夜桜さんちの大作戦154「母さんの腕」感想


前回感想


「二刃を救う切り札ありー」
     「歪んだ根のもとへー」



 七悪が時間を稼いでいる間に解析を終えた四怨は、二刃に反撃を宣言する。
 攻撃を再開した七悪を圧倒する二刃だが、ホログラムを用いた残像に翻弄され始める。相手の上手を感じた二刃は、奥の手を使いあたり一帯を一掃する手段にでた。
 ホログラムも本体も、すべてを吹き飛ばす必殺の一撃を放った二刃だが、しかし、背後に潜んでいた四怨に抱きすくめられ動きを封じられてしまう。
 そしてその束縛は、幼いころ二刃を抱きしめた母の腕と同じものだった。


 辛三が父との思い出だったからですかね、対照的に二刃は母との思い出話でしたね。
 抱きすくめられる二刃。幼いながらにしっかり者だった二刃には、自分を子ども扱いしてくれる母親の存在は描かれている以上に大事だったんじゃないかなあって、感じました。
 それを思い出させてくれた四怨って本当にいい妹ですよね。
 また、四怨は四怨でようやく姉を抱きしめられる存在、「守られるもの」から脱却が叶いましたね。その力になったのが、前回の「白骨島」編で得た「感情も合理のうち」という意識なんですが、その能力の習得のしかたが今回の戦いの中で、また寓話的だったなと。
 なにが寓話的かというと、幾つもありますがまず一番はっきりと明示されているなと思ったのは、圧倒的有利な強者側の「家族を大事にして、家族であることに執着している存在」が、不利な弱者側の「家族意外と交流を持つことで成長した存在」に負けたということですね。(強者弱者というのはあくまで本人たちの肉体的な部分を指しています。今回が肉弾戦だったので。)
 夜桜って、年長になればなるほど鎖国意識が高くて、「夜桜家」のことは「夜桜家」でなんとかするって意識が高いし、「家族」に対する執着が強いんですよね。それが、厳しさや優しさにつながるけど、結局「過剰な愛情」であることに変わりは無くて、その「愛情」からくる「許し」に四怨は苦しんでいたわけですが。

 そもそも自分よりキャリアの長い人間や、経験を積んだ人間がいて、頼ったり、導いてもらったりできるけど、夜桜は「組織」である前に「家族」で、やっぱりその辺り甘々じゃないですか(四怨を学校行かせて無い辺りでもしやとは思ってました)。
 しかも四怨なんかは顕著に「自分より秀でた能力、経験」をもった人物がいないから、頼る相手はいないし、ミスしても、四怨よりできる人間がいないから「しょうがない」という結論に至ってしまう。

夜桜さん作戦144「金級「G」」感想から

 こうした身内ゆえの「許し」を嫌がった四怨は外とのつながりが強いんですよね。信頼関係の結び方なら家族で一番といっても過言ではないのではないでしょうか。
 その四怨は、家族以外の他人「ケンジ」と「草助」の手助けもあって、解析能力を高めることに成功してます。
 強くなって家族に対等に扱ってほしいって思いが原動力であることはG様との話でも見えますね。
 一方、二刃は「稽古をしようか」って発言からもわかるとおり、四怨と七悪は「自分より弱い存在」だと認知して、(知ってか知らずか)「強者マウント」とってるんですよね。二刃にとっての脅威は、日々恐怖している「力の通じない相手」なので、二人は自分が「守る」側の存在で、相手にもならない。と暗に示している。まあその驕りが油断を生むんですが。
 でも、その「強者」感は恐怖を隠す虚勢にも見えて私的には好感度上がるんですが、それはひとまず脇に置いておきます。
 結果として、二刃は弱者である四怨と七悪の連携に敗北します。
 しかも、母親という最も弱いはずの「常人」をトレースした拘束によって、抵抗すらできない完全敗北です。
 これも非常に寓話的だなと、「強者」が「弱者」を庇護しようとすることで「弱者」は「弱者」を嫌がり、結果「強者」を倒してしまっているんですよ。しかも「弱者」の技で。
 二刃のやっていることは、結果として全部裏目に出て、四怨は自ら戦場に立つことを選んでしまっているっていうのもあります。あの時四怨が指示した場所に七悪が完璧に二刃を誘導できていなかったら、四怨は二刃の大技に巻き込まれて、無事じゃすまなかった。そういう「危険」に、二刃は家族を挑ませてしまっている。挑ませたくないと思うあまりに…、非常に皮肉ですね。



 母の腕に包まれることを思い出した二刃は、抵抗もできず受け入れ、涙します。(二刃の涙はいつも美しいなと思ってしまうのは私だけ???? )
 これは、ちょっと言いたいことがあって、二刃って幼いころと違って足でも合気ができるようになってるんですよ。
 でも、それをしないのは、四怨を受け入れることを二刃が選んだからかなって、自分の弱さを受け入れられたのかなって思ったんですけどどう思いますか。
 大体二刃が自分の弱点を残していたことがそもそも、母との思い出に固執してる証左じゃないかと思うんですよ、その辺りはまたおいおい別の機会でまとめようと思います。



 さて、遅くなりましたが今回の二刃戦。MVPが誰かって言ったら圧倒的に「七悪」ですよ。
 七悪は頑張った。四怨のホログラムに二刃が惑わされたのって、二刃の実力の高さを考えたら、そこに「気配」や「存在感」があったからだと思うんですよ。
 それを四怨からの指示を受けているといながら、部屋全域に広げた細胞を操って戦うとかもう本当に末っ子は頑張った!すごい!えらい!君が一番だよ七悪!
 
結果四怨が捕まえたっていっても君がいたからできたことだよ!七悪控えめだから、やられるばっかで役に立たなかったっとか思わないでくれ、それだけが心配だ…。
 七悪は本当に出番が少ないから出番欲しいですね。戦い方もかっこいいし、また戦ってもらいたい。


 辛三回もそうだったんですけど、今回の奪還編、本当に夜桜一家の矛盾や歪みに焦点当てて戦闘組と非戦闘組のわだかまりをほぐしていて、構成力の化け物かなって震えています。
 凶一郎編もそうだったんですけど、夜桜一家は家族愛がありすぎて若干歪で、しかも母を失ったことで余計にがんじがらめになっちゃっていたんですよね。そのわだかまりは「そういうもの」って受け入れるべきか、と判断しあぐねていたんですが、待ってれば夜桜って書いてくれるんですよね。ありがとうございます。

 次週からついに凶一郎の戦闘ですね。
 ふと百についていて考えていて、私基本百擁護派なんですけど、やっぱ殺そうって思ったので、来週はそれについて書こうかな。


 今回は百合ちゃん練習絵です。


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