補記:オカダvs清宮
先日のドーム大会のPPVが切れる前にいろいろと見直しているところですが,ことの顛末を3つの出来事を軸に考え直してみたいと思います。起点となる1件目の対戦希望発言で,清宮選手は会社になぜ散々怒られたか,これは交渉自体が難しくて面倒な案件になるがそれでもやるのか,という意味合いだったのかと思います。そして2件目の横浜,はなから話にならない~ドームでやるとしてもタッグで十分~といったあしらわれ方をされ,カードの実現自体が厳しいと聞いた清宮選手が奇襲へ走り,その経緯が”シングルで”決着つけろという言葉に表れました。以後,所属レスラーに対しては事態をこじらせないよう箝口令が敷かれ,不気味な沈黙の水面下で交渉は継続され,それは大会直前まで続いたと思われます。というのは,大阪大会で奇襲KOからの大の字マイクで,絶望を味合わせてやると言い放った相手から,当日また完全フォールを喫するという展開は通常考えにくいからです。
横浜・大阪での連続奇襲からいよいよ不穏試合の様相を呈してきたところに,3件目の本試合があの端麗な好勝負ですから,さらに悩ましい謎の迷宮に陥りました。これは交渉のゴールがシングルを実現すること自体だった,新日本側から引き出された最大限の譲歩が正調ロックアップから場外乱闘を基調とし,早めのフィニッシュ狙いからのカウンターの応酬といった,あの展開だったということでしょう。大会に至る前日からの30分1本,時間無制限をめぐるやりとりは,3万96人という観客動員から見ても,今思えば当日券を伸ばすための話題づくりにすぎなかったのかなという結論です。オカダ選手は一瞥もくれずにリングを後にしましたが,試合後のコメントでは侮辱的な言葉は聞かれず,清宮選手からはSNSで完敗を認めるコメント。それだけにこの件は落着した感があります。マスコミでは惨敗と表現していますが,武藤選手が30分近く戦える以上,セミで執り行えるには最大限の規模,ゆえにテンポのよい好勝負と映りました。余談ですが,四天王時代から名勝負の条件とされる30分超えのキックアウトの応酬は,途中何が起こっていたか思い出せなくなり逆に輪郭がぼやけてしまうという弊害を感じ,好きでありません。
大阪・ドームともに一敗地に塗れる敗者の姿を明確に表した清宮選手には度量を感じ,世間からどのような言葉を投げかけられようと立ち止まることなく初志を貫徹した心意気には大いにエールを送りたいと思います。エールといえば那須川天心選手が「あのキックは本当に良かったですよ。良かった。あれで一皮むけたというか,一選手として"上がった"感じがありますよね」と述べていましたが,今回の事件を締めくくるにふさわしい言葉です。