誰がどうであれ

　関係ない。思いやりのない弊社にムカついてたまらなかったけど、弊社はそういう人間の集まりであるから、期待するのはとっくにやめた、つもりだった。
　けれど、周りの人間の思いやりのなさには一向に慣れなかった。あまりにも考えナシの人の群れの中で自分だけが違う、異端であることは、やっぱり心に大きな負担をかけていたのだろう。「おまえらがおかしい」と「私がおかしい」を行ったり来たり。それでも、うつ病の再発にまで至らなかったのは幸いであった。仕事そのものはキライではなかったから生きていられた。

　元々人間関係を築くことは本当に苦手だった。中学生くらいからずっと。初めは自分に自信がなかったから、元弊社に入ってからは他人への不信感から、現弊社に異動になってからはその両方が襲ってきてとても苦しかった。
　弊社で年に一度行われるクソイベントが終わり、少し気が抜けたのか、現弊社の人たちをフラットな目線で眺めることができた。元弊社の人間どもとは違う。むしろ自分の側に近い人たちなのではないかとわかり、ここに来て信頼度が上昇、安心感へと繋がってホッとしている。この人たちがいるのであれば、すぐに辞める必要もないかという気になっている。
　私は元弊社では一人で戦っていたけれど、現弊社では一人で頑張る必要はない、むしろ同じような立場の仲間と協力しながらやっていく、そういう風な立ち回りを求められるのだろうと理解した。
　元弊社ではなかった配慮を、現弊社の人たちはしてくれるし、考え方が自然と自分に似ていて、元弊社でいかに無理をして相手に合わせていたかがわかった。それを大したストレスじゃないと思っていたけど、十分にストレスであった。そもそも、元弊社では私と同じ立場の人がいなかったことが大問題なのである。素直に心情を吐露できる相手が一人もいなかった。腹の底では信頼していないのだから、当たり前である。本当に信頼できるのは自分だけであった。
　仲間がいるのはいいなと思う。一人でどこまでも生きていけるような気がしていたけど、困ったときに素直に頼れる人が身近にいるのは心強い。元弊社での一年は本当に一人で頑張るしかない立場に追い込まれていた。
　ただ、仕事だからやっていた。思いやりもへったくれもないのだから、せめて「やりやすくするため」に、誰がどういう人間か、どうすればスムーズに動いてくれるか、全部計算ずくで会話をしていた。バカを支配下に置くのはある種爽快であったが、こんなことを毎日していたら疲れるよな。それに、本当のバカは思い通りには動かない。ヤツらは予想を超えてくる。その上一丁前にプライドだけはあるんだから、ますます意味がわからない。職場で仕事できない人間に価値なんてないんだよ。

　ついでにもうひとつ、グロテスクで仕方がないのは、弊社のさらに別の部署にいる勤続20年以上？とかのお局である。あそこに配属されたら即辞めるね。ババアへの気遣いも業務内容に含まれるなんて意味不明すぎる。どんな職場でも人との接触は免れないけれど、局が発生することで、下手すりゃ業務の遂行よりも局への気遣いが優先されるべき場面もあるのだから、これでは本末転倒である。
　あのさぁ、先に生まれて、先にその職場で働いてるんならさぁ、自分よりも年下の、後から入ってきた人の面倒を見るのなんて礼儀やマナーのレベルで当然のことじゃないのさ。何でこういう人間って常に自分が第一優先なんだろうか。完全なる老害よな。

　私が自分ではそうやってきたってだけの話だけど、他人と接する際に、「傷つけてしまったらどうしよう」という恐れが大前提として(無意識に)あって、自分が嫌われるのが怖いというよりも、下手なことを言って相手を傷つけてしまったり、イヤな思いを、たとえその場限り(のちに相手が忘れるようなささいなこと)であっても、させてしまうのは心苦しいという考えがあり、だからこそより一層他人の無遠慮さに腹が立つのだろうなと、昨日あたりにようやっとわかった。私からすれば、元弊社の人間どもは自分のことしか考えてない典型例であるから、万死に値する。
　だけどどうあっても、そういう風に「自分が自分が！」なんて生き方はできない。できないことに落ち込んだりもしたけれど、裏を返せばそれこそが自分の良さでもあるのだから、だったら自分と似たような集団の中で生きていった方が幸せだろうね。居場所を探すことを諦めるから不幸になる。

　自分が精神を患ったのは、心が弱かったからだと、つまり過去の自分が悪かったからだと信じて疑わず、元弊社にいたころの私は、そういう風に過去の自分を否定することでしか生きられなかった。
　今では、ただ自分の取り扱い方がわからなかっただけなんだろうと思う。感じ方は理屈で片付くものではない。訓練で多少どうにかなったとて、生来の感じ方が大きく変わることはない。そのように生まれついてしまった以上は、どうにもならない。気の持ちようで変わるものではない…と、わからなかったから、いつだって自分を受け入れられなかった。
　本当に理屈じゃなく苦手だから、人との関わりなんて。かといって、真の孤独を望んでいるわけではないという身勝手さ。信頼できるパートナーを見つけたい。これは昨年末からずっと言ってるのですが未達です。
　にしても環境の変化ってメンタルに負荷かかるもんなんだね〜めちゃくちゃ抑うつで具合悪かったわ。このタイミングで三連休はありがたい。好きなことして過ごすぞ。