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【TENJIKU吉野座談会③】旅人×吉野町住人座談会-旅人と考える吉野町の魅力とこれから-


吉野町に住む住人の皆さんに、吉野町の魅力や活動内容をインタビューする座談会の第3回が実施されました。第三回目の座談会では、町民ゲストに尾仁山地区にお住いの澤井克典(さわい かつのり)さんと千股地区にお住いの室垣内美智代(むろがいと みちよ)さんをお招きして12月9日(月)にデッキの下で行いました。今回の座談会では、地元住民がこれまでの活動や思い出を語り合いながら、旅人と共にこれから取り組んでいきたいことについて意見を交換しました。和やかで笑いに満ちた雰囲気の中、さまざまな視点での交流が行われました。

第3回のゲストは、尾仁山地区にお住いの澤井克典さん(手前右)と千股地区にお住いの室垣内美智代さん(手前左)。

菊地:では、最初に自己紹介をお願いします。

柗原:柗原安輝子です。大阪在住で、現在はお花屋さんで働いています。以前は警察官として働いていて、重量挙げ・リフティングの選手としても全日本大会に出場しました。吉野町では以前に旅人の活動の一環としてオンラインでの筋トレイベントを開催しました。

菊地:柗原さんは吉野に関わってもらって2年半ぐらいたちますね。

柗原:そうですね。毎月吉野町に来ていた時期もあって、いつの間にか公式サポーターになっていました笑

菊地:公式サポーターについて、町民ゲストのお二人にも簡単に説明させていただきますね。通常は私(吉野町関係案内人)が旅人さんの地域でのお手伝い内容の調整・お手伝い先に一緒に伺って現地でアテンドをしていますが、私が対応できない時には吉野町の公式サポーターになっている4人に私の代わりに旅人の案内をしてもらっています。4人とも吉野町に頻繁に滞在していて、地域の方との繋がりもある程度構築できているみなさんなので、安心して代行をお任せしています。では、中川さんも自己紹介をお願いします。

中川:柗原さんと同様に、時折菊地さんの代行で旅人さんの吉野町での案内役に入らせていただいていいます。吉野町には、TENJIKUという多拠点滞在サービスのシステムを利用して2021年の10月にはじめて滞在しました。吉野町に通い始めて、今年で3年目に入りました。普段は京都に住んでいて、文化系の仕事をさせていただいています。今日はよろしくお願いします。 

室垣内:室垣内美智代と申します。主婦をしながら、「おはなしらんどカンブリア」を主として、「日本語教室」「もぐはぐ便」など地域での3つの活動のお手伝いに参加をしています。

菊地:おはなしらんどカンブリアは、何年くらい活動されているんですか?

室垣内:25年くらいですね。「おはなしらんどカンブリア」では、赤ちゃんから大人まで喜んでいただきたい、ともに楽しい時間を過ごしたいという思いのもとに、絵本の読み聞かせや手作りの紙芝居や人形劇、手話の歌などのプログラムを「お話の配達」としてお届けしています。私も、自分の出来る限りでのお手伝いをさせていただいています。

「おはなしらんどカンブリア」での人形劇の様子。
吉野に伝わる昔話や、吉野の古典物をモチーフにした人形劇も開催されている。
写真提供:磯崎典央さん

澤井:活動の中心メンバーは何人くらいいるんですか?

室垣内:活動の中心で動いているのは4人くらいですね。子供の成長とともに働きに出るようになるメンバーも増えますし、家族や家庭の状況も時間の経過とともに変わるので、現在は依頼をいただいた日程にあわせてメンバーにイベントカレンダーにリアクションで参加表示をしてもらっています。

菊地:そうなんですね。では、澤井さんも自己紹介をお願いします。

澤井:澤井克典です。祖父から引き継いだ酒屋を営んでいて、私で3代目です。父が亡くなってから、18歳で家業を継ぎました。現在は並行して配達の仕事もしています。上市商店会青年部・消防団での活動も18歳から参加しています。

