8月6日~8月12日 野獣の日+世界猫の日
世界野獣トーナメントも残るはあと1試合のみ。こんな組み合わせになると誰が予想できたろうか。
「プーさんVS猫」
かわいいやつほど恐ろしいというが、まさかここまでとは。
このトーナメントは8月10日、野獣の日に多摩動物公園の地下闘技場で開催されている。観客は獣のみ。頑丈なライオンのセキュリティーで人間は完全に閉め出されている。多摩動物公園に多くのライオンが飼育されているのはこの日のためだ。そのため、HPを見ても多くのライオンが飼育されている理由も明記されていないし、見どころでもライオンのことには一切触れられていない。
一般的には人間が地上の王みたいな顔をしているが、事実はこのトーナメントで優勝者した種族が世界を回している。人間なんてただのコマの一つに過ぎない。
くまのプーさん、正式名称はイエローバーサーカー。この名前は熊の中でも一部のエリートとしか名乗れない。その中の最強がトーナメントに参加するしきたりになっている。人間界ではかわいいキャラを演じているが、人の目がない場所では100%野生を開放し最強の熊の戦士集団として君臨している。彼らは強さを求めすぎたせいで、争いが絶えず今は世界に6頭しかいない。だから、この日以外の争いはご法度だ。っそして、過去の戒めから、”かわいい”を学び、”寛容”の心を身につけるため、彼らは世界中のディズニーランドに送り込まれた。“プーさんのハニーハント”、あの修行場は、彼らが流してきた黄色い血の歴史でできている。
猫、世界のかわいい動物代表といっても過言ではないだろう。彼らが世界を牛耳っている。そう聞かされても疑問に思う人は少ないのではないだろうか。それは間違ってはいない。ここ500年はずっと彼らが野獣の王なのだから。プーさんと同じ、かわいい顔しているがやっていることはえげつない。その愛くるしい容姿で、懐に潜り込み、人間の生活を監視している。あなたが寝ている間、猫達は何をしているか。それは人間の脳の研究である。人間の脳の進化は奇跡だ。他の種族も、その奇跡の謎を解き明かそうと必死なのだ。その最先端を行くのが猫族である。そして、研究と同時に行っているのが洗脳だ。遡ること、1600年の関ヶ原の戦い、1789年のフランス革命、1861年の南北戦争、大きな戦争の歴史と皆の頭に刻まれている史実。あれは、すべて猫と人類の争いの歴史である。そのような猫族との争いの記憶を改ざんすることで、猫に対して二度歯向かわないように我々はプログラミングされている。
でも、人間の脳の研究は強さとは全く関係ない。それでは、彼らの強さの秘密は何なのか。それは“6秒の奇跡”にある。彼らはこの必殺技により、マッハのスピードで6秒だけ動くことができる。”6秒の奇跡”は猫のしなやかな骨と彼らの筋肉の半分以上を占める瞬発力に必要な白筋を全開放して、ポテンシャルを最大限引き出すことによって生み出される。まさに、文字通り奇跡としか例えようがない。マッハのスピードで繰り出される攻撃はたとえウエイトが軽くても、一撃で相手の心臓をもぎ取ることが可能である。しかし、この技は、身体にかかる負担が大きすぎるため50年寿命を縮めてしまう。だから、戦士に選ばれる猫はこの日で命を全うする。残酷だが仕方がない。猫族繁栄のためだ。
「カーン」
試合のゴングが鳴ったそのとき、
「ビシャーン!!!!!!!!」
雷鳴が鳴り響いた。
会場中がざわついた同時に、一人の少女が闘技場に現れる。彼女は猫の戦士の飼い主であった。殺気が全くなかったので、ライオンセキュリティーをかいくぐれてきてしまったのだ。
「ご主人…」
彼は、一瞬だけ“6秒の奇跡”の発動をためらってしまった。
“生きたい”と願ってしまった。
その結果、プーさんが繰り出す乱撃と相打ち、激しく倒れ込む二人。そして、泣き崩れる彼女に抱きかかえられた戦士が言った。
「最後に、あなたに会えてよかった。」
最愛の人には決して伝わることのない猫語で、最後に振り絞って喉を震わせた。
「ありがとう。」
少女のその一言を聞いた後、安らかな笑顔で戦士は旅立っていった。
困ったのは次の王座だ。仕方なく、評議会は熊と猫で決着がつかなかったので、熊+猫=熊猫、つまりパンダに暫定王座を与えた。
その戴冠式を見ていた少女がポツリとつぶやく。
「パンダかわいい。次はあの子がいい。」
全種族が彼女のほうを見た。人類の変わり身の速さと無邪気さに驚嘆すると同時に、いっそう彼らの人間に対する警戒心は強まった。