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チ。ー地球の大きさについてー
硬貨を捧げれば、パンを得られる。
税を捧げれば、権利を得られる。
労働を捧げれば、報酬を得られる。
なら一体 何を 捧げれば、
この世の すべてを 知れる___?地球の 大きさを 知れる___?
はじめに
本記事はゆる言語学ラジオ非公式 Advent Calendar 2023の13日目の記事です
昨日の記事はShizukiさんの『なんじゃそりゃ アイルランドの民話たち』でした。明日はhirari hiraguriさんの『推しを推してたら人生がゴロゴロ転がった話』です。
ゆる科学部について
ゆる言語学ラジオサポーターコミュニティ内で科学好きが集まった
「ゆるく楽しく科学を学んで遊ぶ」がコンセプトのサークル?です
教科書では見たことがあるけど、実際にはやったことないあの実験をやってみよう
いつも使ってる機械だけど、仕組みは知らないアレを作ってみよう(分解してみよう)
みたいなアイデアを持ち寄って実験などの企画が進行中です
企画の概要
コンセプト
今回の企画はアドベントカレンダーの募集を見て突発的になんかやろう!という感じでスタートしました。ゆる科学部なのでなにかしら科学の実験をしてその面白さを皆さんにお届けしたいわけですが、応募時点で締め切りまでおよそ二週間しか猶予がありません。物理的に距離が離れているメンバーもいるのでみんなで集まって実験をするのはおそらく難しいでしょう
スタート時点でとほまちの予感…いったいどうなってしまうんでしょうか…
目標
遠くて集まれないならどうするか?
そこで我々が考えたテーマがこちら!
「地球の大きさを測る」
そう、離れているならそれを活かしてスケールがデカい実験をやってしまえばいいんですよ
方法
古代ギリシアの数学者・天文学者のエラトステネスは、北回帰線にほど近いエジプトのシエネでは夏至のころ太陽光が真上から降り注ぎ、地面に垂直に立てた棒に影ができないということを知りました。一方、それより遥か北の地中海沿岸のアレクサンドリアでは太陽はある長さで棒の影をつくります
![](https://assets.st-note.com/img/1702206419380-GPsEXNJJOw.png?width=1200)
この棒と太陽光のなす角は図のように、2都市が地球の中心角で何度離れているかと等しくなります(太陽光の線を伸ばすと対頂角と錯角が等しいことから簡単に分かります)
![](https://assets.st-note.com/img/1702094616958-9cCKTtHm5o.jpg?width=1200)
ここで2都市間の距離はおよそ925kmと既知であるので、地球の円周Cは
$$
C=925 × \dfrac{360}{7.2} \\
=46,250 km
$$
で求めることができます
これなら再現できそうですね
(2点間の距離は歩いて測る時間がないので……Google先生に聞きます)
でもこれから来るの冬至じゃない?
まあそれはよく分かんないけどたぶん同じ時刻に太陽の位置を測定すれば、地球の円周は求められそうな気がします。知らんけど
というわけで最終的に各自が測定するのは以下のふたつの項目です
最終的にはそれぞれの測定結果を持ち寄って地球の円周の長さを算出します
同じ日同じ時刻(正午)の太陽の位置(真南からの偏角と水平方向からの仰角)
良い感じに計算すれば地球の円周が求められるはず
同じ日の南中時刻と仰角(オプション)
自転した角度から地球の円周が求められるはず
実験パート
①各自の製作・実験結果
各自の思索や製作、測定の過程はかなり盛りだくさんなのでここにはダイジェスト版のみを載せることとし、詳細はそれぞれ別の記事に掲載することとしました。ぜひリンク先も見てみてください
最終的な結果を早く見たいという方はこちらまでジャンプ
hi-cheese
出来るだけシンプルで、簡単に誰でも(現代人でも古代人でも)出来るような測定を目指しました。
細長い筒状の棒を、角度を調節出来る台に載せただけです。
下側の穴に手を当てて光を目視する事で、筒が太陽に完全に向いてるかを判断します。
![](https://assets.st-note.com/img/1702369464718-roOuY5EaQI.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1702369486848-O02SVBNhYo.jpg?width=1200)
詳細はこちら!