吉野町民から見た「TENJIKU吉野」とは

澤井:柗原さんは何回か、地域のお手伝いに来てくれている姿をで見たことがあります。

菊地:そうですね。柗原さんは普段空間装飾のお仕事もされているので、以前に町民さんの結婚式の飾り付けをお願いしたことがあります。その時に、澤井さんともお会いしていたんですね。

澤井:お顔は見覚えがありましたが、どこでお会いしたんだっけなと思いまして。

菊地:そうですよね。TENJIKUに滞在している旅人さんをお手伝い先で見たことはあるけれど、どうして地域のお手伝いに参加しているのか・どんな背景で吉野に滞在しているのかを町民さん・旅人さんの間でお話する機会を、現在はまだ設けられていないことが多いです。だから、なんとなく旅人さんが吉野町に出入りしていることは知っているけれど詳しい活動内容を知らない方に、旅人さんのことやTENJIKUのことを知ってもらえたらいいなという思いがあって今回の座談会のような場を設けています。

町民さんの結婚式のために、会場の装飾をする柗原さん。
バルーンや花材を使った装飾もお手のもの。


室垣内:
第1回目の旅人新聞が町の広報誌に入っていたのを拝見しました。今日自分がゲスト側で参加していることが、なんだか不思議です笑

菊地:巡り合わせですね。

中川:そうですよね。座談会ゲストの方には、毎回数珠つなぎ形式で素敵な町民ゲストをご紹介いただいています。

澤井:私も、上市青年部に所属している方からバトンをいただきました。

菊地:ありがとうございます。ご紹介いただくゲストの方は今までにTENJIKUに関わったことのない方でも大丈夫です。今回のような町民の方・吉野町に来る旅人さんがお互いに吉野について考えていることを話せる機会を、双方の負担にならない形で続けていきたいと考えています。座談会では「こんなことを旅人と一緒にしたい、してほしい」という意見も町民ゲストの方からお聞きしながら、何ができるかを一緒に考えていきたいと思っています。

中川:地域のお手伝い先で町民の方とお話することはありますが、町民さん自身に関するお話やお手伝いをしているイベントや行事の背景・歴史など、普段はお話を深掘りしてお聞きする時間がないので、座談会では町民ゲストの方の町内での活動や住んでいる方が感じている吉野町の魅力などをお聞きしています。ちなみに、TENJIKU吉野とは何をしている施設なのかご存知だったでしょうか。

澤井:TENJIKUという名前は認識していましたが、詳しい活動内容までは知らなかったですね。だから、今回菊池さんから座談会参加のオファーをいただいて、TENJIKUの活動を知るいい機会だと思い参加しました。私はあまりTENJIKUの仕組みを理解できていませんが、旅人=TENJIKUに滞在している方という認識であっていますか?

菊地:TENJIKUの仕組みを使って滞在している方を総称して旅人と呼んでいます。旅人といっても、実際に旅暮らしをしている方に限定はせず、例えば柗原さんのように仕事のお休みのタイミングで吉野町にリフレッシュのために来てくれているケースもあります。旅人さんの滞在理由や滞在スタイルもさまざまです。

澤井:そうなんですね。TENJIKU吉野で行われている取り組みは、吉野町の行政としての事業ですか?

菊地:そうですね。吉野町役場がSAGOJOという民間の会社に委託をしていて、「観光以上・移住未満」の関係人口と呼ばれる人々を増やす活動を行っています。足繁く吉野町に来てくれていて、ディープに地域と関わってくれる人たちを増やすことを目的にしています。

室垣内:そうなんですね。お話を聞いていて、TENJIKUの活動の詳細を知らない町民も多いのではないかと感じましたが、いかがでしょうか?

