【第18話】影の中の真実/DOLL HOUSE（オリジナル小説）

第18話: 影の中の真実

真央は、リサの言葉を胸に深く刻みながら、目の前の写真をじっと見つめていた。自分の知らない過去、忘れられた記憶が、この場所に隠されているということを。DOLLHOUSEが何を意味するのか、そして自分がここに来た本当の理由を知るためには、過去を取り戻さなければならないと感じていた。

「私…本当に忘れているのか？」

真央は、震える手で写真を触れながら呟いた。その手が、次第に冷たく感じられた。

「忘れることも、時には必要なことです。」

リサが静かに答える。彼女の目には、どこか深い悲しみが宿っていた。

「過去があまりにも重すぎる時、心はそれを忘れることで自分を守るんです。でも、今あなたはそれを取り戻さなければならない。」　

真央はリサの言葉に何かを感じ取った。それは単なる説明ではなく、リサ自身も何かを抱えているように見えた。リサが抱えている秘密、DOLLHOUSEの本当の意味、そして自分の忘れた過去が、すべてに深く絡み合っていることを感じる。

「でも、どうして私が忘れているのか？」

真央はもう一度尋ねた。

「どうして、私がこんなにも大切なことを忘れているんだろう？」

リサは静かに歩み寄り、真央の肩に手を置いた。その手のひらの温かさが、真央の体を包み込む。

「それは…あなたにとって、あまりにも辛い過去だからです。あなたがこの場所に来た理由、それは過去を受け入れるため。あなたがどれだけ辛い記憶を抱えていても、受け入れなければ、前に進むことはできません。」

その言葉に、真央は再び強い衝撃を受けた。過去を受け入れなければ進めない。リサが言うように、過去と向き合わなければならないのだと、真央は強く感じた。

「でも、私が受け入れるべき過去って、何？」

真央は、目を閉じて深く息を吸い込んだ。　

「リサ、私の記憶に隠されているものを、教えてくれない？」

リサはその問いに答えることなく、黙って真央を見つめていた。彼女の目は、真央の目を逃さず、何かを訴えているようだった。しかし、その目に映る真実は、まだ明かされていなかった。

しばらくの沈黙の後、リサはようやく口を開いた。

「お嬢様、あなたはDOLLHOUSEの中で、すべてを知ることになるでしょう。でも、その時が来るまで、あなたにはまだ試練が必要です。」

「試練？」

真央はその言葉に驚いた。

「どういうこと？」

「あなたの過去を知るためには、心の中で最も強く感じるものを受け入れることが必要です。それがあなたの試練です。」

リサは言った。

「今、あなたがどれだけこの場所で過ごしてきたとしても、まだそれを受け入れる覚悟が足りていません。あなたが本当に自分を知り、過去を思い出すためには、勇気を持たなければならないのです。」

その言葉に真央は、まるで冷水を浴びせられたような気分になった。自分が知らなければならないこと、それはただの過去ではなく、心の奥深くに眠っている感情や記憶に関することだった。そして、そのすべてを受け入れなければならないということは、真央にとって非常に大きな挑戦であることが伝わった。

「勇気か…」

真央は呟き、目を閉じた。

「私には、そんな勇気があるのかな？」

リサは静かに真央を見つめ、その顔に柔らかな微笑みを浮かべた。

「あなたには、きっとあります。あなたがその勇気を持っていることを、私は知っているから。」

その言葉が、真央の心に温かさをもたらした。リサの言葉には、どこか本気で信じている力強さがあった。それが、真央の背中を押してくれるように感じた。

「私は…私の過去を受け入れる。」

真央は強く決意を固めた。

「そして、私は前に進むために、すべてを知りたい。」

その言葉に、リサは微笑んだ。

「お嬢様、あなたがその覚悟を持つ時、すべてが明かされるでしょう。」

真央はその微笑みを見つめながら、DOLLHOUSEでの真実に一歩近づいたことを感じていた。過去と向き合わせるための試練が待っている。しかし、それを乗り越えた先に、どんな答えが待っているのか。彼女はその答えを求めて、歩みを進める決意を新たにした。