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猛勇狼士達が挑む世界② vsイタリア編

  夏のテストマッチシリーズもいよいよ大詰め。5戦目のイタリア戦を迎えます。今回はイタリア代表についてフォーカスして見どころをまとめていきたいと思います🇮🇹


イタリア代表を知るための3つのエレメント

①イタリア国歌 マメーリの賛歌

 イタリア代表を理解する上でまず第一に知っておくべきことは彼らがどのような覚悟でイタリアを代表して戦うか、ということだと思います。イタリア国歌であるマメーリの賛歌の歌詞とそれを歌う選手達の姿がそれを端的に表していると思います。どの選手も全力で歌唱するのでぜひ見てほしいポイントです🔥

Fratelli d'Italia,
イタリアの兄弟よ
l'Italia s'è desta,
イタリアは目覚めた
dell'elmo di Scipio
スキピオの兜を
s'è cinta la testa.
その頭上に被りて
Dov'è la Vittoria?
勝利の女神ヴィットーリアは何処に?
Le porga la chioma,
その御髪を捧げん
ché schiava di Roma Iddio la creò.
ローマの婢として

Stringiamci a coorte,
皆の者、隊列を組め
siam pronti alla morte.
死の覚悟は出来ているぞ
Siam pronti alla morte,
死の覚悟は出来ているぞ
l'Italia chiamò.
イタリアが呼んでいる
Stringiamci a coorte,
皆の者、隊列を組め
siam pronti alla morte.
死の覚悟は出来ているぞ
Siam pronti alla morte,
死の覚悟は出来ているぞ
l'Italia chiamò! Si!
イタリアが呼んでいる!Si!

 イタリア国歌 マメーリの賛歌(Inno di Mameli)

②カルチョとラグビー、2つのアッズーリの光と陰

 マメーリの賛歌を歌うイタリア代表の姿はそれだけで勇気づけられますが、覚悟があれば結果が出るほど甘くないのがプロの世界です。続いて現在のイタリア代表を理解するために少し前のイタリア代表の話をしたいと思います。

 イタリア代表は、イタリア王国を建国したサヴォイア家の紋章の色である青(Azzurro)を基調としたユニフォームを纏うためアッズーリ(Azzurri)と呼ばれます。日本ではアッズーリと言えばサッカーイタリア代表のことを指すと思う人も多いと思います。3年ほど前、カルチョ(イタリア語でサッカーの意)とラグビー、2つのアッズーリは対照的な状況にありました。

 まずカルチョ側、サッカーイタリア代表は2006年のサッカーW杯ドイツ大会での優勝の後、2012年欧州選手権で決勝進出した以降は国際舞台で結果が出せず、2018年にはW杯に出場すら出来ないという困難な状況に陥ります。その後就任したロベルト・マンチーニ監督体制下では若い才能とベテラン達の経験やスキルが融合し、強いアッズーリが復活。37戦連続無敗の世界記録を樹立し、2021年に開催された欧州選手権では53年ぶりに優勝、欧州王者に輝きました。カルチョが単なるスポーツを遥かに超える意味を持つこの国において、誰しもが待ち望んだ強いアッズーリの姿がそこにはありました。


 一方、ラグビーイタリア代表は誰も見向きもしない、と言ったら言い過ぎかもしれませんが、少なくともサッカーイタリア代表を中心としたカルチョの熱狂からはかやの外にあったと言えます。
 ラグビーイタリア代表の強さは他のティア1強豪国とは大きく水をあけられていて、シックスネーションズでの連敗記録は36まで積み重なるなど、サッカーのアッズーリの栄光と比較すると、もはや青いジャージを着るに値しない集団に成り下がっていました。

 そんな状況が変わり始める転機になった試合が2022年3月19日、ウェールズのカーディフで行われたシックスネーションズ最終節の試合です。
 ウェールズは2021年のシックスネーションズの王者であり、この試合は同国のレジェンドであるアラン=ウィン・ジョーンズの150CAP、ダン・ビガーの100CAP獲得という記念すべき試合で、かつホームスタジアムということもあり、満員のウェールズファンの中で行われました。誰しもがウェールズが勝利すると信じていました。

