AV新法ができるまで
このnoteは、あくまでもボクが情報収集をする中で信用できるかと思われる情報から組上げた「仮説」です。本文を読み、エビデンスのある個所、誰の発言に基づいているのか、などにご注意いただきお読みください。
6/24 追記
経緯の概略を表形式にしました。「フェーズ」は本文の目次だと思ってください。関係者を「行政・立法サイド」「事業者・監督団体」「被害者の会」に分けて並べました。その際の動きは「行動」に記載しています。
また、確認できた事実、新たな疑念についても記述が変わっています。
以前に読んでいただいた方も、改めて「まとめ」についてはお読みいただけるようにお願いします。
経緯の概略
参考情報を見つけたので、こちらもできるだけ反映していきます。
菜花望見さん、すごいです。
フェーズ1
被害者支援団体の成人年齢の改正に伴う高校生のAV出演に反対する決起集会から、自民党PTが立ち上がるまで
この「被害者支援団体」は「ぱっぷす」
これを受けて、2月からAV出演関連での質問主意書を提示していた塩村議員が岸田総理へこの問題を提起。
行政側・関係省庁がAV人権倫理機構とぱっぷすらとヒアリングを実施することを決める。
ここまでは「成人年齢引下げによる、高校生AV出演問題」だった。
フェーズ2
自民党PTヒアリングから超党派へ。人権団体が声を上げ、カオスへ。
行政側・関係省庁がAV人権倫理機構へヒアリング。
とても短い・・・。
「いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・「JKビジネス」問題な炉に関する関係府省対策会議(議長は野田聖子さん)」でのAV人権倫理機構は、規制監督団体として「1分」だけの発言権で、主に資料提供。そして、AV人権倫理機構の記録はこうなっている。
AV人権倫理機構の要望はどこへいったんだろうか????
もう一点、気になるのが下記の二つのセンテンス。
冒頭の
では、AV人権倫理機構は、あくまでもコンプライアンスの監督者に過ぎない。が、末尾の文章、
これは適正AV事業団体の代表のように読めるかもしれない。
ここで、AV人権倫理機構の構図を見てみよう。
TwitterでよくみるJPGなどの名前が出てくるのがわかる。
しかし、この構造で見るとヒアリングに呼ばれたのはAV人権倫理機構の志田さんはじめ理事会の数名で、特に会員団体の5団体は呼ばれていないと思われる。AV人権倫理機構の文書(上に貼ってあるやつね)をみても、
とあるので、代表5団体はヒアリングには参加していなかったのだろう。
AV人権倫理機構とのヒアリングを受けて、自民党・公明党でプロジェクトチームを立ち上げる。そして自民党の骨子案をまとめた。しかし、これはぱっぷすら被害者支援団体より不十分との意見もあり、超党派議連となって素案をまとめにかかった。
しかし、そこへ別の人権団体によって批判される。
ちなみに郡司真子ってこんな人。
そして発信されたのが、こちら
撮影被害当事者声明 5月 01, 2022
結構突っ込んだ内容なのだが、5月16日に注釈が付いている。
ここでは、適正AV業界はやり玉にあがってはいないようにみえる。
しかし、一方、別の声もあった。
これにのっかったのか、立憲民主党の元議員である井田氏、作家の北川氏がなんと塩村議員を後ろから刺してきたのである。理解しやすそうな記事があったので貼っておく。
こうやって振り返ると、塩村あやか議員はこのAV新法議論において、関係のない批判をはねのけていたのだなあ。
実にややこしい状況の中、超党派議連での草案がまとまっていく。
フェーズ3
超党派草案と被害者支援団体の反発
さて、この間に一度、超党派議員連による公聴会が行われている。
こちらの情報はボクの手元には不足しているが、おそらくAV人権倫理機構が再び呼ばれたのはこのタイミングだろう(ちなみに、意見するのは1分間だったらしいが)
さて、上記は公明党の国重議員の活動報告だが、この時点での素案には契約、撮影、公開に関する制限事項は見受けられない。
しかし、こちらの記事には契約、撮影、公開に関する制限事項に触れている。
