おすすめ歌集行くぞッッ

たんぽるぽる/雪舟えま

おにぎりをソフトクリームで飲み込んで可能性とはあなたのことだ

水底で心あたりのある愛がわかさぎ釣りを見上げるだろう

全身を濡れてきた人ハンカチで拭いた時間はわたしのものだ


この歌集、読み進めるたびに、底知れない何かに腕を突っ込んでいる感覚になる

ほんわかしてそうだし、実際読んでいてもそういう感想を抱くんだけど、でもその奥にあるものはそれだけではない、そんな歌集です

おすすめ


きみを嫌いな奴はクズだよ/木下龍也

夏になればとあなたが言った夏になればすべてがうまくいくかのように

君とゆく道は曲がっていてほしい安易に先が見えないように

僕なんかが生きながらえてなぜきみが死ぬのだろうか火に落ちる雪


短歌ってたまに感性がバチっとはまらないと読めないときがあるんですけど、木下龍也の短歌はそういった心配がまったくない、わかりやすく面白さが伝わってくる

はじめて短歌読む人はおすすめ 木下龍也さんだとほかには

あなたのための短歌集/木下龍也

共著だと

玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ/木下龍也 岡野大嗣

がおすすめ

風にあたる/山階基

三基あるエレベーターがばかだからみんなして迎えに来てしまう

ひたすらに見守っているなりたくてホットケーキは丸になるのに

働いているときのあなたの笑みが手品の花のようにこぼれる


さわやかな歌集。一定の、心地いい感覚を保ったまま連作が進んでいく。劇的な、といった感じではないけど、一つ一つの歌の完成度は高くて、読んでいてすっと喉に入ってくる感じがある。

世界で一番すばらしい俺/工藤吉生

膝蹴りを暗い野原で受けている世界で一番すばらしい俺

うっかりと入っていくと晩飯がふるまわれそうな灯りの家だ

おそろしい形相をした歳月がうしろからくる 前からも来た


卑屈なようで、案外図太い感じの主体。どこかおかしいんだけど、自分にも、たぶんどんな人にもそのおかしさってあるなっていうおかしさで、でもやっぱりどっか自分と違って、夢中になって影を追ってたら一瞬で読み終わってた歌集。

どこかおかしい人におすすめです。


いい歌集紹介でした


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