読書感想文『韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩 (講談社現代新書) 』
本書もオーディブルで走りながら聞いたのですが面白かったです。
日本以上に深刻な韓国の現状の一部、特に教育産業の肥大化が垣間見れました。日本でも韓国の大学受験の熾烈さはよく報道されている、英語のリスニングの際は飛行機の離着陸も禁止になったり、遅れそうな受験生をバイクで送ってくれたりとかそんな感じの映像は良く日本のお茶の間でも報道される。それは映像的に分かりやすい一部を切り抜いただけで現実はもっと過酷な制度であることを本書は示している。
受験と言えば我々医クラの皆様におかれましては腕に身に覚えのある方も多く、センター試験の点数は後生大事に記憶されておられ、医局の雑談中、オペで閉創中などあらゆる場面で聞かれるし言ってますよね。どちらと言えば我々医クラにとって受験は甲子園を目指して汗をかいた経験と同じで結構ポジティブな評価だと思います。
ただ韓国の受験は本書を読む限り、日本よりマジキチでcrazyです。上位大学いわゆるSKY(ソウル大学校・高麗大学校・延世大学校)等に入れるかどうかでかなり人生が決まる側面が日本以上に強そうです。そうすると能力ガチャでほとんど勉強をしなくても勉強ができる子供以外は重課金コースとなる→少子化が進むという、日本、韓国、中国のお約束なパターンです。日本の出生率はまだましで、出生率は韓国では1を大きくきってるみたいですね。
韓国の出生率が0.72で、8年連続過去最低を更新-若者の意識を的確に把握し有効な対策の実施を- |ニッセイ基礎研究所 (nli-research.co.jp)
当然人口を維持するためには2以上の出生率が必要であるので、人口が維持できなくなるんですね。
どれぐらい重課金するかみたいな話は本書をお読みいただくとして2月の勝者もびっくりです。
さすがにお上も行き過ぎた受験産業への課金が少子化を加速させることを知っており政策を変えたりもしていますが(22時以降の学習塾の禁止とか)、受験産業はそれに対しての対策をする。完全にイタチごっこです。そしてそのイタチごっこに素早く対応するのはむしろ富裕層で全く実行性が伴っていないみたいです。民主主義国家である韓国はどこかの国ほどは強権的に塾など教育産業を規制もできませんしね。
韓国のつらさは大学受験を突破しても、競争は続くことなんですね。いわゆる一流企業+公務員に入る為には大学の成績+ボランティア活動歴などの野外活動歴や企業でのインターンシップなど多面的な要素が要求されますし、大学受験の改革で、こういった多面的要素が大学受験にも要求されるんですね。受験の古兵の医クラの皆さんならご存じかと思いますが、こういった全人格的(笑)な選抜程、親の資金力や親の社会的地位に影響を受けます。能力ガチャの勝者は高卒の両親からでも旧帝医に合格できたりする日本のペーパーテストの方がある意味、平等かもしれまんね(何が平等かと言う議論は頭の悪い私には分かりませんが)。この辺になるとサンデル教授あたりに登場してもらいたい議論ですね『実力も運のうち 能力主義は正義か』
受験となると医クラの最底辺の私すら少し熱くなってしまい長くなりましたが面白い本ですので当直のお供に読んでくださいね。
日本も財政破綻して韓国のようにIMFに箸の上げ下ろしまでいわれるようになると容易にこんな未来が待ってそうですね。