メイプルという木材について
皆様ごきげんよう!アコギヲタクの無射(ぶえき)です!
本日は、アコースティックギターのサイドバック材として使われるメイプルについて語っていきたいと思います!
さて、ハカランダやキューバンマホガニーなどの数々の素晴らしいトーンウッドがある中、なぜメイプルを語るのかと言いますと……。
私がメイプルが大好きだからです! 以上!!!
大抵のアコースティックギターのサイドバック材は、ローズウッドかマホガニーで作られています。
アコギのサイドバックのことを調べていて目にする記事は、だいたい『ローズウッドとマホガニー弾き比べ』だったり、『ローズウッドとマホガニーの音の違い』です。
ローズウッド→ドンシャリで太い低音と煌びやかな高音が特徴的なサウンド。
マホガニー→中音域がふっくらとしていて、暖かみのある優しいサウンド。
などと表現されています。
では、メイプルの音はどうなのでしょうか?
メイプルの種類
では手始めに、メイプル材の概要を語っていきましょう。
まず『メイプル』とは、日本で言う『カエデ』の木のことで、ムクロジ科カエデ属の木の総称です。
簡単に言ってしまえば、メープルシロップのメープルですね。
木材としてギターに使われる場合はよく『メイプル』と表記されます。理由は不明です笑
さて、一口にメイプルとは言っても、複数の樹種が存在しています。
大まかな音の傾向は同じですが、それぞれ少しずつニュアンスが違いますので、メイプルのアコースティックギターを買おうと思った時は『どのメイプルが自分の求める音なのか』を考えてみるのもいいかもしれません。
では、メイプルにはどんな種類があるのか、ざっくり解説していきたいと思います。
①ハードメイプル
まず一つ目がハードメイプルです。
このメイプルは音質が非常に硬く、音の張りと歯切れの良さが特徴的です。
エレキギターでは、レスポールの表板に使用されたり、ストラトやテレキャスのネック材として使用されます。
アコギではエレアコを中心に広く使用され、『メイプルと言えばこの音!』という印象も強いです。
原産地はカナダ・アメリカ北東部。比重(水を1とした時の指数。比重1以上は水に沈む)は0.69〜0.72で、メイプルの中では一番重いです。
GibsonのJ-200やDoveを初めとして、GuildのF-55や、その他様々なメーカーのアコギに広く使用されています。
ソロギターが好きな人だと、グレーベンをご存知の方もいるかと思います。このグレーベンのメイプルも、ハードメイプルであることが多いです。
ちなみにハードメイプルのうち、東部産のメイプルのことをハードロックメイプルと呼ぶそうです……笑
レスポールの表板に使われることから来ている名称だとは思いますが、ロックのパワーは凄いですね笑
ハードロックメイプルの見分け方は意外と簡単で、サイドバック材やネックほどの面積で使われていれば、どこかに『フレック』と呼ばれる班があります。
これは木材中の鉱物質からなる「こげ茶色の小さなシミ」で、病気等ではないようです。
ハードメイプルの中でも、炎を連想させるような不規則な縞模様が浮き上がっているものは、カーリーメイプルと呼ばれます。
また、その模様が規則正しく直線に並んでいるものをフレイムメイプルと言います。
どちらも希少材として、非常に重宝されています。
また、まるで鳥の目のような、ごく小さな円形模様が不規則に現れたメイプルがあります。
これはバーズアイメイプルと言い、ハードメイプルとソフトメイプルに現れる杢目だそうです。
なぜこのような杢目が生成されるのか、その原因は詳しくわかっていません。今は一種の病根と考えられています。
バーズアイメイプルはメイプルの木のうち0.05%。つまり2000本に一本しか採れず、しかも典型的な鳥目模様は表面から五分の一の部位にしか現れないよう……。
そのため、価格は通常のハードメイプルの何十倍にもなります。
アコギのサイドバック材として使われることは非常に少なく、ヘッドプレートやピックガードの装飾等に使われています。
②ソフトメイプル
用途はハードメイプルとあまり変わりませんが、強度や硬度が少し落ちます。
音質は、ハードメイプルに比べると柔らかく、レスポンスもやや悪くなるようです。
音の張りが弱くなる代わりに柔らかい音質になり、鳴りを感じやすくなります。
Taylorの600番台に使用されるビックリーフメイプルもこのソフトメイプルで、低域から高域までフラットな音響特性を持っています。
Taylor Japanでは、優しく弾けば音質は暗く、激しく弾けば音質は明るく変化し、弾き手の強弱に大きく反応する、といった紹介をされていましたね。
原産地はカナダ・アメリカ北東部。比重は0.55〜0.61。
ハードメイプルよりも軽いですね。
ソフトメイプルには、美しいキルト模様が樹木の表層部にのみ現れ、キルテッドメイプルとして高値で取引されています。
キルテッドメイプルはギター材になるだけの大きさとして現れることが少なく、バーズアイメイプル同様、サイドバック材として使われることはごく稀です。
しかし、美しいキルト模様が自分のギターの裏板いっぱいに現れているとしたら……夢の広がる話ですね!
③シカモア(ヨーロピアンメイプル)
ソフトメイプルよりもさらに柔らかく、直線的な虎目がよく出ます。
原産地は名前にある通りヨーロッパ中部。他にも西アジアや、アメリカにも分布しているようです。
音に変な癖が無く、プレーンでバランスの取れた音質です。
また、高音域のツヤ感が非常に優れており、音の柔らかさも含めて高級感があります。
一般的には安価で、低い価格帯のギターによく使われますが、フランス産の白い絹のような光沢を持った杢目は別格扱いとなります。
中でも、木目の間隔が狭く均一で美しいトラ目を持つものは、木質密度が高く、高級バイオリンやギターのボディ材に用いられています。
ギターの中でも特にナイロン弦のギターによく使われ、バイオリンやチェロ等のクラシックの弦楽器のサイドバックとしては最も使用率が高い材です。
かの有名なストラディバリウスのサイドバック材として使用された材も、このシカモアです。
比重は0.50〜0.54
メイプルの中で最も軽い材ですね。
まとめ
以上、三種類のメイプル材についてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。
いやいや、まだ『クィーンズランドメイプル』が残っているじゃないか、と思ったそこのあなた。
あの木はムクロジ科ではなくミカン科で、さらには音質もメイプルではなくマホガニーに近い材ですので、今回は割愛させていただきます。
まったくカエデとは関係ない種別のはずなのですが、何故かメイプルという名前が付いてるのですよね笑
それぞれの音のニュアンスは項目ごとに書きましたが、メイプルの大まかな傾向を書いておきますと……
低域から高域まで音響バランスが良く、レスポンスの良さと高音域のリッチさが際立つ木材。
というのが、私なりの総評です。
その中で、ハード→ソフト→シカモアの順番で柔らかくなっていき、徐々にジャキジャキ感が減り、優しい音質が目立つようになります。
しかし、サイドバック材がメイプルのアコースティックギターは、そのほとんどがハードメイプルで作られています。
ソフトメイプルなんかは、ほとんどTaylorくらいでしか見ません。(他のメーカーも特別モデルにてキルトメイプルを使用することはあるため、これはソフトメイプルと思われます)
シカモアに関しても、均一な木目の出ている物は個人製作家の方々が製作しているアコースティックギターでは稀に見ますが、メーカー物のレギュラーラインで使用されていることはほとんどありません。
というか、私は知りません。知っていたら、ぜひ教えていただきたいです。
では最後に、私の所有しているハードメイプルとヨーロピアンメイプルのアコースティックギターの写真を添付して締めとさせていただきます。
では、またどこかでお会いしましょう!!!