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仮設電気の幹線ルートはどこかを通すべきか?

今回は、現場の仮設電気の幹線ルートについて解説します。

「仮設電気の幹線ルートなんか考えたこともない」

「仮設電気屋が出してきた資料通りに配線している」

という人がほとんどではないでしょうか。

実際、大手ゼネコンでも設備工事のことを考慮して仮設電気のルートを決める建築担当者はほとんどいません。

しかし、仮設電気の幹線ルートを適当に選んでいると、見えないところで工程を遅らせる原因になってしまいます。

仮設電気の幹線ルートを検討するうえで必要なポイントを紹介していきます。

仮設電気のルートの仕組み

まずは簡単に仮設電気のルートの仕組みから紹介します。

工事が始まると電力会社から敷地内に仮設電源を引き込みます。

引き込んだケーブルは仮設キュービクルを設置して、高圧電源から100Vや200Vの低圧電源に変換します。

小規模な現場の場合ではキュービクルを設置せず、直接100Vと200Vの低圧電源を引き込む場合もあります。

低圧電源は、現場内に設置する仮設の分電盤へケーブルで送られます。

このキュービクルから分電盤までに敷設するケーブルのことを幹線ケーブルと言います。

分電盤からコンセントボックスや仮設照明へ電気を送るケーブルは、二次側配線と呼びます。

複数フロアのある建物では上階まで幹線ケーブルが敷設され、フロアに分電盤を設置して、分電盤から二次側配線作業を行います。

幹線ケーブルの盛替えを減らすのが原価圧縮のポイント

仮設電気の幹線ケーブルのルートを考える際は、盛替えの回数が少ないルートを選ぶことが肝心です。

幹線ケーブルは2次側配線ケーブルと比べ、ケーブルサイズが太いため一度敷設すると容易にルートを変えることができません。

工事の進捗によって都度、幹線ケーブルのルートを変更するようでは、仮設電気工事費が高くなってしまいます。

幹線ケーブルのルートで特に注意すべきなのが、各階をまたぐスラブ貫通の箇所です。

ここを間違えると設備工事は進まず、仕上げ工事は着手できず、竣工間際に徹夜作業をしなければならない事態に発展してしまいます。

仮設電気の幹線ケーブルのNGルート

幹線ケーブルがスラブ貫通する場所で、通してはいけないNGルートを紹介します。

NG集

  1. EPS・PS

  2. 設備工事の多いエリア(廊下など)

  3. 仕上げの多い部屋

①EPS・PS

幹線ケーブルのルートで最もやってはいけないのが、EPSやPSといったシャフトを通してスラブ貫通させてしまうことです。

「仮設とは言え、設備のものだからシャフトにいれておけばいいでしょ」と思うかもしれませんが、これが大きな間違い。

シャフトは、本設のケーブルや配管を通すルートです。

シャフトに仮設電気が通っていると、本設のケーブルや配管が本来使うずであったスペースが使えなくなってしまいます。

仮設ケーブルが邪魔をして、本設のケーブルや配管を着手できないという場合もあります。

本設照明が点灯すれば仮設電気を撤去できるのに、仮設電気があるために本設のケーブルを敷設できないという負のスパイラルに陥ります。

EPS・PSに仮設電気の幹線を入れるのは絶対にやめましょう。

②設備工事の多いエリア

配管、ダクト、ケーブルラックなど天井内の設備工事が多いエリアに、幹線ケーブルのスラブ貫通を設けるのは避けましょう。

シャフトの例と同じく、幹線ケーブルが邪魔をして設備工事を着手できません。

設備工事の多いエリアはメインの部屋の中にあったり、廊下に集約されていたりと物件によってさまざまです。

「幹線ケーブルのスラブ貫通箇所を検討するのに、設備工事の多いエリアを避けようと思う。設備工事の多いエリアを教えてほしい」

と、電気・設備の業者に聞けば教えてくれると思います。

③仕上げの多い部屋

メインエントランスや商業施設の吹き抜け部など、建物の顔となる仕上げの多い部屋に幹線ケーブルのスラブ貫通箇所を設けるのは避けましょう。

仮設幹線は工事の終盤まで撤去することができません。

仕上げの多い部屋は設備工事のボリュームもさることながら、その後の内装工事のボリュームも多いです。

バックヤードなど仕上げの少ない部屋は一部をダメにしておくことが可能ですが、木や金属など特殊な仕上げを使っている部屋は部分的にダメを残すことは困難です。

仕上げの多い部屋に幹線ケーブルのスラブ貫通箇所を設けるのはやめておきましょう。

仮設電気のおすすめな幹線ルート

以上をふまえ、仮設電気の幹線ケーブルをどこに通すのがよいのかをご紹介します。

バックヤードのエレベーターホール

幹線ケーブルのスラブ貫通箇所で最もおすすめなのが、バックヤードのエレベーターホールです。

商業施設や病院などは、客用と従業用のエレベーターが別々に設けられています。

客用のエレベーターホールは仕上げが多いため幹線ルートには向きませんが、従業員用のエレベーターホールは仕上げや設備工事が少ないので幹線ルートに最適です。

部分的にダメを残すことも容易なので、仮設電気の有無を気にせずに仕上げ工事を進めることができます。

エレベーターホールに幹線ケーブルの貫通箇所を設ける場合は、エレベーターの三方枠が取り付く面の壁面は施工できるかだけ確認して、部屋の入隅の角に立ちあげるとよいでしょう。

階段室付近の廊下

エレベーターホールがない建物では、階段室付近の廊下もおすすめです。

エレベーターホールと同じように、客用・従業員用などの区分けがあるのであれば、仕上げの少ないエリアにある階段室がよいでしょう。。

建物の廊下は設備工事のメインルートになっている場合が多いですが、階段室の脇まで設備が集約していることは稀です。

心配なら設備業者にヒアリングして、メインルートでないか確認してもいいでしょう。

まとめ

仮設電気の幹線ルートについて紹介しました。

幹線ルートを適当に考えていると、見えないところで設備工事の工程が滞って、仕上げ工事が進まないという事態がおこります。

シャフト周りや仕上げの多い部屋の工事を進めたいのに、設備が終わっていないために次工程に進めません。

仮設電気の幹線ルートを検討する場合は、設備工事の邪魔をしないルートを選定してあげましょう。


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