国重議員のHPには記述がないし、ハフポストの記事の印象も、それほど重要なポイントだとは思っていないようだ。
いったんのまとめ
しかし、当初の問題である「成人年齢引下げによる、高校生AV出演の禁止」は、ここにきて全く異なる意見が積み重なってしまったようだ。
当初の自民党・公明党によるPTで法案をまとめようとしていたが、被害者支援団体の反対を受けて要望書を出されるなどしており、その後は立憲民主党をはじめとする超党派に切り替わってもいる。
当初の問題はシンプルなので、「今国会内でまとめる」というのは「やや難しいかな?」といった印象だが、ここまで意見が積み重なってしまい、検討体制も変わっているのであれば、とても国会会期内に終わるとは思えない。
また、「AV人権倫理機構」のヒアリングも検討体制以前の行政による関係省庁への意見としてしか出ていない。しかも、AV人権倫理機構はあくまでも「適正AV業界の監督機構」であり、「AV事業者の代表団体」ではない。この辺の認識齟齬が最後まで引き面レ他可能性は非常に高い。
また、適正AVの契約プロセスでは事前に書面による契約締結が義務化されているが、この条文も読み違えている可能性がある。
適正AV業界では業界共通契約書で契約することを規約によって義務付けている。そして、最終的な合意を書面にて相当期間前に取り交わすこと、とされている。が、この規約は実運用上は以下のようだ。
・契約の摺合せを事前に行う
・最終合意事項を書面で取交す、これはオンラインでの取交しでもよい
・撮影当日に取り交わした書面に押印する
これは民法上、契約自体は口頭でも有効になるし、最終的に書面にも残るので規約違反にはならないと解釈されているようだ。
しかし、これは契約書面の取交しと、撮影日が別日になっているように受け取れなくはない。契約に詳しい人間であれば、適正AV業界のようなケースを想定できるが、しっかりヒアリングしなければ見落とすかもしれない。
結果を知っているから、かもしれないが、ボクからすれば、これで十分ヒアリングした、とは言えないと思うが、どうだろう。
フェーズ4
加速する被害者支援団体によるAV撲滅運動
その後、新宿でデモが行われる。
その主宰は、先ほど登場した「Colabo」の仁藤夢乃。
「根本的な被害防止のためには、撮影時の性交渉そのものを禁止」と訴えている。
共同の記事も掲載しておく。
どちらの記事も、契約~撮影~公開の期間的制約については触れていない。
この頃、そういった事業制約がAV新法にあることを、いったいどれほどの人が気が付いていたのだろうか。振り返ってみると、ホントに「急に出てきた」そして「世間に流布されてなかった」ことがわかってくる。
そしてカナコロの記事。
タイトルの横に「#metoo」のハッシュタグが付いている。
ここまで見て、いったん整理しよう。
当初のAV人権倫理機構は自分たちの運用や、新しい枠組みの諮問に答えているだけで、事業者実態については触れていない(そもそも、そういう組織じゃない)
この辺の事情を、超党派議連として加わったメンバーはどのくらい理解していたのだろうか?
超党派で出した素案も、AV人権倫理機構は「運用面の話」をわずか1分で回答しているだけで、AVメーカーやプロダクションがどの程度ヒアリングを受けて意見交換をしたのかは不明だ。ただ、プロダクションはどうも呼ばれていないようである。
非常に複雑に見えるのだが、AV事業者(メーカー、プロダクション、女優)が自分たちの事業を理解してもらえるほど、逆に言えば、超党派議連がAV業界の領域、その慣習などを理解できるほどの状態であったとはいえないと思う。
さて、セックスワーカーのカウンターデモは、記事を探せなかったので見つかり次第更新したい。ただ、若干触れているまとめ記事があったので引用する。
かなり長い。
しかし、ここでも適正AVの話は出てこない。少なくとも「適正AV」というカテゴリがあることには触れていない。こういったまとめ記事でも、このレベルの現状認識で、注目されているのは「性交渉を許容するべきか」といった議論で、業界慣習はほとんど議論されない。
フェーズ5
衆院を通過、いよいよ参院・・・でもその前に?
