《馬跳び我、爆ぜる》Vol.18
競馬仲間3人で令和STARTと同時に禁煙をSTARTした。
始めて2日目の朝、つまり今朝、洗顔クリームで歯を磨いてしまった。ぶっふぉん。
ルーティンが狂った上のニコチン切れで脳みそが少しバグった様だ。目がしぱしぱして痰が絡み喉が渇き、何故か脇の下が痛く耳鳴りが止まない、寝起きだけは良いのだが。
その仲間達とBettしたのは「片目」or「どちらかの耳たぶ」or「40万」。
どれもキツイが禁煙はもっと辛い。ツラい。面い。嫌い。
だがトライ。
40万は持ってないし耳たぶは絶対痛そう、目ん玉はまだ使えるのでライバル2人の脱落を待つ。
なんとか違うことを考えたり、やったりして気を紛らわすが時間がなかなか過ぎない。今日は94時間くらいありました?
身体にも異変が起きてきて頭や肺の辺りがこそばゆい。特に左側の後頭部がめっさこそばゆい。あと、腹回りや足の裏が火照っている。
きっとニコちゃん達はそこら辺を活動拠点にしていたのだらう。身体は正直だ。
車を運転中、信号待ちの時に世界が揺れている様に感じたり時間が小間切れになって一瞬一瞬がぬけ落ちている感じがして、これやばい禁断症状なのかと、賭けた仲間に言うと「吸ってもいいよ」と言いながらバタフライナイフをチラつかせるので我慢する。
とりあえず今の生きる希望は競馬でどデカい馬券を獲った時だけ、葉巻OK。となっているのでそれが依り代。シガリロをバッグに忍ばせておくだけの事は許される。
だがまだ水曜日、なかなか来ない週末。
武者震いなのか、禁断症状なのかカラダの震えが止まらない。耳鳴りも止まらない。
時々、人目につかない所へ駆け込みシガリロを取り出し鼻の下でくりくりまわしながらスライドし深く嗅ぐ。スプスプとスニっフ音が路地裏に響く。
傍から見たら変な人だと思われるかも痴れないが禁断症状に苦しむ只の禁煙者だ。本人が言うので間違い無い。
すれ違う人から煙草の匂いがすると振り向いて10分くらい、からからと飴玉を鳴らしながら睨み続ける。そしてもうその人が居ない事に気が付く。
嗚呼、煙草吸いたい。
こんな時には禁煙する事によるメリットを考えるべし、と何かで読んだので考えてみる。
だがデメリットばかり浮かんで来る。
第一に、ストレスが溜まる。そしてそのストレスが溜まっている事に対してのストレスが溜まり、ストレスとストレスの相乗効果で更にストレスが産まれ、日本の借金並にストレスが膨れ上がる。
ストレスの10×52乘の恒河沙くらいになってしまいそのストレスによるストレスたるや想像もつかない。
更に、太る。というのもある。
それもやばい。
あまり肥え過ぎてはこの夏ぴちぴちギャル達とビーチでサンバが踊れない。
そんな事になったらグッドラックサマーになってしまう。
大変だ。
リスクがデカすぎる。が今煙草を吸ってしまっては目玉or耳たぶor40万をロストしてしまう。
どっちに転んでもロストだ。どないしよう。
ふとサマーとロストで思い出したが昔の海外ドラマLOSTのあのラストは無いわいな。
戻る。兎に角これは今週末、絶対にどデカい馬券を当てて葉巻をすぱ〜くりんぐしないと取り返しのつかない事になる。
ストレスに押しつぶされながらもどんどんデカくなる。まるでブラックホール。魔人ブウやんか。
絶対に負けられない戦いが来たか。
先日、とある馬券師の方と知り合いになり色々な事を教わった。
まず感じた事は、わかり切った事を出来るか出来ないか。
難しい事など無い。
ギャンブルをする人は皆分かっている事。
常に冷静でいる事。
無駄打ちをしない。
自信の無い時は「やらない」。
だが場だけは必ずチェックしておく。
自信がある時は決め打ちでぶっ込む。
そして勝ったら勝ち逃げする。
常に心得ておくべきは勝つ為にギャンブルはやる物だという事。
もちろん当たり前の事であるが、分かっていてもなかなか出来ない。「当たり前」の事を出来る人が「勝てる人」なのだ。
なので競馬場のゴール版の前で腕を組み、たとえ大穴が連発していても微動打にせず不動心でもって時を待つ。風林火山。
「そんな時に熱っい珈琲と煙草があると落ち着くよな〜」と思わず呟いたら、カチャカチャとバタフライナイフがバタつく音が…………。
to be continued🏇
次回予告「梅雨の珈琲とシガリロ」