
【学び】自民党の成り立ちをおさらい
9月12日告示、27日投開票の自民党総裁選。
保守派、一強、与党と言えば自民党のイメージが定着していると思います。
自民党の今のニュースは知っていても、その成り立ちや歴史についてはあまり知られていないと感じます。今回の記事では、政党やその方針の理解を深めることを目的としており、一強である自民党の成り立ちや歴史などをおさらいした後、連立政権を組む公明党や、安全保障と改憲について、触れていきます。
自民党について
自民党の正式名称は「自由民主党」。
結党は1955年のことになります。保守合同により自由民主党が結成されたと説明されるのは、保守派と革新派で分かれていた中で、保守派である自由党と民主党が一緒になって自民党が出来たためです。
結党当時は長く続かないという声もあった自民党は、現在70年近く続いており、更に言えば結党から38年間異例の長期政権を維持しました。1993年と2009年に2度の下野を経験しましたが、その後の第二次安倍内閣発足以降、自民党は常に与党であり続けています。
自民党の構造を一言で表すと「派閥連合体」(だった)かと思います。自民党の中には特定の人物や政策の元に集まった同士が形成する派閥というものが存在しており、党の中にある党、「党中党」とも呼ばれていました。
特に大きく影響力を持っていたのが三大派閥で、「清和会」「平成研」「宏池会」の3つです。清和会は岸派、平成研は佐藤派、宏池会は池田派の末裔の派閥でした。例えば安倍元総理大臣は清和会、岸田総理大臣は宏池会になります。
自民党と言えばの派閥には大きく4つの機能があり、以下になります。
「総裁選挙での候補者の擁立と支援」
「国政選挙の候補者の擁立と支援」
「政治資金の調達と提供」
「政府・国会・党のポストの配分」
この内、②と③については1994年の政治改革以降、次第にその役割が低下していき、現在の政治資金問題によって、派閥は一部を除き解散することになります。
選挙の構造上、1996年以前は中選挙区制(1つの区から2~6人選出)だったため、自民党は議席拡大を狙い、1つの区の中で複数の自民党員が同士討ちする結果になっていました。その際当選するには派閥の支援が必要不可欠でした。また、94年の政治改革によって政党助成金制度が導入され、資金の手網が党中心に移る前には、派閥が資金面での援助をしていました。
制度が変わる中で、派閥の機能は低下していき、無派閥議員が増加していく中での今回の派閥解散という流れになっています。
最後に自民党の特徴について僕が思うことは、「右派左派混合した多様な政党」であるということです。自民党は保守政党としてスタートし、現在も保守派ですが、派閥に見られるように考え方や政策は多岐に渡っています。
言ってしまえば「なんでもあり」の政党なのではないかと思います。1955年からほとんどずっと政権を担い続けているのは、そうした多様性も1つの要因であるかと考えます。
自公連立政権の公明党
現在、自民党は公明党と連立政権を組んでいます。この章では、公明党はいつから自民党と連立政権を組んでいて、そもそもいつ出来たのかについて書いていきます。
公明党が自民党と連立政権を形成し始めたのは、1999年からで、その後2009年の政権交代の後、第二次安倍内閣以降ずっと自公連立政権が維持されています。
公明党は単独で小選挙区を勝ち残ることは難しいため、比例区で公明党が票を集められるように自民党に協力して貰う。見返りとして、小選挙区においては自民党の候補者の応援に積極的に取り組むといった構造になっています。
公明党の結党は1964年。
当時、方針として掲げていたのは
「小選挙区粉砕」「国民生活の安定」
「自主外交の確立」「憲法改悪反対」。
特に重要視されたのは「国民生活の安定」だと考えられる。理由は、公明党はその支持基盤の状況を踏まえ大衆福祉に重点を置いていたからです。
公明党のほとんど唯一の支持母体は「創価学会」です。そのため公明党と創価学会は一体と見なされることが多いと思います。実際選挙では、創価学会の会員たちが公明党の議員を当選させるために、熱心に活動をします。
公明党の前身になっているのは、1954年に出来た創価学会の文化部で、その創価学会の前身は1930年に出来た「創価教育学会」。その創価教育学会を創立した「牧口常三郎」が日蓮正宗の信仰を持っていました。
創価学会の規模は1950年代に急速に拡大していきます。その頃日本は高度経済成長による大都市部への人口集中が起こっており、大都市に出てきたばかりで安定した生活が出来ない人達が大勢いました。創価学会は彼らに現世利益の実現を約束することで急拡大していきます。この点から、結党時の「国民生活の安定」という方針が、公明党の支持基盤を特に考慮したものであることが分かるかと思います。
安全保障について
最後に日米安全保障体制について。
これは日本の政治において今後更に重要になっていくと思います。
現在の日米安全保障条約(以下、安保条約)を簡潔にお伝えすると、
「日本は米軍に駐日を許可する、代わりに米軍は日本を含む極東の安全を守る」
というものです。
安保条約に対して日本人は2つの恐怖を感じており、それぞれアメリカに
「見捨てられる恐怖」と「巻き込まれる恐怖」です。
例えば、安全保障関連法成立による集団的自衛権行使容認は、前者の解消のためと言えます。アメリカに負担を押し付けてばかりだと契約の「対称性」が薄れ、日本をアメリカが見捨ててしまうかもしれないという論理です。一方で、民主党などは後者のアメリカの戦争に「巻き込まれる恐怖」を主張しています。
この安保条約を含む日本の自衛に関して、自民党が掲げる憲法改正の1つは、自衛隊の明記と自営の措置ヘの言及です。つまり日本が自衛隊を所有して自衛する権利を正式に憲法に入れるという話。
この自民党の主張のロジックとしては、安保条約の非対称性を解消して、日米両国の視点で対称的な契約になる必要があり、その上で日本は独立した政治を行える。例えば、在日米軍に関わる問題などにも突っ込んでいける。といったものがあります。
ただ、地政学的に見ると、アメリカにとって日本は非常に重要な位置にあるため、仮に非対称性が解消されなかったとしても戦略上見捨てる訳にはいかないだろう、という見方も出来ます。
ここで1つ落とし穴なのは、安保条約によって、アメリカが在日米軍や自国から送る軍で武力を行使するには、大統領の一存ではなく連邦議会の可決が必要。したがって議席配分や世論によって、日本が十分に守られない可能性もあります。
例えば、ウクライナ戦争では、ロシアとの直接戦闘を避けて武器や資源の支援にとどまっているように。
最後に個人的な主張としては、依存しない自衛力にフォーカスした方が良いのは間違いがない。巻き込まれるのを拒否しても、見捨てられる恐怖に勝てるくらいに。です。
以上、【学び】自民党の成り立ちをおさらい、でした。ありがとうございました!