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さくらももこさんのこと

10月12日 晴れ
季節外れの寒波が去って、やっとのことで秋がやってきた。
スウェットのパジャマは秋仕様のつもりだけど、朝は頼りない肌寒さで目が覚める。
私は、一年の中で秋がダントツで大好きなので、目が覚めた瞬間、身を包む空気の感じでその日が晴れなのか曇りなのかわかってしまう。

ー今日の目覚め予報は、最高の秋晴れ

今月は、ずっと楽しみにしていたイベントがたくさんあるので毎日うきうきと心がおどっている。おどる、ぽんぽこりん、だ‥
中でも一番待ちきれなかったのが、「さくらももこ展」
全国にある6ヶ所の美術館をゆっくり旅したまるちゃんやコジコジやももこさんは、東京に、秋と一緒にやってきた。
「さあ行っておいで」とさわやかな風に背中を押されるような、跳ねてしまいたいうれしさのままに、軽やかなステップで六本木へ。

会場は、ももこさんのまるくて可愛くて温かい文字と、絵でいっぱいだった。
「うわ〜っ」と声に出したくなるような、嬉しくてたまらない気持ちになった。

展示されるのは、まるちゃん、コジコジ、エッセイから伝説の新聞まで、ももこさんの生み出した名作が勢揃い。
そして、そんな仲間たちがひっそりと生まれた仕事部屋や、ももこさんの世界の旅の成果物(民芸品)たちも、この記念に表に出てきてくれていた。

日曜夕方6時、まるちゃんを毎週一生懸命に見ていた小学生の頃の自分の後ろ姿が
藤木くんや山根くん、たまちゃんや友蔵を見るたびにうっすらと蘇る気が何度もして、「この世界とちゃんと繋がっているんだなア」と嬉しくなった。


仲間たちの豊かな感情を、小さい私にも面白く伝えてくれたのは、背後に描かれた綿密な背景にもあったこと
みんなに「あちゃ〜」な一面があって、みんなに優しい心があること
少し大人になった私があたらしく見つけられた小さな輝きが、ももこさんの両手いっぱいに包まれていることを知った。

さくらももこの世界の全部を、めいいっぱい堪能しつくした私のこころは、
橙色のぽわんとした、温かくて強い光で一斉に照らされている。

ももこさんのいる世界は、涙が出るほど優しくて楽しくて、みんなをちゃんと抱きしめきれるくらいに大きい。

きっと、ももこさんは、
ただただ漫画が大好きで
日々に転がる小さい幸せも大好きで
そういう幸せに気づける自分のことも、ちゃんと大好きだったんだと思う。

ももこさんは、作品を通じて何かを伝えようとしたり、押し付けたりはしない。
ただまるちゃんになって、背負った鞄に楽しいことをいっぱい詰めて、
みんなが持っている心の小さいの隙間を暖めに来てくれる。

まるちゃんと一緒に心の中で友蔵に甘えたり、お母さんに悔しがったり、
たまちゃんと仲直りしたりしているうちに、
小さな私たちのこころは、すっかり元気になっていた。

ーちいさいまるが、ももこさんと出会えて、本当によかった。


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