菊地:そうですね。私たちとしても、どうしたらもっと吉野町に住んでいる皆さんにこの活動を認知していただけるかを日々考えています。今回の座談会もTENJIKUのPRの一環として開催されていて、TENJIKUの活動報告として「旅人新聞」を全戸配布しています。

2024年の8月から発行している「旅人新聞」 。
今回の座談会の内容は第3回分として、2025年3月に配布予定。

室垣内:折り込みの旅人新聞、拝見しました。高齢者用に字を大きくしてくれていましたね。

菊地:ありがとうございます。座談会でのお話はWEB記事(note)でも発信していますが、旅人新聞で座談会の内容を短く要約しています。旅人新聞には、TENJIKUの活動の町内での周知を確認するために町民さん向けのアンケートのQRコードも載せています。ただし、第一回・第二回のアンケートの結果を拝見して、ORだと読み込む手間もかかってしまうので、なかなか町民さんの声を回収しずらいことも感じていますね。

澤井:たしかに、よほど興味がないとQRを読み込んでまで回答しないかもしれませんね。

菊地:そうですよね。こういう検証やPR方法なども、私や役場の職員だけではなく現在はサポーター4名と一緒に検討を重ねています。月1回〜2ヶ月に1回サポーターの皆さんにも時間をもらって、どうしたらTENJIKU吉野をもっと多くの方に活用してもらえるか・吉野町の課題解決にもつながるように効果を最大化できるか話し合いながら一緒に進めています。次年度どういうスタイルで活動していくかについても、現在思案中ですね。

澤井:そうなんですね。活動を認知してもらうためには、もう1年くらいこの座談会も続けてみると良さそうですね。町民ゲストを招く形式での開催も、今回でまだ3回目ですし。

菊地:そうですね。町民ゲストの方のご負担にならないように、今後も時期や開催時間なども調整しながら実施していきたいと思います。

吉野町でのこれまでの活動/室垣内さん

菊地:町民ゲストのお二人には、これまで吉野町でどんな活動をしてきたかについてもお伺いしたいと思っています。室垣内さんから、現在までの振り返りとしてお話をいただけますか?

室垣内:そうですね、私は元々は吉野町の出身ではなく、結婚するタイミングで吉野町に来ました。33歳くらいからは1歳と3歳の2人の子供を抱えながらの介護生活が始まって、3・4年の間はずっとバタバタしていました。介護が終わって3番目のこどもがうまれてから、だんだんこどもと対することすら難しいほど心が不安定になってしまった時期があり、このままではいけないと思って第1回のヘルパーの養成講座を社会復帰のために受けました。そして、3歳になったこどもと一緒にボランティアのような形で保健センターでお年寄りのお手伝いをはじめました。そのタイミングで夫がリストラにあって私が介護施設に勤めることになり、そこから本当にいろいろなことがあり、母親の最後の看取りのためにしばらく2人暮らしをしていた時期に「自分は本当はどんなふうに生きていきたいのか」と考えるようになりました。
元々吉野町出身ではないこともあり、以前は自分の生活圏のことしか知りませんでしたが、地域でのさまざまな活動を通して地域の方と関わるようになり、「私は吉野町のことを何にも知らないんだな」と感じる場面もあって、現在は改めて吉野町のことを勉強しています。

吉野町でアクティブに活動する室垣内さんも、元々は県外からの移住組。
「吉野町について、まだまだ勉強したいことがたくさんあります」と楽しそうに話す室垣内さん。


菊地:すごいバイタリティですね。

室垣内:地域で活動する中で、吉野町全体が高齢者ばかりの限界集落のようになってきていることも肌で感じており、自分の家のまわりのことすらもなかなかできない状態や、人がいても動けないという状況も見たり聞いたりします。地域で何百年も行われてきた歴史ある行事や慣習も吉野にはたくさんありますが、こうした伝統行事も今は継続していくことすら大変な状況ですね。地域の運動会や盆踊りなど、すでになくなってしまった行事もたくさんあります。地域の大切な記録として残していきたいという思いもあるので、このような人手不足解消につながるようなサポートをしてくれる存在がいると嬉しいですね。

