全過程を通じて、エネルギー消費や排出物の環境負荷を評価します。
例えば、自動車を例に考えてみましょう。自動車の製造には、鉄やガラス、ゴムなどの原材料が必要です。これらの原材料は、採掘・精製・加工といった工程を経て、自動車部品として組み立てられます。その後、完成した自動車は、私たち消費者に届けられ、使用されます。そして、その役割を終えると、廃棄・リサイクルされます。LCAでは、これらの全ての段階における環境負荷をCO2排出量などを用いて数値化します

LCAの歴史と背景

LCAは1987年の国際会議で初めて提唱され、1992年の地球サミットで採択された「アジェンダ21」がその出発点です。その後、気候変動や生物多様性の喪失などの環境問題に対応するためにLCAの重要性が増してきました。金融のグリーン化が進む中で、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の増加により、企業が環境影響の報告と開示を行うことが義務化され、LCAの結果が企業評価において重要な指標となっています。

なぜLCAが重要なのか?

  • 製品やサービスの環境負荷を把握することで、環境負荷の少ない製品設計や製造方法を検討することができます。

  • 環境に配慮した製品開発は、企業イメージの向上やブランド価値の向上に繋がり、消費者や投資家からの支持を得やすくなります。

  • 近年、企業は投資機関や取引先から、環境負荷に関する情報開示を求められるケースが増えてきています。LCAは、これらのステークホルダーに対して、環境への取り組みを具体的に示すための有効なツールとなります。

LCAの具体的な手法

LCAは以下のステップで行われます。

  1. 目的および調査範囲の設定: どのような製品やサービスの、どの範囲の環境負荷を評価するのかを明確にします。

  2. インベントリ分析: 対象となる製品やサービスのライフサイクルにおける、資源消費量や排出量などのデータを収集・整理します。

  3. 影響評価:収集したデータに基づいて、環境への影響を評価します。

目的によって評価対象、計測方法、結果も異なることもあります。たとえば、製品の持続可能性や環境負荷の削減を目指す場合と、供給チェーン全体の環境負荷を測定する場合とでは異なります。
LCAを実施するには、専門的な知識やツールが必要となる場合もあります。専門機関やコンサルタントに相談してみるのも良いでしょう。

LCAの応用とメリット

  • 製品開発:LCAを活用して製品設計や使用方法の改善点が見つかり、効率的な資源利用が可能になります。

  • エネルギー効率:エネルギーや素材のペイバックタイムが分かり、効率的な資源利用が可能になります。

  • 持続可能な経営:企業全体の環境負荷を見える化し、持続可能なビジネスモデルの構築を支援します。

環境影響の観点

欧米ではCO2以外の環境影響にも関心が高まりつつあり、LCAの結果に注目が集まっています。たとえば、生物多様性の喪失や反応性窒素の排出が、気候変動よりも重大な環境問題とされることもあります。

実践的なLCA

LCAの結果は、主に投資機関やBtoBの取引において活用されます。数字だけが独り歩きしないように配慮する必要もありますが、正確なデータと透明性のある報告が重要です。特に機関投資家は、企業の環境負荷を評価する際にLCAの結果を重視し、その企業の持続可能性を判断する傾向が高まっています。

まとめ

LCAは環境負荷を総合的に評価する強力なツールです。起業や新規事業創出を目指す際にはLCAの視点を取り入れることで、持続可能なビジネスモデルを構築し、将来世代にとってより良い社会を実現する一助となります。特に持続可能な投資を促進するために、LCAは機関投資家にとって重要な評価指標となっている点を認識しておくことが重要です。

LCAについてさらに詳しく知りたい方は、日本LCA学会や各社が公開しているリソースを活用してください。

参考リンク

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