心理学研究法1
心理学研究法とは?
心理学とは、目に見えない”心”や”意識”を科学的な知見を用いることとで解明しようとする化学です。科学である以上は解明しようとすることが”事実”でなければいけません。そのため【人の行動】や【面接によるやり取り】などを客観的に捉え、それらを数値化・データ化することで分析を試みる研究が進まられてきました。今回はそんな心理学の分野でも【心理学研究】という領域に対して視点を向けて紹介できればと思います。
因果関係と相関関係
心理学研究において主要なテーマとして”独立変数”と”従属変数”の間にある何等かの関係性を解明する、といったものがりますこれらは統計においても使用される重要なテーマです。
・独立変数:研究者が操作することが可能な、従属変数に影響を及ぼすと考えられる何等かの要因(例:フライパンの上で卵焼きを作るとき、フライパンのみでは卵を焼くことができないが、ガスコンロやIHなどでフライパンを熱することで卵を焼くことができる。つまりこの時の独立変数は”ガスコンロやIHが発する熱”ということになる。)
・従属変数:独立変数の変化に応じて変化する変数(例:フライパンに熱が通るとその上に落とされた卵は焼けてしまう。これはフライパンに熱が通りフライパンの熱が変化したことで卵にも変化が生じたためであると言える。
因果関係
この独立変数と従属変数の間には大きく【因果関係】と【相関関係】と言われる関係性が存在する。【因果関係】とは、独立変数と従属変数の間に原因と結果という関係性のことです。また、特徴として関係性が一方通行であることが挙げられます。
・例:気温が高い季節になると水着の売り上げが上がるが、水着の売り上げが上がったからと言って気温が高い季節になるわけではない。
相関関係
一方の【相関関係】とは、実際の原因が定かではないがどうやら独立変数と従属変数との間に何らの関係がある状態のことです。
・例:水着の売り上げが上がるとアイスクリームの売り上げも上がる。この場合、一方が上がればおのずと一方も変化する。
このように因果関係と相関関係では”原因と結果”の所在が重要となってきます。
実験的研究と観察的研究
ここまで心理学研究における”独立変数”と”従属変数”の大まかな役割や立場を紹介してきました。ここからは実際に心理学研究をするを行うにあたって、具体的な方法を2つ紹介していきたいと思います。
実験的研究
心理学を研究するというと思い浮かぶのが、大学やどこかの研究室で複数の研究者が被験者に対して何等かの実験をしている描写ではないでしょうか。
【実験的研究】はそのイメージに近い研究方法になります。【実験的研究】では、実際に研究をすることで解明したい心理的な現象等を2組の変数を用いて科学的に解明することが目的になります。
・例:暴力的な映像を視聴すると暴力的になりやすいのかを調べるために、被験者に暴力的な映像を見せたあとの行動の変化を調べる。
実験的研究では調査のみの研究などでは明らかにすることができない”因果関係”を見出すことに適しています。また、研究者が変数を統制することで得たい結果のみを法則的に再現することができるといったメリットがあります。つまり研究者が研究に介入できる点が特徴です。
観察的研究
一方の【観察的研究】とは、実際の実験を行う【実験的研究】とは異なり”研究者が介入することがない”研究です。研究者は変数を操作することなく、対象となる心理的な現象に関わるデータを収集し、それらを分析することで新たな知見を得たり因果関係を推測・解明することができます。
・例:暴力的な映像を視聴すると暴力的になりやすいのかを調べるために、過去に暴力的な映像を視聴した人物に対して「あなたは暴力的か」を問い、それらのデータ分析する。
このように【観察的研究】では実際に研究を行うことなく、観察や調査によって心理的な現象を解明しようとする。
まとめ
心理学研究において解明しようとする対象が【因果関係】であるのか【相関関係】であるのか、また、それらを【実験的研究】を用いて解明するのか【観察的研究】を用いて解明するのかは基本的な要素であるため、十分理解することで心理学をより深く知ることができます。
・参考文献
高野陽太郎・岡隆編『心理学研究法―心を見つめる科学のまなざし』補訂版(有斐閣アルマ)2017
吉田寿夫『本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本』(北大路書房)1998