菊地:そういう課題に旅人が関われる可能性はありそうでしょうか。また、地域の外から人を受け入れる体制については、どのように感じていますか。

室垣内:そうですね、受け入れ体制については、整備は必要かもしれません。外から来る方を双方にとって良い形で受け入れるためにはどうすれば良いか、考える必要がありますね。草刈りや公園のトイレなどの公共施設の整備・行事にはじまり、休みなく地域の整備活動に出ている方もいるので、地域の方が疲弊してしまわないようにそろそろ外部の人にも助けてもらわないと続けていけないだろうなとも感じていました。だから、外から来てくれる方を受け入れて、一緒に取り組めるような仕組みができたら嬉しいですね。

菊地:そうですよね。地域の人手不足の問題も、旅人の地域への関心・地域から旅人への期待をうまくマッチングして調整ができると良いなと思います。

吉野町でのこれまでの活動/澤井さん

菊地:澤井さんは、結構いろいろな地域活性化活動にいつも巻き込まれていますよね笑

澤井:そうですね。生まれたときから上市地区に住んでいることもあって、近所の人からも、町内会のことやら何やらで、色々とお声かけいただきますね。上市地区に長く住んできて、地域に思いのある方が分担して地域の役割を担ってきた姿を見てきたので、私としてはもっといろいろな方に地域の役職も引き受けていって欲しいという思いはありますね。

菊地:最近は地域の中で役職がなかなか決まらない、といったこともあると聞いています。

澤井:そうですね。もし興味を持ってくれる旅人さんがいたら、地域での役割の一つを旅人さんにお手伝いとして担っていただけると嬉しいですね。例えば、私の住んでいる地区には水分神社(すいぶんじんじゃ)という神社があり、昔から上市地区に住んでいる方が交代で神社の守をしていますが、その守を体験してもらうのも面白いのではと思います。秋祭りをまだ開催していたころは、お神輿を担いでその神社まで行って帰ってくるという風習がありました。1日仕事で神輿を担いで、途中で神社に寄ってご飯を食べて、そんな道中も楽しかったですね。神社をきれいにすることもずっと続いてきた伝統的な慣習の一つなので、やっぱりそういうものは地域にのこしていきたいです。

中川:朝のお手伝いだったらその後観光にも出かけられるので、旅人さん的にもありがたいですね。

澤井:そうですね。

菊地:澤井さんは消防団や青年部など地域での活動を続けてくる中で、一番印象的だったことはどんなことですか?

澤井:それぞれの活動に思い入れはありますが、一番大きなイベントは大河ドラマで太平記が取り上げられた時期に県主催のイベントに商店会青年部として参画した「時代行列」でしょうか。当時私は20歳くらいでした。

室垣内:歴史上に登場する人物に扮して、美しい衣装をまとってねり歩くんですよね。

菊地:そうなんですね。そのころは地域での活動もとても盛り上がっていて、とても忙しかったと聞いています。

奈良県主催の時代行列。

澤井:そうですね。私が青年部に入ったころは毎年2月に行われる「初市」や、吉野町の歴史や文化を学ぶことができるウォーキングイベント「歴史ウォーク」、昭和30年代をテーマにしたイベント「レトロタウン上市」など、たくさんイベントがありました。レトロタウンでは、22- 23年前に昭和レトロブームが起こり、上市の古い街並みを生かして町内各所に古い冷蔵庫やレコード、車や衣装などを展示していましたが、1-2ヶ月前から準備に追われて毎日ヘロヘロで、3回目くらい間で続けたものの「続けるのは難しい」というお話になって現在はなくなりました。しかし、レトロカーの展示企画はとても反響がよく、他府県からのたくさんのレトロカーが吉野町に集まっていました。そのため、単独企画としてのこして15年くらい続いていましたね。

