「仮面ライダー(スカイライダー)」45周年 〜ED「はるかなる愛にかけて」にかけられた思いってなんだろう〜
お久しぶりです。
今回は少し短めです。
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10月5日は、「仮面ライダー」の放送開始記念日。
いわゆる「スカイライダー」が登場する作品と言えば分かると思う。
「仮面ライダーストロンガー」最終回から約3年9ヶ月の時を経て復活した本作は、リバイバルブーム=シリーズ第1作「仮面ライダー」の再評価を背景に原点回帰を強く意識した作品としてスタートした。
それ故のどこかふわっとした展開から評価は伸び悩み路線変更を余儀なくされたが、ライダー復活への気合いは初期エピソードの随所に感じられる。
そしてそれを象徴するのが、
前期エンディング曲「はるかなる愛にかけて」だ。
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はるかなる愛にかけて
(テロップは「はるかなる愛に賭けて」)
作詞:八手三郎
作編曲:菊池俊輔
歌 :水木一郎・こおろぎ'73
使用話:第1話「改造人間 大空を翔ぶ」〜第28話「8人ライダー 友情の大特訓」
本曲はある種のハードさを帯びて始まった「スカイライダー」に相応しい、淡々としたマイナー調の楽曲である。
淡々とした中にも潤いと温もりを感じさせる故・水木一郎氏による歌唱は、ヒーローソングに相応しい勇壮さと悲壮さを演出する
ファンからは「ロンリー仮面ライダー」と並んで「仮面ライダー=昭和ライダーとは?を歌った曲」として人気が高いが、タイトル通り孤独さを強調する「ロンリー〜」に対して、本曲は少し先を行った、実に「スカイライダー」らしい歌でもある。
それを説明するために、1番の歌詞を読み解いていく。
この歌はまず、かつて己の人生を捧げ戦ったという"男"の存在を語る誰かの視点で描かれる。
この"男"とは誰か?
自分は「歴代の仮面ライダー」と解釈した。
確かに「スカイライダー」は当初それまでのシリーズとの連続性を断ち切った作品であり、一見すると過去のライダーに言及するのはおかしいように見える。
しかし、これは筆者の推測だが、敵組織の名前が「ネオショッカー」である時点で、完全に世界観を分けた作品にするつまりは無かったのではないだろうか?
具体的な時期は不明だが、シリーズの生みの親の一人、平山亨プロデューサーが本作への立花藤兵衛の登場を構想し小林昭二氏に出演を依頼したエピソードも有名だ。
東映らしい見切り発車…もといスタッフのどこかに「いずれは何かしらの関係性を表出させる」ねらいはあったような気がする。
なのでこれは、1号2号どころか7人まとめて伝説になった仮面ライダーを語る…というある種の匂わせを提供しながらも、その跡を継ぐものに「お前に同じ覚悟はあるのか?」と問いかけているのではないか。
ではその後に続くのは更なる問いか?答えか?
後に続いたのは答えだ。
ここで視点は「何と戦うか?」と問いかけた者から、問われた者へと移ったのではないだろうか。
となれば答える人は1人。スカイライダー/筑波洋である。
彼の答えを要約するとおそらくこんな感じだ。
「ならば俺も、愛のために戦おう。俺もまた彼らと同じ"仮面ライダー"だからだ!」
時代を感じさせる何とも勇ましい答えだが、実はこれこそが原点回帰に留まらない、スカイライダーらしさだと思う。
何故?
そのヒントは本編で筑波洋が残したある決意にある。
かつて「仮面ライダー」第1話では、ヒーローが自ら名乗るまでの根拠が弱かった(「シン・仮面ライダー」で本郷猛が自ら仮面ライダーを名乗るシーンがあるのは恐らくそういうことである)。しかし「スカイライダー」の第1話は、改造人間である事を受け入れ、前を向く筑波洋を志度博士が讃え、仮面ライダーと命名する場面で終わる。
単なるご都合とはいえ、これはヒーローとしての「仮面ライダー」が前提に無ければ成立しない。
この曲に対してもそうだ。
既にある「仮面ライダー」の概念を再確認し、新たなライダーとのコール&レスポンスを行っているような流れ。
つまり「はるかなる愛にかけて」は仮面ライダーの復活をある種祝し(祝え!新たなる仮面ライダーの誕生を)、その前を向く勇姿を歌っているのだと思う。
(ついでに言えば、後の「仮面ライダーBLACKRX」直前特番において、「ストロンガー」最終回の場面に本曲が選曲された事が、大いに文脈を補強しているのだが…ここでは敢えて掘り下げないでおきたい。)
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既にヒーロー=聖人君子というあり方が変容し始めて久しく、平然とパチンコやゲームに入り浸る者(→「バトルフィーバーJ」)まで現れていた時代に、嘘っぽいまでの高潔な正義感を見せたスカイライダーと、その決意を情感たっぷりに歌った「はるかなる愛にかけて」。
これらもまた、後の「BLACK」「クウガ」「W」のような、仮面ライダーの新時代を築こうとした輝きだったのではなかろうか。
その思いを超えて、ライダーの歴史は尚も続いていく。