強き者、それは〜私の古希日記〜
二十九歳のとき大病をした。六十九歳のときガンを発症した。最初の大病のときは「短い人生だったな」と悔しい思いがした。しかし古希一歩手前でのことは「なるようになるさ」と開き直った。
七十年生きてくると、世の中に起きる大概のことは体験、あるいは見聞きしているという気になっている。だから驚くことは稀だ。唯一、驚く、いや恐るのは地震だ。こればっかりは経験、体験が生きそうもない。ちょっとの揺れでもオロオロするばかり。
歳をとると丸くなるというのは嘘。丸くなるのではなく、気力が失せるのだ。だから気力に満ち溢れている老人は過激だ。
「年寄りほど過激なんだよ」と、東大名誉教授のI先生が言っていた。怖いものがなくなるのだ。ただ一人の人を除いて。
それは女房に決まっている。女房は旦那の社会的地位など関係ない。ただのぐうたらなのである。