30年代のレコードが並ぶ、なつメロ博物館。
写真提供:磯崎典央さん

澤井:当時はメンバーの数もいて体力もあったので、イベントもたくさん開催できました。しかし、地域活性化に関連する取り組みは多くが普段の仕事以外の時間をつくって労力をかけて行うものなので、後が続かない面はありますね。

菊地:青年部のみなさんは、いつも地域のイベントにもたくさん出てくださっている印象がありますよね。澤井さんとしては、やっぱりこうした地域のイベントに参加することは楽しかったでしょうか。

澤井:楽しかったですね。レトロタウン上市ではとてもユニークな車も見ることができましたし、大変だったけれども今考えるといい思い出です。また、京都フィルハーモニーを吉野町に呼んでトワイライトコンサートも開催しました。反響がよく、5回ほど実施したと記憶しています。他にも、商店会青年部の主催で映画祭も行いました。

菊地:そういう地域でのイベントは、誰の発案でどんな流れではじまるのでしょうか。

澤井:私が青年部に入った時は、青年部の部長さんがとてもアクティブな方だったことが大きいですね。例えば、初市の日に青年部のメンバーが七福神に扮装して町を練り歩くというイベントも時代行列をヒントにして発案されたものでした。

菊池:そうなんですね。今まで吉野町内で行われてきた行事やイベントの発足背景や歴史を知っている澤井さんも、貴重な存在ですね。

澤井:以前に、町の方から「イベント屋さんですか」と尋ねられたこともありましたね笑 当時はまだ吉野町内に暮らす商売人の皆さんが元気だったので、実現できたことかもしれません。

柗原:私は同じ地域に長く暮らすことが今までなかったので、自分の住んでいる町を盛り上げていこうと思った経験がなく、そういうお話を聞けるのはとても新鮮ですね。

菊地:もう一回やってみたいイベントはありますか。

澤井:旅人さんがもし参加してくれるのであれば、初市の日の七福神の扮装イベントは開催したいですね。

菊地:なるほど。扮装して練り歩くだけですか?

澤井:事前に手づくりで「商売繁盛」と書かれた1000-2000個くらいのお札をつくっておいて、イベント当日は七福神に扮装して各家庭にその札を配り、代わりに町民の方からご祝儀をもらいます。いただいたご祝儀は、扮装のための衣装代などに当てていました。

上市商店会青年部による、初市での七福神巡行。

菊地:そうなんですね。町民の方にプロデュースをしていただいて、旅人を募集することはできそうですね。

澤井:そうですね。旅人さんを募集していただく際は、私の方で段取りをしますね。

旅人が感じる吉野町の魅力

菊地:
柗原さんはこれまでにも、吉野山で行われるお祭りの一つ「かえる飛び」にお神輿の担ぎ手として参加したり、同じく吉野山で行われるお祭り「鬼日の祭典」でも節分前夜の鬼役を買って出てくれたりと、吉野町で行われる伝統行事の担い手として活躍してくれています。2025年の節分も、吉野山の皆さんからすでに柗原さん宛にオファーをいただいています。女性でお神輿を担いだのも、彼女が初ですね。

澤井:頼もしいですね。上市地区でも昔はお神輿を出して担いでいたので、久しぶりに来年はお神輿を出して担ごうかというお話がちょうど上市笑転会の中で出ているんですよ。

かえる飛びでお神輿を担ぐ柗原さん。重量挙げの選手としての経歴も持つ柗原さんは、女性初の担ぎ手として活躍。

柗原:昨年参加させていただいた時はかえる飛びのお神輿を担ぐ方も今年の半分くらいの人数でしたが、今年はお神輿を担ぐ人数も増えていました。
担ぎ慣れている人が多いと、お神輿を担ぐリズムも安定している感じがしました。担ぐ回数を重ねていくと、そういうことも感じ取れるようになって面白いですね。