そして衆議院にて、議会審議に入る。
しかし、質疑の中で何と立憲民主党の堤かなめ議員から驚きの発言がでる。
対する、同じ立憲民主党の森山議員はこのように答弁している。
法案とは異なる趣旨の質疑をすることも驚きだが、これに対して「AV新法を推進する側の」森山議員がこのように回答しているのだ。
この後、立憲民主党は「そのような事実はない」と回答をしている。
しかし、こちらの記事を見てみると、そうと捉えることが難しい趣旨のことをエビデンス付きで解説している。
しかし、この主張って郡司真子や仁藤夢乃と同じなんだけどね・・・。
彼ら(柚木議員ら)と郡司真子、仁藤夢乃はつながっているのだろうか。
こんな状況にもかかわらず、衆議院は全会一致で可決。
これもおかしな話だと思うのだが・・・。
参院を通過して可決。反対者はNHK党の浜田議員のみという異常な状態
さて、ここからは少し手を抜いて公開を優先したい。
ここ最近、AV新法に興味を持った人なら、知っている範囲の話だからだ。
フェーズ2では立憲民主党の井田元議員他から批判され、被害者支援団体「Colabo」他からも批判された新法が、そもそも決議にかかること自体が違和感がある。さらに衆院後の立憲民主党の「AV禁止」発言も、AV新法の解釈を揺るがす内容だと思うのだが、結局参議院でも可決された。
そして、この間「適正AV」というカテゴリがあることの説明も、国会内で行われることはなかったように思う(議事録全てを見返してはいないので)
この状態で、浜田議員以外が全会一致で可決、というのはとても違和感を感じないだろうか。「会期末だから決議したい」あるいは「18歳19歳のために早く立法したい」そして、「総理が今国会で議員立法すると言ったから」かもしれない。
そして、付帯決議で全てが終わる
付帯決議の内容は、以下にまとめているので参考にしてほしい。
付帯決議の中で、塩村議員は政府に対して法運用についての依頼を語っている。しかし、その中で事業者への新法運用の相談・実施については触れていない。
通常行われる、新法の解釈や、公益性についての議論、新しい運用を検討するための質疑応答の時間は全てなく、この付帯決議の中で完結してしまった。
さらに、この付帯決議の質疑の中では、「AVでの本番禁止」や「AVそのものの規制」を含めて、「法運用での問題などは継続的に議論して2年をめどに見直す」と語られている。
まとめ
正直、まとまらない。
どうみても、議論が不足している。
なにより、解決したい問題がイマイチ不明確だ。
いくつか議論にあたって納得のいかない点を挙げておく。あくまでボク個人の主観なので参考までにしてほしい。
1.適正AVという領域が関係者、そして議決する人間に周知されていない
2.本番反対派の声の取扱いが不明確である
3.適正AV領域以外(同人AV、個人撮影)への有効性が不明確
→契約解除や削除申請の法的根拠は与えたが、実効性は未検討
4.2年後には状況に応じて見直す、のモニタリングポイントが不明で、
かつこれだけの状況で不明なことが不審である
5.当初の問題提起「成人年齢引下げによる18歳19歳のAV出演問題」から
扱う問題が変わったにもかかわらず、当初想定の国会会期末にむけて
議員立法する判断
6.業界団体へのヒアリングが適切に行われているとは思えない。
少なくとも議事録などで検討事項と参加者は開示されるべきだろう。
また、AV人権倫理機構を「業界監督団体」ではなく、「業界団体」と
誤認している可能性がある。
7.業界団体が最も苦しむ「契約~撮影~公開」の期間制限は、適正AV
業界の規約の誤読の可能性がある
8.立憲民主党はじめ、異なる意思があるにもかかわらずほぼ全会一致
と、箇条書きにしてみたが、モヤモヤすることはこれ以上にある。
ただ、いずれにしても業界の構造整理、事業運営上の確認などをきちんと行っていれば、解消できるような懸念ばかりだ。
むしろ、この状況でよく立法できたものだ、と思う。
ちなみに、AV新法の推進議員は以下の通り。
その結果はこちら
そして、困っている声を上げた女性たちへの塩村さんの反応はこれ。
ということで、ここまでの関係図がこちら。
適正AV領域の規制を厳しくすることが、ホントに出演強要被害を減らすことにつながるのか、という疑問を整理したのがこちら。
https://note.com/tenfirefighter/n/n63d26853d961
法案自体の問題点を知りたい方はこちら
ココから先は推測の世界
そのうち書く。