 しかし若き主将ミケーレ・ラマロを中心に結束したイタリアを相手にウェールズは大苦戦を強いられ、試合最終盤のラストプレーでカプオッツォ選手の見事なランで大幅にゲインし、フリーでラストパスを受けたパドヴァーニ選手がトライして1点差に詰め寄ると、試合終了のホーンが鳴った後にパオロ・ガルビジ選手が蹴ったコンバージョンが見事に成功し22-21で勝利。シックスネーションズでは実に37戦ぶりの勝利を掴みました。

 実はこの試合の前にラマロ主将が発したメッセージが以下の動画になります。(ESC Academy(@esc_academy_)さんのXより引用。元の動画はRugbypass)

 これは個人的な推測ですが、ラマロ主将の胸中にはサッカーイタリア代表のようにラグビーイタリア代表もアッズーリとして尊敬を得られる存在になりたい、という強い思いがあったと思います。
 このウェールズ戦の勝利は、当時のキアラン・クローリーHC(現三重ホンダヒートHC)が築いた戦術にイタリア代表選手の強い気持ちが相まって手繰り寄せた歴史的な勝利だったと言えます。

③クローリーHCからケサダHCへの継承、さらに進化するアッズーリのラグビー

 ウェールズでの勝利の後、2022年秋に行われたフィレンツェでのワラビーズ戦にも勝利したイタリア代表は、翌2023年のシックスネーションズでは全敗だったものの前年王者のフランスに肉薄するなど、ティア1上位国相手でも十分に渡り合える力を持つダークホース的存在となって2023W杯へ突入していきます。

 結果的にW杯は2勝2敗でGS敗退となりましたが、キアラン・クローリーHCが築いたオープンスペースへの速攻を軸とした魅力的なATは、多くのファンにイタリアが強くなったことを印象づけました。

 そしてクローリーHCが築いたものを現在のゴンサロ・ケサダHCは非常にうまく継承したと言えます。

 以前はダイナミックにボールをスペースに展開して仕掛けるATが魅力のアッズーリでしたが、フィジカルバトルで差し込まれたり、強力なDFに包囲されると機能不全に陥る場面が多く見受けられました。
 ケサダ新HC体制ではセットピースやFWのフィジカルバトルが非常に強くなっていて、チームとしてのインテンシティがレベルアップしています。またそれによりクローリーHC体制で磨いてきたATの精度も向上。
 2024年のシックスネーションズではスコットランドとウェールズを撃破し、フランスを後一歩まで追い詰める形でのドロー、ついに万年最下位を脱出し5位で大会を終えました。
 その中心にいた選手もやはりミケーレ・ラマロ主将でした。このハードワーカーは5試合で103回のタックル回数を誇り、シックスネーションズの新記録を樹立しました。言葉だけでなく、誰よりも最前線で体を張ってプレーでチームを牽引する姿はリーチ・マイケル主将に似ている気がします。

猛勇狼士が対峙する主な選手・個人的見どころ

 前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ21日の試合の見どころを書いていきたいと思います。

日本代表にとってのこの試合の位置付け

 エディーHC体制になってからJAPAN XVの試合も含めて1勝3敗という戦績ですが、個人的には試合ごとにチームとしてのパフォーマンスは向上しているような気がします。テストマッチなので当然勝利が求められますが、同時に今は中長期的なチームビルディングが必要でもある今の状況から考えると、イタリア代表戦は「どちらのスピードラグビーが上か?」が一つのテーマかな、と考えています。
 エディーHCは常々、世界のラグビーの潮流はパワーラグビーからスピードラグビーへ移行していくと発言していて、日本代表が目指す超速ラグビーもまさにこの文脈に沿っているものです。イタリア代表もクローリーHCの頃からスピードを持って相手を制するラグビーを磨いてきており、現在世界ランキング8位(2024/7/15現在)までランクを上げてきています。現時点ではイタリア代表が上回っていると思いますが、このスピードラグビーのぶつかり合い、ダイナミックにボールが動かせるオープンな試合展開になれば勝機があると思いますし、とても面白い試合になると予想しています😊
 強敵ですが、夏のテストマッチシリーズを勝利で終えたいですね🔥

