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iPhoneでMMSのような計測をする試み:①
突然ですが、MMSって知ってますか?
Mobile Mapping System の略で、日本語では移動体計測や車載写真レーザ測量システムと言ったりします。
基本的に数千万円クラス(かそれ以上??)の機材なので恐らくあまり馴染みのある機材ではないと思います。
今回は、iPhoneを使ってMMSのようなデータを撮ってみる試みです。
MMSとは
その名の通りで、車に搭載できる測量機器です。「Googleのストリートビューを撮る車は知ってるよ!」という方は多いと思いますが、搭載するコンセプトとしては似ています。性能的には圧倒的に優れていて、LiDARとカメラによって色付き点群が作れるほか、位置精度は高性能なGNSS RTK とIMUで取っています。車が走れる範囲であれば、道路だろうが、高速道路だろうが、点群計測ができるという訳です。鉄道会社では、保線用の車両に搭載して、夜な夜な点検などに使われています(真っ暗なので、点群に色は付きませんが)。
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例えば Virtual Shizuokaのプラットフォームでは、静岡県内で走った範囲の点群が無料で公開されています。興味のある方はこちら↓
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PIX4DcatchでMMSっぽい計測をしてみる
MMSを一台持っていれば、かなり楽しい点群計測ライフが送れますが、残念ながら数千万は持ち合わせていないので、iPhoneでどこまで計測できるか試してみます。
使用するのはPIX4Dcatch のアプリで、位置精度はRTKで取ります。今回は、MMSを再現する試みなので、「移動体」感を出すために自転車に乗り、片手でiPhoneを持って走りました。注意:公道では行わないでください。捕まっても責任は取りません!
自転車に乗るとは言っても、足で地面を蹴って、惰性で前に進む程度の速度です。
計測する範囲
計測範囲は、総延長1.1kmの道路にて行いました。左右の車線をそれぞれ走り、部分的の重複する区間もあるので総走行距離は2.6kmぐらいです。自転車にまたがっていたとはいえ、歩行速度よりそこまで早いとは言えないので、撮影時間は合計40分ぐらいだったと思います。
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PIX4Dcatchで撮影したときは、4つのコースに分割しました。Y字の分岐の手前から始めて、右コースと左コースはそれぞれ分割し、尚且つ往路と復路も分割したプロジェクトにしています。
撮影枚数が1000を超えてくると、アプリの動作がもったりしてくるので、大体400m-500m進んだら、データを保存した方が良いです。アプリがクラッシュしたときのショックの予防にもなります。真夏の暑い日は要注意だったりします。
参考程度に、それぞれのコースの撮影枚数は:
・左コース:片道約 900m (往復1.8km) 往復合計で3295枚
・右コース:片道約 400m(往復 0.8km) 往復合計で2074枚
となりました。
PIX4Dmaticを使って点群生成を行いますが、右コースと左コースは、別々に処理しました。左右のコース、それぞれの往復分は一つのプロジェクトにまとめて点群化を行いましたが、さらに左右コースも融合させると処理時間があまりにも長くなります。左右で分けて、2つの点群ファイルを結合する方が早いと判断しました。
計測の結果
結果をフライスルーの動画にしてみました。個人的には躍動感があって好きです。1.1km を25秒で駆け抜けているので、時速160km相当です。(Youtubeの限界で、画質がそこまでキレイじゃないかもしれません。。。)
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実際の業務であれば、iPhoneだけ持ってひたすら何キロも歩くのは現実的ではありませんが、数100m延長の範囲のマッピングであれば、道路縁石や道路白線、マンホールなどの位置抽出・図化には十分使えると思います。あるいは、MMSでは撮れない歩道内の詳細を補備計測として行う選択肢も考えられます。
まとめ
今回は、MMSのように道路に沿った計測をモバイルで取得する試みでした。次の②では、写真解析のコツなどをご紹介したいと思います。