澤井:柗原さんは、吉野町のどんなところに魅力を感じて、何回も足を運んでくれているのでしょうか。

柗原:吉野町の魅力はたくさんありますが、その中でも関わってくれる方々があたたかい町だと感じていることが一番大きな魅力です。旅人として来て吉野町のお手伝いをして出会うと町の皆さんとの距離も近く、皆さんにも毎回快く受け入れていただき、観光としての滞在では知り得なかった町や人の魅力・歴史や文化を知ることができてとても嬉しいです。
また、吉野に来てとても驚いたことは、少し都心からは離れた山の中にある町なのに、常に新しいことに率先して取り組まれている方が多い印象をもったことです。吉野町に来るまでは、「桜の名所」としての町のお名前しか知りませんでしたが、滞在を重ねるたびに「この町で、こんなに面白くで素敵な取り組みが行われているなんて」という気持ちになります。伝統行事についても、ニュースなどに取り上げられるタイミングで目にしたことがあったとしても、実際に参加する側に回ってみるとその面白さは全く別物で、都心のテーマパークにいくよりずっと楽しいですね。

「吉野に来るのはテーマパークに遊びに行くより楽しい」と話す柗原さん。
普段住んでいる場所では体験できないことを体験できることも、TENJKU滞在の醍醐味。

菊地:吉野町の方は、フットワークが軽く新しいことに前向きな方が多い印象は私も持っています。

澤井:そうですね。何事も、まずやってみよう、という精神を持っている人は多いと思います。自分たちの力で、楽しく地域を盛り上げて元気にしていこうという気概は昔からありますね。

菊地:スキルが高い方も多いですよね。

柗原:持っているスキルを生かせる機会やイベントがたくさんあることも、良い環境ですよね。

菊地:中川さんは、聞いておきたいことはありますか?

中川:私は事前にいただいた室垣内さんの活動資料に記載されていた、子育て世帯を対象とした宅食サービス「モグハグ便」の仕組みについてお伺いしたいです。以前にTENJIKUに滞在した際、旅人のお手伝いとして地域の農家さんの野菜の選別作業をお手伝いしたことがあり、そこでモグハグ便について伺ったことがありました。農家さんは無償でお野菜を提供しているとお聞きしたので、どのような仕組みで成り立っているのかということがとても気になっていました。

室垣内:モグハグ便は、傷があったり商品としては形が整っていないお野菜など通常の販路にはのせられない野菜をいただいて、選別して各家庭に配布をしています。私はいただいた野菜を選別して、同じ量になるように揃える
第一段階の仕分けを担当しています。その他にも、1軒1軒に配布できるようにかごに入れる方、配送してくれる方がいます。
もらった野菜は商品としては売れませんが、食べるには問題のない品質のものなので、せっかくいただいた野菜を家庭でもおいしく食べてもらえるように食べ方を迷われそうな野菜にはレシピを添えることもあります。

菊地:もぐはぐ便は子育て世代に無料で食材を配ってくれるサービスですが、良い商品もたくさん配布されている印象がありますよね。

松田:私の家にも子供がいるのでモグハグ便を利用していますが、とても助かっています。お米も毎月届きますし、なかなかスーパーで見ないような面白い食材が届くこともあります。

農家さんからいただいた野菜を選別する様子。
各家庭に配布される前に、人の手で丁寧に洗浄・仕分けが行われる。


室垣内:食べるものは暮らしの基本で、一番大事ですからね。

中川:そうなんですね。私は何年間かTENJIKUへの滞在を通して吉野町の皆さんと触れ合う中で、町民の皆さんのそういう湧き上がるような地域へのモチベーションはどこから生まれてくるんだろうかと不思議に思うことが何度かありました。私自身は比較的都心で育ったこともありあまり近所の方や地域の方とのつながりを意識したことがなく、自分の住んでいる地域をよくしたいとか、地域の困っている人の力になりたいとか、そうした感情を地元に住んでいる間は思ったことがありませんでした。しかし、吉野町を関わるようになってから、困っている人がいるからとか、自分たちの住んでいる町をもっと元気にしようとか、皆さんの地元に対する活力があふれていることを感じていて、皆さんいつからそう思うようになったのか知りたいなと思いました。