試合出場メンバー

 まずはイタリア代表の出場選手です。

 続いて日本代表の出場メンバーはこちらです。ブレイブルーパスからは原田選手、ワーナー・ディアンズ選手、リーチ・マイケル選手(主将)、ジョネ・ナイカブラ選手の4人が先発出場となります🐺

ポジション別の見どころ① フッカー(HO)

 原田選手の対面となる相手HOはジャコモ・ニコテラ選手、控えにはジャンマルコ・ルケージ選手がメンバー入りしています。ニコテラ選手は28歳でイタリア代表FWの中核を担う選手の1人です。またルケージ選手は原田選手の1歳下の23歳、これからのイタリア代表を担っていく世代です。
 2人ともセットピースの強さがあり、イタリア代表の屋台骨を支える選手なので、原田選手がこの2人を上回るパフォーマンスを出してくれると日本代表が優位に戦えると思います🔥

ポジション別の見どころ② ロック(LO)

 続いてワーナー・ディアンズ選手が出場するLOのポジションです。イタリアはニコロ・カノーネ選手アンドレア・ザンボニン選手が出場します。カノーネ選手は弟のNo.8ロレンツォ・カノーネ選手同様、運動量豊富なハードワーカーであることが魅力だと思います。ザンボニン選手はあまり知らないのですが、身長202cmとディアンズ選手と同じくらいの高さがあるので、空中戦の攻防が楽しみです。

ポジション別の見どころ③ フランカー(FL)

 我らがリーチ・マイケル主将は今回オープンサイド・フランカー(7番)で出場します。これは下川選手の出場停止の影響と思いますが、これによりイタリア代表主将ミケーレ・ラマロの対面対決になります🔥
 両主将のパフォーマンスが勝負の行方を左右すると思いますので、この対決が今回の試合で最注目ポイントだと思います👀
 そのほかのバックローにはロス・ヴェンセント選手、ロレンツォ・カノーネ選手がメンバー入りしました。みな良い選手ですがラマロ主将が26歳、ヴィンセント選手が22歳、ロレンツォ・カノーネ選手が23歳と若いことも特徴です。

ポジション別の見どころ④ ウイング(WTB)

 ジョネ・ナイカブラ選手の対面には今回、ヤコポ・トゥルッラ選手が入りました。本来このポジションには独特のステップ・ランが魅力のモンティ・イオアネ選手がいるのですが、負傷により欠場とのこと。トゥルッラ選手はプレーを見たことがないので、私には未知数です。。
 バックスリーの戦いとしては14番WTBにはワラビーズのレジェンド、マイケル・ライナー選手の息子であるルイス・ライナー選手、FBにはアンジェ・カプオッツォ選手が入りました。ライナー選手は思い切りの良いプレーやランが魅力ですし、カプオッツォ選手ももちろん素晴らしいランを持つ選手で、スピードに乗らせると止めるのは容易ではないです。
 逆にいうと日本代表としてはいざという時はジョネ選手のスピードによるDFにも期待するところが大きいと思います。

 また先述の通り、カルチョがスポーツ以上の意味を持つイタリアで育った選手たちなので、ほとんどがサッカーのプレー経験があります。そのため全員が一定以上のキックスキルを持っているので、ジョネ選手らバックラインのキック処理も試合を左右する要素になると思います。

その他の見どころ

 その他の注目選手ではセットピースが強いPR1ダニーロ・フィケッティ選手、チーム最年長で目立たないけどいい仕事をしまくるいぶし銀の13番CTBファン・イグナシオ・ブレックス選手、その相棒の12番CTBメノンチェッロ選手、ハーフ団のSHパジェレロ選手、SOパオロ・ガルビジ選手も連携が良いので要注意ですね。

 また選手ではないですが、女性ファンにぜひ注目してもらいたいのが、主審を務めるクリストフ・リドリー審判(イングランド)です😊
 レフェリングも安定していて良いと思いますし、今回のように来日することは珍しいので、現地に行かれる方はぜひ目に焼き付けておいて欲しい審判です笑

まとめ

 あっという間に夏のテストマッチシリーズ最終戦となりましたが、ここからPNC、ANSと続いていくので、ぜひいい戦いをして次に繋げてくれることを祈ります。応援がんばりましょう!!

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