れいばひろう
太陽を直接測る事は出来ないので、影の力で太陽の高度と方位を求めます。方角を知る手段についても、調査検討の結果、創意工夫でどうにかできそうです。
![](https://assets.st-note.com/img/1702251377812-mDXBTCqRsO.jpg)
![](https://assets.st-note.com/img/1702255865533-e66L1XCfMO.jpg)
詳しくはこちらをご覧下さい。
Show
わたしはこちらの六分儀を使って測定していきたいと思います
![](https://assets.st-note.com/img/1702309532210-pSH2CjcVXN.png?width=1200)
Maroon
測定原理及び測定器
角度の直接測定で問題となるのは目盛の読みである.より正確な角度を測定するためにFig. 1 に示すような器具を考えた.本測定器具は水平面に固定する鏡と上下方向に開閉する可動鏡,トレーシングペーパー,スリットからなる.また,Fig.2に製作した測定器を示す.
![](https://assets.st-note.com/img/1702303797677-FgxpW384M6.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1702303805107-Km9VF79fb9.jpg?width=1200)
本測定器で得られた結果より計算した南中時刻,正午の方位角と仰角の結果をTable 2.に示す.
![](https://assets.st-note.com/img/1702303797666-VCsygG33vB.png?width=1200)
詳細は以下のリンクをご参照ください.
②地球の大きさを求める
これらの実験結果からエラトステネス先生と同じように計算します
![](https://assets.st-note.com/img/1702203588072-CDAGfLDeb3.png?width=1200)
てんでバラバラの結果ですが果たして…!
考察
現在知られている地球の円周は 40,075km(赤道上)です
エラトステネスが紀元前200年ごろに求めた地球の円周が 46,250km
今回我々が求めた地球の円周がもっとも近いもので 55,080km
惨敗です
もちろん負の値ではありません
原因のおそらく単純に角度の測定の精度が足りなかったことだと思います
たとえば2点の距離が400km東西に離れているとき、太陽の方位の差はおよそ4度になるはずですが、これが1度ズレてしまうと約10,000kmの誤差が出ることになってしまいます
![](https://assets.st-note.com/img/1702205102962-abmYfH10F3.png?width=1200)
その点おそらく方位よりも仰角の方が精度よく測ることが可能?なので緯度の差を使った方が精度が出る気がします。やっぱり古代の偉い人はかしこいですね
あとはできるだけ離れた2点間で測定を行うことも重要です。今回はおもに関東と関西の2拠点で測定を行ったため、経度差での測定しかできなかった&距離が400kmしか稼げませんでした。したがってさらに精度を高めるために今我々に必要なのは東北や北海道、沖縄に住んでいる部員です(部員募集中)
感想
hi-cheese
自分で考えた方法をもとに実際に測定するのは面白かったですねー。特に自分の測定結果から地球の円周が13万km(超デカイ!)と導かれた時が1番面白かったです!
れいばひろう
企画の概要にも少し記述がありますが、実を言うと、この企画をみんなで考えたときは「なんか古代人は太陽高度の差から地球の大きさを計算したらしいぞ」というぼんやりとした知識からスタートしており、「とにかくいろんな場所の同時刻の太陽の位置を測定しまくれば上手いこと計算で地球の大きさが求まるんじゃないか」というざっくりとした目算だけを立てて各自の実験を開始しています。
結果として、実験データが集まった時点で「あれ?ひょっとして、測定地点の南北の距離の差、小さすぎない?」「東西の距離ならそこそこ取れるから太陽の方位の差を使って計算しよう!うわ!なんか数字でっか!」「…あれ?東西の距離から計算すると、地球を同一緯度で輪切りにした断面の円の円周を求めたことにならない?」「…てことは、cos(北緯)で割れば良さそうだから…え?なんか数字もっとでっかくなるけど!?」となり、後述している計算ミスとデータ不足が発覚することになります。
Wikipediaによると、昔ギリシャのエラトステネスは、シエネでは夏至の日に陽光が井戸の底まで届くこと、つまり南中高度が 90°となる(北回帰線上に位置する)ことを図書館で学んだことで、地球の大きさを計算できることに気付いたそうです。当然ながら、後の計算に必要であることが解っていたからこそ、エラトステネスはアレキサンドリアの夏至の日の太陽の高度を測ったわけです。その後のことなんて何も考えずに実験をすることにテンションが上がってしまった我々は、プロジェクトの進むべき道筋を示す羅針盤を持たずに動き始めてしまった様なものです。太陽の方角を測ろうとしているにもかかわらずです。そりゃあ「とほまち」もするでしょう。つまり、我々がエラトステネスに負けた最大の敗因は「無計画」でした。でも、いいじゃないですか。各自の実験パートを見ると、太陽の方位や高度を求めるためにおのおの楽しみながら工夫を凝らしている様が伝わってきます。私も指南魚を作るのが楽しすぎてムダに5号機まで作ってしまいました(初号機は完全に沈没)。楽しみながら手を動かすことからしか見えないこともあるんですよ!いや、もう、無計画最高!
