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優三さんが、すき 他人が見たら 無音の世界は 2

めずらしく、朝ドラを熱心に見ている。
それこそ小学生の頃なんかは、中学受験をしていたこともあって一日中やることがびっしり詰まった無表情多忙ガールだったのだけど、そんな子が唯一幸せだったのが、朝録画した朝ドラを見ながら食べるおやつの時間だった。

それから数年経って、また朝ドラを楽しみに朝7時台に起きられる日が またくるとは 思っても見なかった。
今期の『虎に翼』、観始めたきっかけは、ヒロイン役の伊藤沙莉ちゃんのラジオを聴いていたから、それと彼女が好きだったから。
いや 本当は、仲野太賀が出るらしいという気配が、どこからともなくワタシの耳に囁いてきたから。

彼が演じるのは、ヒロイン「虎子」の法学仲間であり後の夫となる、「優三さん」
      今日の議題は、好きな男について なんですけども
というのも、わたしは、遊三さんみたいな男の人が、だいすき。

彼が出征前に虎子に残した言葉は、
「ただ君らしく、何かに夢中になって、元気でいてほしい」
というもので
そのセリフが、私のこころにある 小さくてどこまでも深いひっかき傷に じんわり沁みた。


私が大学生にしてはじめて本当に好きになった男の人は、私に
「儚いままでいでくれ」
と、ずーっと圧をかけてきていた
一方その頃の私は、大学に入って知らない人種に揉まれにもまれ、
やっと自分が見えてきて、
やっとこれから自分の両腕両足でぐんぐんすすんでいってやる
と芽吹き始めた頃だった

タイミングというのは、思いがけず キレーにずれるものなのでありまして。

変わることを禁じられた私は、ほんとうにこの毎日を自分が生きているのかいないのか、すっかりわからなくなってしまったので、結果当然頭のネジがはずれてしまった。
のっぺりとした感情のない顔に 儚げな泣き顔をはっつけた私を目にした彼は
「君のことが好きすぎて、しょうがないんだ」
というなんとも卑怯なセリフとともに、ハタチにして人生に息絶え絶えな「元・儚い少女」を空かん潰すみたいに あっさり捨てた。

今はもうその頃を思い出しても 出刃包丁でぐりぐり胸を差し込まれている時 のような痛みは感じなくなったので、
「人間が忘れられる生き物で、ほんとうによかった、神様ありがとう」
と、思っているくらいなのだけど
それでも 初恋のキツすぎる苦味は、私の中に いろんな疑念と大きな優しさを遺して ゆっくり消えた。

プラ容器だって、ほっぽらかしとけば朽ちていくくらい、変わらないものはないこの世界で
お互いの変化を、成長と失敗を笑い飛ばしながら、そばに居合える人が 
どこかにいるといいな、と ちょっとだけ願っている。

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