中野サンプラザの点群データを見比べる①:チャペル編
中野サンプラザを文化財として記録に残すため、3Dの点群計測が行われ、そのデータがLAS形式の点群データとして公開されました。中野区主導で行われ、東京都のオープンデータカタログからダウンロードできます。
5 種類の点群計測機器が使われて、それぞれ別々のLASファイルとして公開されています。なかなか、同じ現場を複数の機器で計測した点群を比べられるのは貴重なので、それぞれの特色などを見て行きたいと思います。
なお、私が計測に関わった訳ではなく、それぞれの機器がベストプラクティスで取得されたかは分かり兼ねるので、単純に公開されている状態での点群の比較になります。
使用された機器
使用された計測機器は以下の通りです。
Leica Geosystems: CityMapper-2 (航空レーザー/屋外のみ)
FARO: Focus S350(地上レーザスキャナ)
GeoSLAM: ZEB-HORIZON(ハンドヘルドレーザスキャナ)
Emesent: Hovermap ST-X(ハンドヘルドレーザスキャナ)
Pix4D: PIX4Dcatch (iPhone によるスキャン及びSFM解析/iPhone 12 PRO Maxを使用)
CityMapper-2はセスナ機に搭載して使用する機器なので、点群は外観のみです。
その他の機器は、屋内での計測に使用されています。Hovermapは屋外のデータも取得されており、建物の周りをぐるりと一周したようです。
Pix4Dは屋外での計測も試みたようですが、生データ(写真データ)だけ公開されており、点群はアップロードされていませんでした。
チャペル内部
やはり、点群の見た目に関してはレーザースキャナ(FARO Focus S350)で撮った点群が圧倒的にキレイだと思いました。とにかく、点密度が高く、細かいディテールまで再現しており、点群のノイズも少ないです。レーザースキャナに難点があるとすると、足元の点群は撮れないので、設置した場所の真下は点群が抜けてしまいます(例えば、神父が立つであろう場所に丸い穴が空いています)。また、設置した場所から死角になるものは点群化されません。
ハンディータイプのレーザースキャナーは、スキャンしながら歩き回れるので、設置して使うスキャナーより死角が少ないです。2つの機種(ZEB-HorizonとHovermap)を比較すると、ZEBで撮ったほうが点群がパラついていて、レーザーがスキャンした軌跡が目立ちます。その点、Hovermapのほうが全体的にパラついた点が少なく、落ち着いています。色に関しては、露光の問題なのか、Hovermapのほうが暗めでマットな印象を受けました。着色の方法はZEBのほうが上手いのか、Hovermapで撮った点群は、ところどころ黒色になっていたりします。カーテンに黒い箇所が目立ちますが、点が抜けている訳ではなく、黒い点として存在しています。
PIX4Dcatchは、情報のインプットがiPhoneのカメラなので、撮影時の視野角が狭く、他の3種よりも使用条件が厳しいため、撮影されていない箇所は点群が抜けています。そもそも、フォトグラメトリーなので原理が他の機器とは異なります。iPhoneカメラの写真から点群を作っているため、色味は一番キレイという印象を受けました。
チャペル前のホール
概ね、チャペル内部と同様な印象です。
いくつか補足すると:
FAROは、カーペットの床の模様が視認できるほどの高点密度。厄介なこととしては、設置した足元が円形に点群が抜けてしまうことや、球体型のターゲットを設置しないといけないこと。
ZEBとHovermapは、持って歩き回れるのでFAROのような足元の点群の抜けや、ターゲットの設置は発生しない。Hovermapは着色に難があるのか、点は存在しても黒くなることがあり、引いて見るとあたかも点群が抜けているように見える箇所がある。
PIX4Dcatchは視野角が狭いので、床、天井、壁面をすべて均等にスキャンするのは結構難しい。ただ、写真から点群を作るので、カーペットの模様が点群から視認できる鮮明さは持っている。
壁面
FAROの点群は、露光の条件が悪かったのか、白飛び気味の点群になってしまっています。ピアノや壁面の模様がキレイに再現できているのはPix4Dでしょうか。
断面
さすが、レーザースキャナーの点の厚さ(ばらつき)は薄いです。点群の厚さは基本的には5mmを下回っていて、薄い場所では2-3mmです。複数の設置位置で撮った点群の接合によっては、多少パラつく場所もありましたが、それでもmm台の厚さです。
ハンドヘルドレーザーの2種に関しては、Hovermapのほうが点群の厚みが薄く、目分量ですがHovermapが3cmに対してZEBは4cmというところでしょうか。
Pix4Dの点群は、厚さは4cm程度のように見えます。ただ、上手にスキャンしないと複数のスキャンパスで段差が発生するリスクがあり、うまく接合できていない箇所もありました。
まとめ
機器は計測目的によって適材適所なので、どれが一番良いとは一概には言えませんが、それぞれの計測機器の特色が見られて面白いデータセットだと思いました。
補足ですが、PIX4DcatchはiPhoneで簡単にスキャンするのがむしろ得意なので、室内のデジタルツインを作成するのには向いてないと思います。見取り図を作るために部屋を一周するに留めるか、レーザースキャナーの補備計測の方が本来の用途に合ってます。
今回は室内の計測データに注目しましたが、引き続き②では外観のデータも見て行きたいと思います。
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