室垣内:私たちにとって吉野町は「終の住処」だからかもしれませんね。私たちくらいの年齢になってくると、いずれ次の世代にバトンタッチをして行かなけばならないという意識が芽生えます。自分の持っている家や山などもできるだけあとの世代の負担にならないように整理しなければと思いますし、地域に伝承されている行事や文化・イベントなども地域にのこしていきたいという思いがあります。できることはできるときにしかできないので、関わらせていただけることに感謝の気持ちを持ちながら、できる限り長くお手伝いをさせていただきたいと思っています。

菊地:そういう思いを持ち続けていることが、とても素敵だなと思います。

室垣内:もちろん、私自身がこうした活動を楽しんでいることも続けられる理由です。「日本語教室」のお手伝いについても、海外から日本に来た方々が吉野町民になってくれて私たちが年齢的に仕事としてはできない部分を担ってくれていますから、移住してきてくれた方々が「日本にきてよかった」「吉野町に住んでよかった」と思ってくれるように少しでも力になれたらと思っています。

中川:そういうあたたかさを持っている方がたくさんいらっしゃることが、旅人の目には吉野町の魅力として映る点でもあり、とても尊いことだなと思います。

柗原:吉野町の皆さんは、考え方がとても柔軟ですよね。地域では今まで行ってきたことを変えたくないという声や、新しく来た方があまり歓迎されない例もあるとお聞きすることもありますが、吉野町では地域を魅力的で住みやすい場所にしていくためにさまざまな挑戦をされている方の姿をよく目にします。新しいことを恐れて何もしない地域もあると思いますが、失敗することやうまくいかないことを恐れずにチャレンジしていく姿勢がとても素敵で、そんな町民さんの姿を見ているといつもワクワクします。私も大阪に住んでいる時に町内会は存在していましたが、吉野のような前向きであたたかい雰囲気はあまり感じられなかったですね。

菊地:とりあえずやってみよう、の精神ですね。吉野町の地域活性化を目的に活動している皆さんは、たしかにいつも楽しそうにしていますね。

澤井:そうですね。イベントがたくさん開催されていた時代はそういう活動を面倒だと思うこともあったけれど、長く住んでいると愛着が湧くのか、私の中にも現在はしっかり地元への愛がありますね。地域に対してこれからどんな形で恩返しをしていこうかとか、地域で災害や火事があったら消防団としてすぐ駆けつけようとか、時間が経った今だからこそ思うことかもしれません。

室垣内:面倒くさいという気持ちを乗り越えたんですね笑

澤井:そうですね。特に私の住んでいる上市地区にいる方は、地元愛が強いのを感じますね。

松田:上市地区に住んでいる方は、イベントの開催に関してこだわりや思いがあって、いい意味でうるさいですよね笑 開催する前と開催した後を大切にしていて、イベントが終わったと思ったら当日の打ち上げでは早速「来年どうしていくか」を相談しはじめる光景をよく目にします。

菊地:たしかに。そういう地域で行われる楽しいことに、旅人をたくさん巻き込んであげてください。

澤井:そうですね。こうして一緒に話をするだけでも、今後も色々取り組んで行きたいという気持ちになりますね。

柗原:今回座談会に初参加させてもらって、こうして場を設けていただき地域の歴史や今までの活動などをじっくりお聞きできて嬉しかったです。お話する中で、私たち旅人のことも知っていただけたと思うので、とてもありがたい機会でした。


今回の座談会では、吉野町の地域活性化のために活躍しているお二人から、活動背景にある思いや今後の旅人との関わり方について伺うことができました。
TENJIKUでは今後も吉野町に住む皆さんにインタビューを行い、旅人と一緒に吉野町への理解を深めながら吉野町内・町外へ吉野町の魅力を発信していきたいと思います。2025年の座談会もぜひご期待ください。

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