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人形焼をめぐる、冬の浅草小旅行
「今日の午後、焼きたての人形焼を食べに行きたい!」
突然の友からのリクエスト。
彼女との約束はいつもそんな感じで始まる。
「焼きたての人形焼?そんなのあるの?絶対食べたい!」ともちろん即答。
送られてきたリンクを開くと、浅草の仲見世通りにあるお店だった。
お互い行きつけの病院(50歳過ぎると、何かしら通院あり)を速攻で終わらせ、待ち合わせの駅に急いだ。
浅草駅から少し歩くと、たくさんの人でごったがえしている雷門が突然現れた。
よくテレビなどで見る有名な景色だけど、自分がその中にいると、やっぱり気分が上がる。
普段はなるべく被写体になって現実を突きつけられることを避けたいアラフィフの私たちも、「ここはポーズとるべきだよね」と浮かれた写真を雷門前で撮ったりしてちょっとした小旅行気分を満喫した。
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仲見世通りには、たくさんの人形焼のお店がある。
どのお店の人形焼も、それぞれ味も形も違う。
昔ながらの紙袋のデザインも、雰囲気があって可愛いらしい。
通りにあるお店の人形焼を、焼きたてもそうでないものも、「これ好き」「この形かわいい」などあれこれ言いながら食べ比べを楽しんだ。
仲見世通りにはいろんなお店があるというのに、他にはいっさい目もくれず、ひたすら人形焼だけを買い求める私たち。
今日は「人形焼の日」だからこれでいいのだ。
あっというまに浅草寺前に到着した。
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「じゃ、帰ろっか」「おうどんとかお蕎麦とか汁物食べたい」
と人形焼コンプリートの達成感と空腹の限界が来ていた。
いや、せっかくここまで来て、お腹すいたから帰るって子供じゃないんだから・・・せめてお参りしないとバチが当たるよなどと言いながら、「ひざの痛いの治りますように」「肩こりがひどいんです」「持病よくなりますように」と2人ともそこはしっかり、50代のお願いをした。
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私たちの1番のお気に入りの人形焼は、ノーマークだった雷門までの道中にあるお店のものだった。
やっぱり、誰かの情報を鵜呑みにするのじゃなく「この店美味しい気がする」と直感的なものや、「自分で試してこそ美味しいものがわかる」なんかが大切なんだよなーとしみじみと思いながら、富士そばで空腹を満たした帰りの電車で、1番お気に入りの人形焼を食べた。
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2人で顔を見合わせて出た言葉は、
「1番最初に、1番お腹が空いてる時に食べたから美味しかったんじゃない?」
なんだかんだ言っても、「空腹が1番のスパイスである」を実感した楽しい冬の午後。