異嗅症について
嗅覚を視覚でイメージしてみよう!
嗅覚は、患者さん本人の自覚的な症状である。
そのため、どのくらい悪いのか?どんな感じに悪いのか?というのが伝わりにくい。患者さん→医師に伝えるときにもうまく伝わらない。
見えない嗅覚を見える化して、患者、医師ともに現在の状態をイメージしやすくしてみよう。
嗅覚の基礎知識
外から飛んできた匂いの化学物質は、鼻腔内の嗅裂部というところで、受容体に結合し、嗅球を介して中枢(脳)に情報が伝わる(ここまでの機序に関しては、今後記事を作成予定)。
自然界に、ニオイは数十万種類あると言われている。
人間には400種類の嗅覚受容体が存在している。
仮に1つのニオイ物質に対して、1種類の受容体が対応していたとしたら、自然界に存在すらニオイの把握は難しい。99,600種類のニオイに関して人間は見逃していることになってしまう。
今考えられている仮説として、a, b, cという3種類の嗅覚受容体が存在したときに、この3つにニオイ物質がちゃんとくっつき、受容体が3つ同時に活性化した際に、a+b+cという形で、目的の匂いがわかると言われている。
嗅覚障害は、量的(どの程度嗅覚が低下してる?)と質的(どんな感じに嗅覚が悪い?)に大きく分けられる。
異嗅症は、質的嗅覚障害に分類されにおいの質が異常に自覚されていることになる。
量的嗅覚障害のイメージ
質的嗅覚障害のイメージ
さらに、刺激性異臭症と自発性異臭症に分類される。
刺激性異臭症とは、『自分が知っている物の本来の匂いとは違うように匂いを自覚してしまう』こと。
自発性異臭症とは、『本来は何も匂わないものを嗅いで、何らかの匂いを自覚してしまう。もしくは、何もないところで急に、何らかの匂いを自覚してしまう』こと。これは、周囲の人は何も自覚していないが、本人のみ嗅覚を自覚してしまう状態である。
異嗅症は、これ単独で起こることは少なく、量的嗅覚障害に伴って生じることが多い。特に、感冒罹患後嗅覚障害や外傷性嗅覚障害のような嗅神経性嗅覚障害に生じることが多く、これらの症例の半数以上で異嗅症を生じる。
感冒後嗅覚障害や外傷性嗅覚障害の治療中に生じる刺激性異嗅症は嗅覚障害が治癒すると異嗅感も消失する。
治療としては、量的嗅覚障害に準じて治療を進める。患者は悪くなっているんじゃないか?と心配するが、よくなる経過の症状と説明する。