Show
私がアドベントカレンダー企画を知ったのが11/22の昼、きっと連休中には枠埋まっちゃうなーと急遽声をかけたその日の23時には参加することと企画の概要が決まっていました。フッ軽なメンバーに感謝!とても楽しかったです(実はこの後盛大にオチが付いて結果はさんざんなのですがw)
個人的にはひとりだけ現代文明を使ってズルしたのに結果がいまいちだったのは遺憾です
special thanks:実は本当の言い出しっぺmint88さん
Maroon
今回,普段はあまり気にも留めない太陽の動きを測定することとなった.1日のみの測定であったが,5~10分間隔であっても思った以上に方位角,仰角の変化が見られ,実際に自分で手を動かして観測するという面白さと感動を思い出すことが出来た.また,仰角測定の分解能を上げるために,なんとか一癖加えたいと方策を考え(私が調べた限りは)前例がない手法を実現した.こういった工作は長らくやってこなかったが,童心に返って(しかもお小遣いを気にせずに!)科学とものづくりを満喫するきっかけになったのもゆる科学部に参加していたからこそである.最初は躊躇したものの,Advent calenderの企画の立ち上げとメインの進行を担当されたShowさんをはじめ,参加いただいたメンバー各位に感謝申し上げます.
明石焼きの熱さを噛み締めながら
![](https://assets.st-note.com/img/1702303896228-LGcCCv98w4.jpg?width=1200)
ゆる科学部の今後の活動
ゆる科学部ではこんな感じで科学の実験などをどんどんやっていく予定です。一緒に活動してくれる方はどなたでも気軽に参加していただきたいですし、野次馬の方も大歓迎です
現在は主にゆる言ゆるコンのサポーターコミュニティ内で活動していますが、ゆるサポーターの方はどなたでも参加OKの想定です。コメントなどからご相談ください
補足と訂正
公開日を直前に控えた12月12日、れいばひろうさんが重大な点に気が付きます「今回我々が測ったのって俺たちがいる地点を水平に切ったときの円周じゃね?」と(図を参照のこと)
![](https://assets.st-note.com/img/1702353166216-thkQPtg7Ht.png?width=1200)
グレーの円:本来求めたかった、赤道上での地球の円周L(=地球の円周)
そして気づきます「北緯が分かれば補正できそうだけど、今回の測定項目で自分がいる地点の北緯って計算して求められるんだっけ?」と…
測定日が夏至や冬至であれば南中高度から以下の式で自分がいる地点の北緯を求めることができますが、それ以外の日では太陽の視赤緯という数値が必要になります。つまり太陽の継続的な観測と記録が必要ということです。
$$
北緯=90 - 南中高度 - 23.4 (@冬至)
$$
やはり計画時点でのとほまちの予感は間違っていなかったみたいですね……
![](https://assets.st-note.com/img/1702308232641-DTsQxpmzze.png?width=1200)
ちなみにGoogle先生に教えてもらった北緯をもとに補正の計算をしてみると、当然ですがさらに途方もなく巨大な数値になってしまいました(最初の計算の時点で実際の地球の円周をオーバーしていたのをさらに青→グレーになるように係数をかけて補正するので)
期間約2週間にしてはまあ悪くない結果を出している人もいたのではないでしょうか(オーダー合ってるし)
補足の補足
今回、実測した太陽の方位から地球の周長を求めた際、具体的にどのような計算をしたのか、また、精度を上げれば本当に地球の周長は計算できたのか、等の話を以下の記事にまとめました。こちらの記事もよろしければご覧いただければと思います(れいばひろう)。
参考
変更履歴
2023/12/12 初版
2023/12/13 補足の補足を追加
2023/12/13 タイトルが間違ってました
誤:地球の大きさついて
正:地球の大きさについて