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7月16日~7月22日 AMBITIOUS JAPAN+時給1500円

「若者よ、大志を抱け。時給1500円で」

遂にクライアントからOKをもらい、東京初進出のクラーク寿司の求人広告のキャッチコピーが決まった。

20××年、空前の第4次寿司ブームが起こっている。値上げラッシュが落ち着き、経済もコロナショック以前の状態まで回復し、各家庭の収入も上がり、可処分所得も増加した。そんな情勢から、以前は一般家庭での外食寿司と言えば一皿100円の回転寿司だったのだが、いつの間にか値段が手ごろな回らない寿司が世間のスタンダードになっていた。そこで、今回東京初進出を狙うのが、北海道発のクラーク寿司。最近飛ぶ鳥落とす勢いで大人気だ。お客様のアンケートやSNSからの評判、そこに加えて最近のトレンドなどあらゆるデータを分析し日々進化する、寿司AI「Hey,OMACHI」を開発。それにはあらゆる寿司職人の知識や技術もインストールされている。それを搭載したロボットが寿司を握るため、一流寿司店の味を越えた人間では想像もできない寿司が堪能できる。さらには、メニュー開発やマーケティングもAIが行う。そのため、”日々進化する異次元の寿司を、最良な状態で、手頃な最適価格で”提供することを可能にした。だが、接客に関してはお客様とのコミュニケーションを大切にするため人が行っている。アルバイトがほとんどなのだが、現場に出るまではきっちりおもてなしのプロである社員が研修を行っているので、サービスの質は一流店にも負けないくらい高い。合格するまでホールに立てないという徹底ぶり。求められる仕事内容の質を考えると、時給1500円は納得だ。

「それにしても、このキャッチコピーが採用されるとはな。」

一仕事終えたコピーライターKは、自宅のリビングでぼそっとホンネをつぶやいた。”若者”と限定してしている点を考えると第3候補ぐらいの案だった。しかし、東京進出を任されたクラーク寿司のエリアマネージャーは、コンプライアンスを無視した見事なまでのルッキズム主義者だった。”中高年の不細工とは働きたくない”という彼の意見で、冒頭の案が採用された。

本当にこの職業は、正解が未だにわからない。最終的にはクライアントの好みになるので、100案、200案、時には1000案、アイデアを考えることもある。

「開拓しよう、あなたのホスピタリティ。」
マジメ系なものから

「時給1500円!賄いは美味しい北の美味!」
事実系訴求、

「AIと働く、愛ある仕事。」
ことば遊びまで。

力の限り、ありとあらゆるアイデアを頭からひねり出す。2時間ぐらいで100案思いつくこともあれば、3日かかっても10案しか出ないこともある。しかし、その分クライアントに採用されたときは並々ならぬ嬉しさを感じることができる。だから、クリエイティブはやめられない。

そんな感慨にふけっていたとき、ふとKは考えた。

「今回、残業入れて毎日10時時間近く働いたよな。休日出勤もあったから今月は27日間出勤した、時間で換算すると合計270時間。そして、今月の給与が23万円。

ということは、

270000円÷270時間=1000円/時間

時給1000円、バイトに負けてる・・・」

やりがいと給与について考え揺れるK。その晩は、youtubeで格闘家の試合解説動画をひたすら見まくるという究極のソロ充を満喫した。

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