かかりつけ薬剤師・薬局とは?

先日、薬剤師向けのセミナーにて、講師のケアマネージャーから
「かかりつけ薬剤師という言葉を最近耳にしますが、ケアマネージャー側から薬の悩みがある患者さんにかかりつけ薬剤師を持つことを勧めて良いのか?」
という質問がありました。

ケアマネージャーの方から「かかりつけ薬剤師」という言葉を聞けたことに感動しました。
大手調剤薬局のおかげか、薬剤師会のおかげか、少しずつ認知度が上がっているようです(講師の立場から調べていただいたのだと思いますが)。

かかりつけ薬剤師・薬局の定義

「かかりつけ薬剤師」とは、薬による治療のこと、健康や介護に関することなどに豊富な知識と経験を持ち、患者さんや生活者のニーズに沿った相談に応じることができる薬剤師のことをいいます。(出典:かかりつけ薬剤師・薬局 |日本薬剤師会 (nichiyaku.or.jp)
「かかりつけ薬局」とは「かかりつけ薬剤師」のいる薬局のことです。

かかりつけ薬剤師・薬局の概念


以前より「かかりつけ薬局」という概念は存在しました。
「昭和のおくすりやさん」のイメージです。
この時代は医薬分業がない時代ですから、薬剤師は処方箋調剤ではなく漢方、OTC薬、薬局製剤等を使って健康維持のお手伝いをしていました。
モノを販売するだけでなく、養生するだけでよければ薬を売らず、重大な病気の疑いがあれば病院へ受診勧奨をしていたんです。
これを、医薬分業の進んだ現在に合った形で国が評価したのが、昭和のおくすりやさんの機能を持った薬局(かかりつけ薬局)で働く、ある一定水準をクリアした薬剤師(かかりつけ薬剤師)です。

制度上のかかりつけ薬剤師


「かかりつけ薬剤師」制度は2016年度の調剤報酬改定によって定められました。
かかりつけ薬剤師の仕事は、レベルを問わなければどの薬剤師にでもできます。
ただし、かかりつけ薬剤師になれる方が優秀でレベルが高い、というわけではありません。
薬剤師として、契約者に対して健康上の責任をとる薬剤師であるか、ということです。
以前所属していた病院のDr.にいわれた一言が今も心に残っています。
「医者は誰にでもなれる。すべての責任を受け入れることができるのであれば。」
自分が投薬した薬や、お薬手帳で知り得た情報だけの責任であれば、それはただの薬剤師です。

制度上のかかりつけ薬剤師の要件


かかりつけ薬剤師として契約するには以下の要件を満たす必要があります。

この要件をクリアした薬局・薬剤師であることを前提に、以下の要件みたせば、かかりつけ薬剤師になれます。

この内容には、かかりつけ薬剤師でなくても行っている仕事がいくつも入っています。
①複数医療機関受診患者に対して、薬の一元管理の有用性を説明し持参してもらい、必要があればco-medicalに情報提供をおこなう
②アレルギー、副作用の発現、服薬状況、OTC薬・健康食品の服用、医療機関受診状況等の確認を行い管理する
③お薬手帳に薬局の名称、連絡先を記載する
これらの仕事は薬剤師であれば行っている仕事です。

24時間対応ができる体制は薬局毎の考えによるのかもしれませんが、この要件を満たせば大きなハードルとして残るのが
「患者同意の下(患者さんに指名されて)、同意書にサインをもらうこと」
この要件のみです。
患者さんのデメリットとして、処方箋受付1回の負担が30-100円程度増えることにはなりますが、メリットを考えると理解していただけると思います。
私は、現在所属している薬局の状況を考えて70人程度の契約で押さえていますが、金額の負担で断られたことは指で数えるほどしかありません。
金額の面よりも、患者さんと信頼関係築くことができているか、が重要です。
制度上でのかかりつけ薬剤師の要件とは、「患者さんに信頼され、その責任を享受すること」ができるかにつきます。

ケアマネージャーからの質問


「かかりつけ薬剤師という言葉を最近耳にしますが、ケアマネージャー側から薬の悩みがある患者さんにかかりつけ薬剤師を持つことを勧めて良いのか?」
この問いに対しての私の回答は、
「かかりつけ薬剤師は、制度としてすべての薬剤師がなれるものではありませんが、患者さんが信頼している薬剤師がいらっしゃるのであれば、その方にお任せしてはいかがでしょうか?」
です。
制度上の「かかりつけ薬剤師」ではなくとも、患者さんが信頼して指名していただけたら「かかりつけ薬剤師」になれます。
ただし、かかりつけ薬剤師契約ができる薬剤師は積極的に契約していただきたいと思います。責任が薬剤師を育てます。

まとめ


「かかりつけ薬剤師」はお客さん(患者さん)に選ばれた薬剤師です。
制度上の「かかりつけ薬剤師」とは、薬による治療のこと、健康や介護に関することなどに豊富な知識と経験を持ち、患者さんや生活者のニーズに沿った相談に応じることができる薬剤師のことです。
どちらの薬剤師も同じような仕事をするのだと思います。
ただし、異なるのは「責任を負う覚悟があるか」です。
契約ですから。

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