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小説です、植物の化け物と戦う話。タイトル:旋律の歌〜1章目〜
僕は今、手に汗を握って自動販売機の前にいた…。夏が終わり、秋が来て今は冬。なのに汗をかく程僕は今焦っていたのだ。
年齢28歳の僕は転職に失敗し、現在無職中。冷蔵庫の中は空だし、所持金も5千円とちょっと。両親はいないし、親戚も疎遠。生活に困っているといえばそうだが、だからといって今動き出そうとも、この絶望的な状況には変わりない。なぜなら、僕はこのロックダウンした街から出られないのだから…。
…街がロックダウンした原因は不明だ。何故こんなことになっているのか、周りの人間に聞いても分からずじまいなのだ。ある人は細菌のせいだとも言うし、ある人は怪物やUMAのせいだとも言うのだけど…。実際そんなことが起きていると言う明確な情報はないのだった。Twitterでもテレビでも実態はわからず、ただ、閉鎖された空間として報道されるばかりだったのだ。そしてそんなことより問題は外はある一定の区域を抜けようとすると、特別公務員の人達に捕まってまた、街の中に戻されてしまうらしい。
僕はどうしても外に出なくてはいけない問題がある、理由は友達の看取りがあるのだ。それをしに出かけなければならない。出かけて顔を見てあげなければならないのだ。でも出られない。僕がじっとしてる間にも友は弱っていき、街がだんだん戦慄してきた。
自分はとにかくこの場から離れたかった。まずはこの自動販売機から飲み物を取り出して、次に….次にどうすればいいのだろう。策があるわけでもない、遠出できるお金がない僕は飛行機や、船、車は駄目だし出ていける移動手段があるわけでもない。というかそもそも、ロックダウンによって動いてないと思うのだ。しばらく立ち尽くして、その後、僕は近くの椅子に座った。非日常は近くにある…そう実感させられるのだった。
…1時間ほどが経ちまた、街がなんだか騒がしくなってきた、暴動が起きたらしい。デモの人が瞬足で集まり、ロックダウンを解除せよと札を掲げて出てきた。
そんな中、顔を見慣れた、姿があった。titiだ。titiは昔からの馴染みでよく一緒に出歩いていた。そりゃ子供から中高生くらいまでの付き合いだったが。そして僕は見かけたやいなや、彼の元に走っていき「titi何してるの」と慌てて声をかけた。会うのは数年ぶりくらいだろう。「あれ?僕じゃん。久しぶり。こんなとこで会うなんてさ。見ての通りデモだよ、こんなことになったらじっとできる訳ないだろ?」と言ってきた。そして、「理由もわからないのにこんな事になって」と彼は怒りを露わにして、僕に話しかけてきた。
僕はやはり、原因はわからないのか、となんだかもやもやしたが、考えた。そしてtitiにこう言った「ねえ、こんなところでデモなんかやるよりさ、街、見て回らないか?」と言った。
この問いかけには理由が三つある、一つはロックダウンの街はどこからどこまで行ってもいいのか?もう一つはこの騒動の原因がわかる何かがわかりたいのだ。そして、最後は…単純に1人行く勇気も金もなく行くのが怖かったのだ。「え?見て回る?でも、街の混乱に情報がアップされるのは時間の問題だぜ?」とtitiはいってきた。確かにそうではあるが…、「自分達で見に行かないと納得できないだろ?」と言うと「それもそうだな」とtitiはすぐに納得してくれた。titiは元々聞き分けがいい。僕の話す言葉をとにかくちゃんと聞いてくれるのだ、そんな彼が近くにいてくれたら助かるのだろう。僕は彼がきてくれる事に安堵した。
その前に「自動販売機でジュース買ってもいいか?」と、僕は彼から許可をもらうと自動販売機へジュースを取り出しに行った。所持金5千円のうちの千円一枚が物悲しげに自動販売機へ吸い込まれていき、4840円とちょっとになって戻ってきた。titiが車を出してくれる事になった。「街を回る事なんだけどさ、街の中は暴動だらけだからまずは街の中、それなりに見終わったら街から村へ伝うように行ってみようぜ」と彼は提案してきた。「正直、人が多いところはもう閉鎖されてると思うから、人が少なくなる方で行こう」と。しかし、彼が提案してきた場所は友達のいるとは正反対な場所だった。だが、他に方法もないし、出られたらいくらでも、その地区に飛行機や船もあるだろうとたかを括った。
titiは自分のお気に入りの曲をかけて、デモの札を後ろのシートの席に置き、僕を助手席に乗せた。僕の車はガソリン代がかかるから家で置いてけぼりだ。ここまでは歩きで来ていて、だから喉がすごく乾いていて、水分が欲しかった。ジュースを一気に飲みほし、喉を潤し終わると次は少しお腹が空いている事に気がついた。だけどもう出発をするところである。titiは「こんな時でも俺は絶対安全な安全運転で行くからな」と冗談を言い僕たちは走り出した。
結果、先に言っておくと僕たちはロックダウンの外へは出られなかったのだ…。